欧米と中国の鉱物資源を巡る分断(デカップリング)が加速する兆しが出てきた。米バイデン大統領は10日、欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長と会談し、電気自動車(EV)などに使われる重要鉱物について、貿易交渉を開始することで合意した。現在、大部分を依存する中国からの調達の比重を低下させる狙いがあるとみられる。
ホワイトハウスが10日に発表した共同声明によると、両者は環境保護方針の一環としてEVバッテリーと重要鉱物の調達に関し協力する。具体的には、EUで採掘または加工された鉱物が、米国のインフレ抑制法の環境保護車向け税控除の対象となるよう、交渉を開始する。声明では、両者の協力は強制労働を伴わない鉱物生産を進めるという共通の目標に則ったものであり、信頼できる国や地域とともに発展するためにも協力が必要だとした。
一方、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは8日、日米欧などの先進7か国(G7)が、重要鉱物資源のサプライチェーン(調達・供給網)構築を視野に入れていると報じた。5月に日本が議長国となって開催が予定されている先進7か国首脳会議(G7広島サミット)で、議題に上る可能性も浮上しているという。
レアアース(希土類)をはじめとする重要鉱物は、現在は大部分を中国産に依存する。ただ、足元では安全保障などの面から、先進国の間で調達先を分散して中国依存を低下させる動きが目立っている。日本でも7日に、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と総合商社の双日が、豪レアアース大手ライナスと重希土類の調達で提携すると発表したばかりだった。
(関連記事)
重希土類 日本初となる権益獲得 JOGMECと双日が豪企業に出資
(IR universe Kure)