アフリカのサーキュラーエコノミー事例―タンザニアから

先日業務で、タンザニア西部の町・キゴマへ出張する機会がありました。当地では以前からパーム油の生産が行われているのですが、国際競争力を持たない原始的な方法によるものなので、産業振興の視点から何ができるかを調査に伺ったのです。現場でとても興味深いサーキュラーエコノミーの事例があったので、写真とともに報告させていただきます。
一枚目(上)の写真の右手に見えるストーブのような器械は、油椰子の実を粉砕するための設備で、エンジニアでもある工場主が手作りしたという器械です。一応ディーゼルで動くように作られていて、ギアボックスがついています。
こちらがそのギアボックスなのですが、見てお分かりのとおり、かつては乗用車の変速機だった部分をそのまま活用しています。工場主によると、回転の力で椰子の実を砕くため、スピードではなくトルクが欲しいということから、常にリバースギアに入れて使っているとのことでした。
絞られた油(精製前)がこちらです。
精製前の油は、こんなふうにして道路沿いのキオスクで売られていました。調理用油として道行く人が買って行くそうです。
アフリカでは、廃車となった乗用車の部品もこんな形で産業に貢献しているのです。タンザニアの街を走っている乗用車は9割以上が日本の中古車なのですが、そうだとすると油椰子の破砕機に使われていたギアも、日本製である可能性が高いのではないかと思います。
というわけでアフリカの地にもサーキュラーエコノミー。経済基盤がぜい弱なアフリカだからこそ、なのかもしれませんが、中古品の活用に関してはある意味で日本以上に進んだ事例を見かけることがあります。
当然、中古部品の需要も高く、日系の部品業者(岐阜のセイントパーツさん)が現地に進出しています。現地の機械加工事業者も、中古部品を使いまわすのは当たり前、という感覚です。
シュレッダーで破砕されて金属資源になるばかりが廃車の運命ではない、というような事例にちょっと興味を惹かれた発見でした。
* * *
西田 純(オルタナティブ経営コンサルタント)
国連工業開発機関(UNIDO)に16年勤務の後、コンサルタントとして独立。SDGsやサーキュラーエコノミーをテーマに企業の事例を研究している。国立大学法人秋田大学非常勤講師、武蔵野大学環境大学院非常勤講師。サーキュラーエコノミー・広域マルチバリュー循環研究会幹事、循環経済協会会員
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