週刊バッテリートピックス 「ノースボルトCATLとの提携模索か」「日本電解が破綻」など
2024年11月25日~12月1日のバッテリー業界では、経営破綻を巡る話題が目を引いた。まず海外では北欧ノースボルト破綻の余波が続いた。国内でも日本電解が経営破綻。破綻した船井電機が電池火災向け消火器での再建を模索するとも伝わった。一方、日本政府が太陽電池に注力するなど新タイプの電池への期待も続いた。
<国内>
●船井電機、電池火災向け消火器で再建か
船井電機(本社・大阪府大東市)の代表取締役会長に就いた原田義昭・元環境相は11月29日、同社への民事再生法の適用を12月2日に東京地裁へ申し立てると明らかにした。日本経済新聞が同日伝えた。一方、産経新聞は11月28日、原田氏はリチウムイオン電池による火災に対応する消火器の製造や販売で再建を目指す内容で、東京高裁に事業再生計画書を提出すると伝えた。
船井電機は10月下旬に東京地裁から破産手続きの開始決定を受けた。ただ、原田氏はこれに対し10月末に即時抗告を申し立てていた。
●マクセル、産業用全固体電池のモジュールを新開発
マクセルは11月28日、自社ホームページ上で、「新タイプの産業機器バックアップ用の全固体電池モジュールを開発した」と発表した。
新たなモジュールは、同社が最近開発した繰り返し使えるセラミックパッケージ 型全固体電池を最大5個搭載する。現在、産業用ロボットをはじめとする工業現場でバックアップ向けに使われているのは使い切りタイプの電源で、災害などの非常時には稼働を一時停止する可能性が高い。新たなモジュールはこうした欠点を解決するもの。使い切りタイプからの置き換えや、産業機器の 新製品への搭載も可能とした。
プレスリリース:マクセル|マクセルが産業機器のバックアップ用全固体電池モジュールを開発
●日本電解が経営破綻 車載電池の輸出減で
車載電池向け電解銅箔の製造・販売を手掛ける日本電解は11月27日、自社ホームページ上で、東京地裁に民事再生手続き開始を申請したと発表した。米ニュージャージー州の子会社も解散する。
負債総額は約147億6100万円。国内製造バッテリーの輸出減少、スマートフォン需要の減退などに加え、米子会社の設備投資もかさんだ。
プレスリリース:140120241126529844.pdf
●ペロブスカイト太陽電池、2040年に20GW発電へ 政府目標
(出所:経産省発表資料)
経済産業省は11月26日、次世代型太陽電池に関する官民協議会を開き、ペロブスカイト太陽電池について2040年に発電容量を20ギガワット(GW)とする目標を発表した。原発20基分、約600万世帯分に相当する。もし補助金投入などにより開発コストを削減できれば40GW超に目標を引き上げる。
プレスリリース:第8回 次世代型太陽電池の導入拡大及び産業競争力強化に向けた官民協議会(METI/経済産業省)
<海外>
●中国ロンジ、太陽電池モジュールの変換効率で世界記録
中国太陽光発電設備の隆基绿能科技(ロンジ、LONGi Green Energy Technology Co., Ltd. 本社:中国西安市)の日本法人は11月30日、自社ホームページ上で、「結晶シリコン太陽電池モジュール(太陽光パネル)の変換効率25.4%の世界新記録を10月に達成した」と発表した。
プレスリリース: ニュース・お知らせ
●ノースボルト、中国同業との提携模索か CATLなど
11月に米国で経営破綻したスウェーデンの新興車載電池ノースボルトが、同業で世界最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)を含む複数の中国企業と提携について協議しているようだ。米ブルームバーグ通信が11月29日、スウェーデンの地元メディアの報道として伝えた。
ノースボルトの経営破綻を巡っては波紋も広がる。英経済紙フィナンシャル・タイムズの11月23日の報道によると、米金融大手ゴールドマン・サックスが運用するファンドが、今回の経営破綻で9億ドル(約1400億円)規模の損失を計上する見通しという。
●仏独スウェーデン、欧州委員会に脱中国依存を要求
第2期フォンデアライエン欧州委員会
(出所:欧州委員会ホームページ)
フランス、ドイツ、スウェーデンは11月28日、欧州連合(EU)執行機関である欧州委員会に対し、欧州におけるバッテリー生産産業を支援し中国依存を回避するよう求めた。ロイター通信が同日伝えた。
欧州委員会は12月1日にフォンデアライエン委員長の2期目が発足した。3国の要請は新規発足に合わせたもの。ドイツはフォルクスワーゲン(VW)をはじめとする自動車産業が悪化し、スウェーデンはノースボルトが米国で破綻するなど中国との競争激化による打撃が大きいため。
●中国リチウム電池に回復の兆し 現地報道
中国のリチウム電池産業に回復の兆しがあるようだ。上海商業紙「東方早報」傘下のウェブメディア「ペンパイ新聞(The Paper)」は11月28日、億緯リチウム能や高工リチウム電などの複数のリチウム電池メーカーが業績改善の手ごたえを感じていると伝えた。
関連記事:中国のリチウム電池産業チェーンは底を打つ?来年は価格が回復する見込みだと予想 | MIRU
(IR Universe Kure)
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