米ブルームバーグ通信は12月4日、「三菱商事は中国の従業員による銅の不正取引で約9000万ドル(約135億円)の損失を被った」との消息筋の話を伝えた。従業員は既に解雇され、三菱側は同件を中国で刑事告訴したとも伝わる。
■地元業者への支払いを不正に延期
問題が起きたのは、三菱商事の金属取引子会社である三菱商事RtMの中国・上海法人。同社に所属する銅のトレーダーだったGong Huayong氏が、特定の地元企業を対象に、銅精鉱と精錬銅の三菱への支払いを延期させたという。これらの業者は三菱が取引先リストから外していたり、同氏と個人的なつながりがあったりするケースがあったとも伝わった。
三菱商事は11月1日発表の2024年7-9月期決算で、当期純利益内訳の特殊要因の一部として、金属資源部門が「中国関連取引損失」として138億円を計上したと発表していた。
参考資料: 20241101j.pdf
■価格高騰→取引活性化→不正の温床に
2024年は5月に銅の国際先物価格が$1万/tonを超えて過去最高値を更新するなど銅相場は急騰した。その裏で銅の取引も活発になり、不正も起きやすくなっている。中国では6月にロシア産の銅が行方不明になる珍事が発生。銅取引の周辺は不穏さも増している。
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また、過去には1996年に18億ドルもの損失計上で世界中にショックを与えた住友商事の銅取引巨額損失事件も起きた。当時の銅価格は1995年に直近高値の$3000/ton弱を付けた直後で、銅の先高観は根強かった。
1980年-2024年の銅価格の年次推移
(出所:フリーサイト「世界経済のネタ帳」)
銅価格は足元で$9000前後に落ち着いているものの、脱炭素の流れに伴い銅の中長期の需要が拡大するとの期待はなお強い。売買が活発になれば利益追求の流れも強まり、不正発生の温床も、やはり拡大し続けることになる。
(IR Universe Kure)