京都大学等共同研究グループ、リチウムフリーの全固体フッ化物イオン二次電池の正極材開発へ
6月20日に、京都大学の山本健太郎 人間・環境学研究科特定准教授(現:奈良女子大学准教授)、内本喜晴 同教授らの研究グループは、量子科学技術研究開発機構、東京大学、兵庫県立大学、東京科学大学、トヨタ自動車株式会社と共同で、リチウムイオン二次電池正極容量をはるかに超える全固体フッ化物イオン二次電池新規高容量インターカレーション正極材料の開発に成功したと発表した。これまでリチウムイオン電池において必要とされていたリチウムを一切使わない画期的な技術として注目される。
この研究では、ありふれた鉄(地殻存在度4位)、カルシウム(地殻存在度5位)、酸素(地殻存在度1位)を主成分とするCa0.8Sr0.2FeO2Fxが既存のリチウムイオン二次電池正極材料の2倍を優に超える580 mAh g–1の可逆容量を示すことを見出した。この材料は、当初無限層構造を有しており、フッ化物イオンの挿入・脱離機構をX線吸収分光法、共鳴非弾性X線散乱法、X線回折法などさまざまな分析技術を用いて多角的に解析した結果、フッ化物イオン挿入時に構造内で分子状酸素を形成する(酸化物イオンの電荷補償を活用する)ことで、結晶構造から予想されるよりも遥かに多くのフッ化物イオンを可逆的に挿入可能であることを明らかにした。電気自動車用の電池の大規模なニーズに対応するためには、希少金属の使用はできず、希少金属であるリチウムを用いることなく、負イオンである酸素の価数変化を大規模に活用する超セラミックス正極材料により、従来の正極材料と比べてはるかに高容量を実現できたことから、蓄電池の革新が起こる可能性を示した。
本研究成果は、2025年6月17日に、国際学術誌「Advanced Energy Materials」にオンライン掲載されたものである。
本研究で開発したSrFeO2Fx、Ca0.8Sr0.2FeO2Fx正極と既存正極材料の重量あたりの容量と体積あたりの容量の比較。SrFeO2Fx、Ca0.8Sr0.2FeO2Fx正極は結晶構造から分子状酸素形成を伴って予想されるよりも多くのフッ化物イオン(x > 1)を可逆的に挿入することで高い容量を示す。
(IRuniverse Ryuji Ichimura)
関連記事
- 2025/08/20 バッテリー動向・関税などのマクロ経済の視点で語られる②、日本からは棚町氏―GBRC 2025 SMM#2
- 2025/08/20 国内よう素PSI実績Report #7 2025年前半国内販売量 3年ぶり増加
- 2025/08/20 欧州からの風:July 2025 「欧州委員会、金属スクラップの輸出入監視を導入」
- 2025/08/20 GBRC 2025 SMMバッテリーリサイクル・循環産業大会アーカイブ
- 2025/08/19 バッテリー動向・関税などのマクロ経済の視点で語られる①――GBRC 2025 SMM#1
- 2025/08/19 コバルト市場近況2025#8 横ばい、コンゴ輸出規制を様子見 硫酸コバルトは高い
- 2025/08/19 国内伸銅品PSI実績Report #64 2025年前半需要回復基調強い
- 2025/08/19 産業用ロボット輸出Report#80 2025年前半輸出額2年ぶり増加 米中向けがけん引
- 2025/08/19 二次電池輸出入Report #190鉛蓄電池輸入 2025年前半輸入額前年比11%増加
- 2025/08/19 欧州からの風:August 2025 「リチウム硫黄電池大手Lyten、Northvoltを買収」