Fe scrap watch2025#2 今後のスクラップ相場はトランプ次第?
12日に関東鉄源の2月輸出テンダーが決まり、1月比1610円安の43,200円(H2/FAS)となったが、夕刻に東鉄が動くことはなかった。
ちなみにこの関東鉄源の15,000トン落札はバングラデシュ向けのみ。他の韓国、ベトナムは買い気無し。
鉄鋼トレーダーは
「世界景気が悪いですね。そのうえトランプ関税がある。どうなるかわからない。そこにきて、もしかしたらロシアとウクライナの戦争も終わる可能性もある。
すると鉄鉱石、石炭の相場は下がるかもしれず、先が見えない。こういう状況ではエンドユーザーも鉄鋼製品の発注は難しいでしょう」
とのことで、こちらのトレーダーさんの商売もなかなか上向かない様子。
「しかし、鉄スクラップは案外下がりそうで下がらないかもしれない」と付け加える。
というと?
まず、鉄鉱石と石炭(原料炭)は比較的安定している。下図参照。
鉄鉱石は足元107ドル前後、原料炭は185ドル前後で推移している。
(鉄鉱石相場と原料炭相場の推移)
中国の鉄鋼ビレット価格は以下のようになっており、トン当たり3105元。ドルベースで430ドル前後。実際にはこれよりも安い値段で輸出されているという。
ホットコイルは実勢450ドル前後で推移中。
(中国の鉄鋼ビレット価格の推移 RMB/ton)
(中国HRC相場の推移 US$/ton)
これらの前提としては、前述したように、鉄鉱石と原料炭価格がある程度の水準をキープしていることが重要なのだが
「もしも、トランプ大統領がロシアとウクライナの停戦に成功したら、まともに鉄鉱石、石炭は供給されることになり、相場は急落する可能性があります」と。
それがビレット、スクラップ市況へも影響を及ぼすことになる。そうなれば、の話だが。
また一方、日本の電炉メーカーも鉄筋が売れないかわりにビレットの輸出に精を出している様子。
「電炉メーカー近隣の港にはビレットがかなり積まれてますよ」
ー それは3月決算も関係しているのでしょうか?
「そうですね、稼働率をキープする意味合いもあり、ビレット輸出に動いています。今の為替150円前後なら十分ペイできるでしょう。そこそこ競争力ありますよ。
中国のビレットより安くはしないと思いますが」と鉄鋼トレーダー筋。
このビレット輸出は台湾、韓国、ベトナムへ向けられているようだが、この輸出需要が続くかぎりは、スクラップ需要もそこそこに続くと思われる。
ただし世界経済は弱い。米国を除いては。。
「日本以外はどこも金利が高いので投資も慎重になってます。世界経済がどうなるか?関税で貿易がどうなるかわからない、という今の状態では誰も積極的な発注はしない」。
あとは為替。米国一強が続くかぎり、ドル高は続き、日本円は再び160円を目指す可能性が高い。
これは良くも悪くもスクラップ相場を下支えすることにはなろう。
(為替円ドルTTS相場の推移)
(IRUNIVERSE YT)
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