欧州からの風:January 2025 「CO2規制に喘ぐ欧州自動車業界、EUに対し緩和措置を急ぐよう要請」
欧州自動車工業会(ACEA)は、EUの新CO2排出規制への対応を迫られる欧州自動車メーカーの声を反映し、2025年目標値の先送りなどの緩和措置を訴えており、欧州委員会へ対し敏速な決定を要請した。
EUでは、2025年から新たなCO2排出基準が適用されるが、この排出基準が達成できない場合メーカに対し罰金が課せられることになっている。最近のEV販売の減速に伴い、自動車業界は、2025年の目標値達成は非常に困難であると主張しており、「目標未達成の場合の損害は自動車メーカーだけが被ることになる」と欧州自動車工業会は述べる。罰金は目標数値を超えた場合1g /kmに対に対し95ユーロという厳しいもので、その年に販売された自動車一台ごとに課せられる。
ルカ・デ・メオ氏(欧州自動車工業会(ACEA)会長(2024年12月時点)、ルノーグループCEO)は、このままでは、罰金の支払いをはじめ、近年の生産削減、EVの損失販売などにより、自動車産業は最大160億ユーロの投資能力を失うリスクがあると述べる。欧州委員会委員長フォン・デア・ライアン氏は、危機に直面する欧州自動車業界に対し、「自動車産業の将来に関する戦略的対話」を持つことを決定しているが、その開始や2026年のCO2法見直しを待っている「余裕」はないと言う。
そのため、ACEAは、欧州委員会に対し、自動車メーカーが2025年に向けたコンプライアンス戦略の最終決定、プーリングの準備などに対応するためには、速急な軽減措置に関する「明確化」が必要であると訴えている。
ルカ・デ・メオ氏は強調する。「4年前への対応とは異なり、今回の厳しいCO2削減目標の達成には、自動車メーカーの直接管理範囲を超える要素が多数あり、バリューチェーン上の円滑な連携が必要です。規制目標や車両供給だけでは不十分であり、「移行」には市場が先導する必要がります。しかし、現在のEV販売シェアは約13%で停滞しており、本来あるべき数字の10%も低い状態です。このギャップを短期間で埋めるのは困難です。自動車業界の重要な過渡期において、競争力とバリューチェーン全体の雇用を守るためには、目標値は野心的ではなく現実的なものであるべきで、タイムリーで明確な支援表明が不可欠です」
また同氏は、現在の状況では、自動車メーカーが支払う罰金は避けられないものとなるとして、「適切に機能するシステムでは、罰則金の支払いは例外的措置であるべきで、「当たり前」になるべきではない」と付け加えている。
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SCHANZ, Yukari
オーストリア、ウィーン在住フリーライター。現在、ウィーンとパリを拠点に、欧州におけるフランス語、英語圏の文化、経済、産業、政治、環境リサイクル分野での執筆活動および政策調査に携わっている。専門は国際政治、軍事、語学。
趣味は、書道、絵画、旅行、フランスワインの飲酒、カラオケ、犬の飼育。
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