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【トップインタビュー】脱炭素電源への転換を推進―村瀬資源エネ庁長官

 村瀬佳史資源エネルギー庁長官は25日、資源記者クラブのインタビュー取材に応じ、エネルギー政策に関する現状と今後の展望を語った。

 

 

―世界の地政学リスクとエネルギーのトランジションの方向性について見解を

 

 やはりロシアによるウクライナ侵攻や中東情勢の緊迫化など、地政学リスクが非常に高まってきており、世界はエネルギーの量、価格の両面で大きなリスクに直面している。50年前のオイルショックと同様の地政学的なリスクに向き合わなきゃいけない時期に来ているかなと思う。

 

 そういった中で、日本は化石燃料の大半を海外輸入に依存するという構造から脱却できておらず、自動車などで稼いだ外貨をエネルギーの輸入代金に充てているという状況が続いている。具体的に数字で言うと、外貨として28兆円稼いだもののうち、資源の購入に2023年時点で26兆円が当てられており、 外貨がそのまま流出してしまっている。化石燃料への過度な依存から脱却し、エネルギー危機に耐え得るような需給構造への転換が喫緊の課題になっている。昨年閣議決定したGX推進戦略に基づいて、「S+3E」の原則のもとで、徹底した省エネ、再エネの最大限の活用、安全性が確保された原子力の活用など、エネルギー自給率の向上につながる脱炭素効果の高い電源への転換を力強く推進していく必要があると思う。

 

 また、エネルギートランジション期においては、化石燃料の確保も重要となる。中東が厳しい状況にある中で、▽調達先を引き続き多角化していく▽積極的な資源外交を展開していく▽上流開発へのファイナンスをしっかり支援していく――など、あらゆる手段を活用してエネルギー資源外交を展開していかなければならないと感じている。

 

 

―2030年度における再エネのエネルギーミックス目標値の達成見通しをどのように捉えているか?

 

 2013年度比で温室効果ガス46%削減に向けた取り組みを鋭意進めているところ。電源構成比の目標達成度については再エネが目標36~38%に対して22年時点で21.7%、原子力が目標20~22%に対して5.6%。一方で 火力は目標41%に対して72.7パーセントと高止まりしている。再エネは上昇傾向にあるものの、適地の限界などの課題が見えてきている中で、さらなる一層の努力なくしては達成できないというのが現実だと思う。

 

 原子力についても予定通りの再稼働が実現すれば目標達成も可能だが、 安全性の確保を大前提に、地元の理解を得ながら再稼働を進めていくという方針のため、地元に向き合って丁寧に進めていく必要があると考えている。昨年は福井で2機が再稼働し、年内でも女川(宮城県)、島根の再稼働が予定されているが、これまでと同様に事業者をしっかり指導していくなど必要な支援を徹底していきたい。

 

 東日本は原子炉が動いていないがゆえに8割を火力発電に依存していて、その9割が太平洋側の電源に支えられており、災害に対して非常に脆弱な構造にある。電気料金も東日本と西日本で最大3割の差が生じているため、産業競争力にも大きな影響がでている。特に女川については被災した原発初の再稼働となり大きな意味を持つ取り組みのため、着実に進めていく考えだ。閣議決定された、安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設にもしっかり向き合っていかなければならない。

 

 

―再エネは足元を見ると地域共生の問題などで足踏みしている印象があるが、導入加速に向けてどのような政策を実施していくか

 

 再生可能エネルギーについては景観の問題など住民の不安が生じる場合があり、原子力と同様に地域共生を前提に理解を得ていくことが非常に重要となる。具体的な対応としては、環境省を含めた関係省庁とも連携をして、太陽光設備の導入支援や再エネ海域利用法に基づく洋上風力発電設備の施設建設も後押ししていく考えだ。また、グリーンイノベーション基金事業も活用し、ペロブスカイト太陽電池や浮体式洋上風力発電などに関する新技術の早期実用化に向けた取り組みを支援していきたい。太陽光発電の導入量の増加につながることが期待されるペロブスカイト太陽電池については技術開発の領域を超えた社会実装への動きもみられるため、「技術で買ってビジネスで負ける」ことが無いように政府としてサポートしていく。

 

 2040年に向けては、EEZ法案を国会で早期に通過させるよう取り組んでいく。政府の検討の中でも、再エネも原子力も最大限やっていかないと日本の「S+3E」は達成できないという方向性は出てきている。法案成立を急ぎながら、再エネの主力電源化に向けた理想形を描いていく。

 

 

―2030年の省エネルギー目標達成に向けての見通しは

 

 原油換算で6200万キロワット程度の省エネ対策の実施を目標としており、22年度までに5割の進捗状況が見られている。 30年に向けた折り返し地点であり、おおむね順調に来ているとは思うが、再エネと同様にもう1段上の取り組みの強化が必要だと認識している。今後DXやGXが推進される中で電力需要の増加が見込まれ、さらに省エネを進めていかなければいけない。

 

 需要増が想定されるデータセンターの省エネに向けた取り組みも相当強化をしていく必要があるし、デジタルの技術を活用した省エネ対策にも取り組むべきだと思う。2050年のネットゼを実現するためには、省エネと同時に、非化石エネルギーへの転換も大事で、こうした取り組みを総合的に進めていきたい。

 

 

【むらせ・よしふみ】

 1967年7月生まれ。東京大学経済学部経済学科卒業後、90年4月に通商産業省に入省。商務情報政策局情報経済課長や資源エネルギー庁電力・ガス事業部長、内閣府大臣官房審議官(経済財政運営担当)、内閣府政策統括官(経済財政運営担当)などを経て、2023年7月から現職。

 

 

(IRuniverse K.Kuribara)

 

 

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