東京製鐵 2025年2月契約売出 4カ月連続の据え置き、底入れならず
東京製鐵は20日、記者会見を開き、2025年2月契約の鋼材販売価格については4カ月連続の横ばいで、全品種を据え置くと発表した。年末年始休業や冬季定期修理期間の影響もあり、直近1カ月の動向変化が少なかったことも影響しているとみられる。
輸出環境もホットコイルとH形鋼ともに先月から横ばいで、現在成約済みのものがホットコイルでFOB 560ドル〜570ドル。H形鋼がFOB 700ドル~720ドルを維持している。生産予定については1月全体で20万5000トン(前月予定比2万5000トン減)、H形鋼が7万5000トン(横ばい)、ホットコイルは9万5000トン(5000トン減)[内、輸出は5000トン(横ばい)]、厚板2万5000トン(1万5000トン減)。
物件価格及び在庫販売価格についても鋼材価格同様に横ばいとなった。H形鋼が12万円、異形棒鋼が9万円、厚板が10万3,000円(建値と同額)。1月20日(月)午後より販売開始した。
東京製鐵の基調コメントは以下の通り。
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海外マーケットは年明け以降も世界的に様子見の状態が続いている。特に中国市場においては、政府によるこれまでの景気刺激策の効果は今のところ限定的であり、1月末からの春節を目前に控え、足元は駆け込み需要も少なく、東西市況は軟調に推移している。一方、米国では、新政権発足により保護貿易政策が強化されることへの関心が高く、 鉄鋼関連製品や周辺国への影響次第では、鉄鋼関連指標は大きな転換点となることが予想される。引き続き、世界並びに中国の経済や金融政策の変化と鉄鋼需給の統制について慎重に注視していく。
国内マーケットは、建設需要は中小案件を中心に建設コストの高止まりのほか、施工会社の選別受注姿勢が色濃く影響し、活況感を取り戻せずにいる。このため、建材品種は総じて流通からの出庫量が増えていないため、年始の状況は膠着状態となっている。しかし、物流倉庫やデータセンターに始まり、製造業関連工事など大型案件では新規投資への意欲は高く、昨年までの着工端境期からの脱却が期待できる状況にあることから、今後の引き合い活発化と鋼材の荷動き増加による市況の回復期待をしたい。
鋼鈑品種では、薄板産品在庫が400万トンを割り込み、厚板在庫においても自然減傾向となっているが、まだ 各産業向けの鋼材需要量は回復には至っておらず、年初の鋼材商況は盛り上がりに欠ける状況となっている。また輸入鋼材についても、年明け後の需給バランスは緩慢な状態が続いており、これからの各国の政策次第ではあるが、動向に注意が必要な状況といえる。足元は、鉄鋼メーカー各社の冬季の定期修理時期にもあり、供給抑制姿勢が継続するため、需要の回復次第では状況の改善が期待されるが、引き続き国内外の鋼材需給動向を注視していく考え。
以上のような状況の下、今月は前月に続き、鋼材市況の早期底入れを図るとともに、国内外の状況をよく見極めることを目的に全品種で据置きとし、引き続き需要に見合った生産を継続する。
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また、小松﨑裕司取締役常務執行役員営業本部長は上記のコメントに補足する形で、以下のように見解を示した。
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海外はおおむね様子見気配だが、年明けの状況を見ていると、やや軟調に推移している。足元のメーカーの動きとしては、ベトナム勢などで多少の価格調整が行われているが、中国や台湾などの大手メーカーを筆頭に据置姿勢が強い。と価格を動かす動かさずというところで、 中国で旧正月、ベトナムのテト休暇が近づいているが、なかなか、政府による景気刺激策の効果は鉄鋼需給まで波及してないと思う。旧正月明けまでは需給動向を注視していきたい。
2024年が終わり、 様々な統計データが出てくるが、中国の内需が非常に低調といった中で、ご存じの通り、鉄鋼生産は5年連続で10億トン超えとなった。アメリカでは新政権が発足するということで、今後の通商面の舵取りや今後起こり得る様々なリスクをよく見極めていく必要がある。
国内は、年末年始がかなり長い休暇で、稼働率が少ない12月、1月となったこともあり、値動きは緩慢となった。それゆえに年始の商況は値動きに乏しくおおむね膠着している状況にある。市中在庫は適正水準だと思うが品種によっては品薄感もある。
輸入鋼材では11月の通関が発表され、いよいよ中国材のシェアが26%弱となり、11万1000トンを超えた。コロナのころから継続して増加傾向にある。2024年は11月までしか数値が出ていないが、20年の倍近い中国材が入ってきている。輸入規制の弱い国に鋼材が向かうという傾向は当然ではあるが、引き続き加工品も含めて状況を注視していく。ただ足元の輸入鋼材の動向を踏まえると年度末に向けて総量はやや減少していくと想定している。価格動向については、ドル建てで少々の値下げが出ているが値動き自体はそこまで大きくないとみている。原料は海外の新規商談は低調にあり、海外相場も軟調。国内も需給緩和状態となっている。
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2025年2月契約の品種別販売価格(O/T NET ベース価格、トン当たり円)は以下の通り。
※24年11月契約の価格から全品種据え置き
H形鋼及び形鋼:2023年4月契約において3,000円の値上げ後、1年5か月連続で、価格据置としたが、2024年10月契約にて1万2,000円値下げ。
H形鋼=11万5,000円(2024年10月契約にて1万2,000円値下げ。)
縞H形鋼=12万5,000円(2024年10月契約にて1万2,000円値下げ。)
I形鋼=11万6,000円(2024年10月契約にて1万2,000円値下げ。)
溝形鋼=11万1,000円(2024年10月契約にて1万2,000円値下げ。)
角形鋼管(コラム):2022年9月契約において5,000円値下げ後、2年連続で、価格据置としたが、2024年10月契約において、更に1万円の値下げ。
角形鋼管=11万8,000円(2024年10月契約にて1万円値下げ。)
U形鋼矢板:2023年4月契約にて3,000値上げ後、1年と5か月連続で、価格据置としたが、2024年10月契約において、1万2,000円値下げ。
U形鋼矢板=12万7,000円(2024年10月契約にて1万2,000円値下げ。)
異形棒鋼:2023年7月契約にて5,000円下げ後、1年と2か月連続で価格据置としたが、2024年10月契約において、更に1万円の値下げ。
異形棒鋼=8万8,000円(2024年10月契約にて1万円値下げ。)
厚板:2023年7月契約にて1万円下げ後、1年と2か月連続で価格据置とした が、2024年10月契約において、更に1万5,000円の値下げ。
厚板=10万3,000円(2024年10月契約にて1万5,000円値下げ。)
コイル類4品種 2024年2月契約において2,000円値上げ後、7か月連続で価格据置としたが、2024年10月契約において、1万5,000円の値下げ。
(2024年2月以前の値上げは2022年5月契約にて3,000円値上げ以来だった。)
ホットコイル=9万2,000円(前回の値下げは2023年7月契約にて1万円下げ。2024年10月契約において、更に1万5,000円の値下げ。)。10万円を下回るのは、2021年5月契約(9万4,000円)以来。
縞コイル=9万5,000円(前回の値下げは2023年7月契約にて1万円下げ。2024年10月契約において、更に1万5,000円の値下げ。)
酸洗コイル=10万円(前回の値下げは2023年7月契約にて1万2,000円下げ。2024年10月契約において、更に1万5,000円の値下げ。)
溶融亜鉛めっきコイル=12万4,000円(前回の値下げは2023年7月契約にて7,000円下げ。2024年10月契約において、更に1万5,000円の値下げ。)
以下カットシート類(2023年7月契約において値下げを実施依頼、1年と2か月連続で価格据置としていたが、2024年10月契約において、更に1万5,000円値下げ)
熱延鋼板=9万7,000円(2023年7月契約にて1万円下げ。2024年10月契約において、更に1万5,000円の値下げ。)
縞鋼板=10万円(2023年7月契約にて1万円下げ。2024年10月契約において、更に1万5,000円の値下げ。)
酸洗鋼板=10万7,000円(2023年7月契約にて1万2,000円下げ。2024年10月契約において、更に1万5,000円の値下げ。)
[申込締切日:2025年1月22日(水)12時まで]
(IRuniverse K.Kuribara)
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