ロシア「英米制裁、対応議論」 既に回避手段ありか、銅線材をスクラップに「変装」?
ロシアのドミトリー・ペスコフ報道官が4月17日、4月12日に英米が同国に課した金属分野での追加制裁を巡り、「業界関係者と連絡を取り合っており、対応を議論している」と述べたと伝わった。実は銅を巡っては以前から、ロシア企業がスクラップを装って中国向けに輸出する手段が確立されているとも伝わる。実際、足元の金属相場の動きは限定的で、今回のような金属制裁が奏功するとは限らないもようだ。
■追加制裁発表後の値動きは限定的
(クレムリンのホームページから)
ロイター通信の4月17日報道によると、ペスコフ報道官は同日の記者会見で「金属産業は重要な産業であり、政府は現在の状況を考慮して、さまざまな行動方針を議論している」と話したという。ロシア企業の反応としては、ニッケル大手のノルニッケルは、「制裁により価格の変動と供給の不確実性がさらに高まる」と述べたが、「義務は遂行する」とも話したという。またアルミ大手のルサールは、「追加制裁は世界市場へのアルミニウム供給能力に影響を及ぼさない」と述べたと伝わった。
実際、追加制裁発表後の対象金属の値動きは限定的だ。発表後に一時的に供給懸念を先回りした買いが入ったものの、その後は落ち着いている。
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■中国国境で線材を裁断、スクラップに見せかけ
ロシアには心強い輸出先がある。隣接する大国・中国だ。ロイター通信は4月16日に、その中国向けに銅線材をスクラップに装わせて輸出する手段が横行していると伝えていた。
消息筋の情報によれば、ロシアの銅企業RCCが輸出する銅線材が、両国国境の新疆ウイグル族自治区で仲介業者によって寸断され、あたかもスクラップのように見せかけられて中国に輸入されているという。銅線材は通常、コイルのように巻かれて運搬されるが、銅スクラップは細かく刻まれてインスタントラーメンの麺のようにパック詰めされる。このため、裁断して袋に詰めれば、銅線材を「変装」させることは容易という。
(このような棒状から…)
この「変装」の理由は関税の節約だ。ロシアから銅棒を輸出する場合の輸出関税は7%で、中国に輸入する時に4%の輸入関税がかかり、計11%の関税がかかる。対して銅スクラップの場合、ロシアからは10%の輸出関税がかかるが、中国への輸入関税はないため、スクラップの形状ならば1%の関税が節約できるという。
さらに、この方法ならば、中国側の業者にとって、西側諸国からの顧客を失うリスクを抑えることもできる。西側からのロシア産金属の制裁対象には、銅線材は含まれていても銅スクラップは含まれていないからだ。RCCは西側からの制裁対象企業でもあるため、制裁に反して取引しているとのレッテルも貼られずに済む。
報道によると、一部の中国企業はロシア関連ビジネスに対応するため、既に新たなチームを立ち上げたという。輸入されたスクラップ状の銅線材は、江蘇省と浙江省の銅加工業者に渡されるとも伝わった。
(IR Universe Kure)
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