ロシア産銅が行方不明 中国商社が損失か、制裁下の2国間直接貿易に弱点
中国企業がロシアから輸入した銅が運送途中で行方不明になる事件が発生したようだ。西側諸国がウクライナ侵攻後に対ロ制裁を強める中、中国とロシアの貿易関係は活発化しているが、取引所を介さない直接取引であるだけに現場の裁量に流されやすく、不正が発生する余地もまた大きい。
■31億円相当が行方不明
米ブルームバーグ通信が6月13日に消息筋の情報として伝えたところによれば、上海株式市場に上場する中国国有商社の物産中大集団が、2023年後半にロシアの「リージョナル・メタラジカル」と呼ばれる企業から精錬銅2000トンを買い入れた。商品を積み込んだ船は2024年初めにサンクトペテルブルクを出航し、紅海での衝突リスクを避けるため喜望峰ルートを進み、5月後半に中国の寧波港に到着後、5月内に物産中大に引き渡される予定だった。
しかし、引き渡しは行われず、買い入れ元の企業はもとより、製錬所情報もつかめずにいるという。現在の価格レートでは損失額は約2000万ドル(約31億円)相当という。
■2国間貿易の現場、不正発生に余地
ロシアの金属輸出は西側の対ロ制裁の圧迫を受け続けている。2024年4月には英米が金属分野での制裁を強化し、ロンドン金属取引所(LME)もロシア産金属の取り扱いを停止した。こうした中、ロシアと中国は2国間での直接的な貿易関係を強めている。決済通貨は主に人民元とされ、元の存在感拡大にも一役買っていると言われる。
対中貿易の好調を受け、ロシア鉱業は醜聞も聞かれはするものの、経済全体では比較的落ち着いてもいるようだ。
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ただ、貿易の現場はやはり危うい。銅についても、現場では銅線材を銅スクラップに「変装」させて西側諸国への輸出を狙う手法が横行していると伝わるなど、さまざまな不正が広がっているとみられる。
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ブルームバーグによれば、物産中大は今回の事件に関しロシアに調査団を派遣して調査中。企業としてはコメントを控えているという。取引所から締め出されたロシアと、そこに付け込んで利益を上げる中国の、双方の危うさが招いた事件でもあるようだ。
(IR Universe Kure)
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