環境省の廃棄物処理制度小委で不適正ヤード対策議論始まる――制度的措置へ作業本格化
環境省の中央環境審議会循環型社会部会廃棄物処理制度小委員会は25日、第4回会合を開き、3月にまとまったヤード環境対策検討会の報告書を巡り、改めて論点・課題を整理する形で審議に入った。規制対象外の金属スクラップなどの不適正な保管や処理で、生活環境保全上の支障が発生している「不適正ヤード」の実態を踏まえ、2017年の廃棄物処理法の改正により導入された「有害使用済機器制度」の見直しを含め、ヤード環境対策の新たな制度的措置へ、検討作業が本格化する。
3月にヤード環境対策検討会がまとめた報告書はその冒頭で、2017年に廃棄物処理法の改正でその枠組みに取り入れた家電・小型家電リサイクル法対象の32品目(大型家電4品目、小型家電28品目)を規律付けるいまの「有害使用済機器保管等届出制度」に触れながら、一部地域では対象外の金属スクラップの不適正な保管や処理で騒音や悪臭、公共用水域や土壌の汚染、火災の発生などが報告されている現実を指摘。併せて、国家戦略にも位置づけられた循環経済の視点で、国内で資源を循環させ国際的な産業競争力や経済安全保障の強化につなげる大切さも強調、そのために必要となり得る環境対策を取り纏めたとして、以下の4点を挙げていた。
25日開催の廃棄物処理制度小委では4点を巡り、改めて現状と課題を点検する形で情報共有が進められ、今後の基本的な議論の方向性を確認した。
最初の「有害性の観点を踏まえた規制のあり方について」では、検討会の報告書が示した「廃鉛蓄電池等の生活環境保全上の有害性の高い物品に限らず、有害使用済機器、金属スクラップや廃プラスチック、これら金属スクラップ等の混合物である雑品スクラップなど、集積することによって環境保全上の支障を生じる物品も含めて、実効性を担保できる制度を検討すべきである」などとした基本的方向性に沿って、 以下の5点を中心に今後、検討作業を進めることを確認した。
2つ目の「規制対象物のあり方について」を巡っては、検討会の報告書は「有価物に該当する金属スクラップや廃プラスチック、これらの混合物を含む雑品スクラップ等の集積物は、保管・分別される過程で環境負荷が生じる可能性がある。このような再生資源物である規制対象物品の個別指定は困難であることから、規制範囲から漏れが生じないように、搬入される個々の機器や物品の種類に限定せず、混在して保管されている様態を含め、包括的に規制できる仕組みを検討すべき」として、「包括的規制」の考え方を打ち出していた。また、「地域の実情や特有の課題に応じて柔軟に対応できる規制のあり方を検討すべき」ともしていた。これを踏まえて、以下の2点が検討事項として挙がった。
3つ目の「有害性の高い物品の解体を行うための規制」についてでは、以下の3点を検討事項とした。
検討会の報告書でも「廃鉛蓄電池等の有害性の高い物品は、ヤードにおいては解体を行わず、選り分けを行うだけにとどめ、生活環境保全上の配慮がなされた事業場でのみ解体や処分をさせる仕組みを検討すべきである」との基本的方向性が示されていた。
最後の「不適正輸出を防ぐ仕組みについて」を巡る検討事項に挙がったのは以下の2点である。検討会の報告書も「国内で生じた有害性の高い物品(廃鉛蓄電池等)については、環境対策が確実に行われる国内での解体を優先させるとともに、有害性の高い物品の不適正輸出を未然に防止できるように、廃棄物の輸出に関する手続に準じた実効性のある制度を検討すべきである」としていた。「廃鉛蓄電池から取り出された巣鉛等をバーゼル法に基づく輸出手続なしに不適正に輸出しようとした事例が確認され、不適正ヤードが不適正輸出の温床になっている可能性がある」との事業者団体の意見を踏まえた対応になる。
同日の小委で委員からも質問が出ていたが、廃棄物処理法の枠組みの中に、多岐にわたる課題をどう落とし込み制度設計するのか、また自治体が先行施行している条例との棲み分けをどうするのかなど、当面する中間とりまとめに向けて、様々なテーマを巡り、難しい調整作業を迫られる場面もでてきそうだ。
また、同日の小委では25年度中に「資源循環ネットワーク形成・拠点構築に向けた調査事業」を実施するとの報告も環境省からあった。国内資源循環のループが十分に形成されず、リサイクル原料となりうる資源が焼却・埋立されたり、海外流出したりしている現状を踏まえ、わが国における再生材の流通量拡大に向けて課題やニーズを洗い出し、資源循環産業と製造業を繋ぐネットワーク形成や拠点構築を目指す狙いだ。
廃プラスチック、鉄スクラップ、アルミスクラップ、銅スクラップ、e-scrap、有機系廃棄物(廃食用油等)、使用済み自 動車、使用済みリチウムイオン電池など主要な循環資源12カテゴリーで事例研究を進めるという。12のケーススタディの一覧は次の通りである。
(IRuniverse G・Mochizuki)
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