米の銅関税 地金・スクラップは対象外――8月1日から半製品などに一律50%
米が30日に発表した銅を対象とする関税発動措置の対象に銅地金や銅スクラップは含まれず、銅管などの銅製半製品や、ケーブルなどの派生製品が主対象になることが分かった。8月1日からこれらの製品には一律50%の関税がかかる。日本からの主要な輸出品ではないため、影響は限定的と見られるが、発表を受けて、ニューヨークの先物価格が急落するなど波紋が広がっており、主要市場のLME市況の今後の展開も含め、ボラティリティリスクを映した実態取引への影響を懸念する声が市場関係者の間からは上がっている。ただ、輸出関連では高品質の銅スクラップに輸出許可制の新設を検討するよう大統領に商務省が勧告した一文も含まれており、それが具体化されるのか、大きな注目点として残っている。
発表によると、関税の発動対象は銅管、銅線、銅棒、銅板、銅管などの銅製半製品のほか、管継手、ケーブル、コネクタ、電気部品などの銅集約型派生製品になる。
一方、銅の原材料(銅鉱石、精鉱、マット、カソード、アノードなど)や銅スクラップについては対象にはならないと明記されている。
対象が限定されたことで、市場関係者はひとまず安どの表情を見せている。対米輸出実績でみて、それほど影響の広がりはないとみているためだが、「むしろ関税発動に伴う相場におけるハレーション現象が心配」と指摘する声は多い。実際、発表を受けてNY先物相場は大きく下げており、これにLME相場がどう反応し、両相場がそれぞれ、どう目先の着地点を見つけ出していくのか、慎重に見守っている様子がうかがえる。30日にあった米FOMC(連邦公開市場委員会)の金利据え置き決定とも重なり、相場の地合いは複雑であり、しばらくボラティリティリスクの高い相場展開が続きそうだ。
トランプ大統領はまた同日署名した銅輸入に関する布告で、国防生産法に基づき、国内銅産業を支援するための措置を講じることを商務長官に許可しており、以下の点がこれには含まれるという。
・米国で生産される高品質銅スクラップの25%を米国内で販売することを義務付ける。
商務省側からは国内供給を十分に確保するため、高品質の銅スクラップに対する輸出許可制の新設を検討するよう、大統領に勧告しているという。
・米国で生産される銅の原材料(銅鉱石、精鉱、マット、カソード、アノードなど)の25%を米国内で販売することを義務付ける。2027年に25%から開始し、2028年には30%、2029年には40%への引き上げを目指す。
銅を巡る関税発動問題は、トランプ大統領が通商拡大法232条に基づいて2月に影響調査を実施するよう命じ、商務省が3月から調査を進めてきていた。7月上旬にトランプ大統領自身、SNSに「来月1日から銅に50%の関税を課す」と投稿していた。
特定製品の輸入が米国の安全保障に脅威を与えると判断される場合に、同法232条は政権に追加関税などの輸入制限措置を発動する権限を認めている。
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(IRuniverse G・Mochizuki)
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