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第11回バッテリーサミット報告④衆議院議員元経済産業省大臣の西村康稔氏、名古屋大学客員教授 野辺継男氏

2025/02/20 17:19 FREE
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次に西村衆院議員のスピーチが行われた。

 西村衆院議員は、グローバルな視点での重要鉱物の供給網強化と、次世代電池技術の推進に関するスピーチを行った。世界のサプライチェーンは不安定な地域に依存していることが多く、安定した供給の確保が求められている。

 

 

 その対策として、日本はカナダと重要鉱物のサプライチェーンを構築し、EUやオーストラリアとも同様の協力関係を進めている。特に、オーストラリアとカナダは安定した民主国家であり、重要鉱物の供給元として信頼性が高い。こうした国々との連携を深めることで、日本の産業に必要な資源を安定的に確保する狙いがある。また、日本企業の海外投資も加速しており、パナソニックや旭化成が重要鉱物や電池関連分野への投資を進めている。これにより、国内外の供給網を強化し、持続可能な電池産業の発展を目指している。

 

 さらに、政府は安全保障基金を活用して、重要鉱物の確保や次世代電池技術の開発を支援する方針を示した。特に、次世代電池として注目される全固体電池の研究・開発を積極的に支援し、電動モビリティ市場の競争力を高めることを目指している。

 西村議員は、日本がグローバルな資源調達において安定した供給体制を築きつつ、次世代の電池技術開発にも注力することで、エネルギー安全保障と産業競争力を両立させる必要があると強調した。

 

 

名古屋大学客員教授 野辺 継男氏

講演テーマ:「トランプ政権によって変わる?変わらない?世界のEVとバッテリー市場!

 名古屋大学客員教授の野辺継男氏は、EV(電気自動車)とバッテリー市場に対するトランプ政権の政策影響について講演を行った。新政権の誕生により、気候変動政策の転換、エネルギー戦略の変更、関税政策の見直しが進められており、これがEV産業、電池市場、さらには世界経済全体にどのような影響を及ぼすのかが議論された。

 

 

 トランプ政権は就任直後から化石燃料推進政策を打ち出し、再生可能エネルギーやEVに対する支援策を縮小する姿勢を明確にした。パリ協定からの離脱を指示し、インフレ抑制法(IRA)の支出を一時停止する大統領令を発令した。この支出停止にはEV充電インフラ拡充などのエネルギー関連プログラムが含まれており、EV市場への投資環境が不透明になっている。また、国家エネルギー非常事態を宣言し、化石燃料・原子力を優先する政策を打ち出しており、これによりEV促進のための補助金やインセンティブが廃止される可能性がある。

 

 関税政策の変更もEV市場に影響を及ぼす。トランプ政権は中国に対する関税政策の見直しを進めており、米中貿易摩擦の再燃が懸念されている。特に、中国からのEVおよびバッテリー輸入に対する関税強化が検討されており、これがEV市場に与える影響は大きい。一方で、カナダとメキシコからの輸入品にも関税を課す可能性があり、北米の自動車産業全体が影響を受ける可能性がある。GMカナダの幹部は、「トランプ政権の関税政策は自動車のサプライチェーンを混乱させ、消費者価格を押し上げる」と警鐘を鳴らしている。

 

 また、トランプ政権はバイデン政権時に成立したEV推進のための補助金や税控除の見直しを指示した。インフラ投資・雇用法(IIJA)ではEV充電インフラ整備に割り当てられた75億ドルの支出が一時停止され、インフレ抑制法(IRA)ではEV購入者向けの7,500ドルの連邦税額控除が制限される可能性がある。この影響により、EV充電ネットワークの拡大を推進してきた企業は事業計画の見直しを迫られる可能性がある。ただし、テスラの独自充電ネットワーク(Super Charger)は政府補助金に依存せず拡大しているため、大きな影響は受けないと見られている。

 

 トランプ政権の政策変更により、EV市場の競争環境は大きく変化しつつある。特に、バッテリー価格の低下とEV製造コストの違いが市場の競争力に影響を及ぼす。LFP(リン酸鉄リチウム)は三元系(NCM)に比べて25%安価であるが、2026年まで中国が独占的に製造可能な状況にある。もし米国が中国製バッテリーに関税をかければ、中国は報復として技術移転を制限する可能性がある。さらに、EV製造ノウハウの格差も顕著で、テスラや中国の新興EVメーカーがコスト競争力を持つ一方、米国の自動車メーカーは労賃の高さから製造コストが上昇している。

 

 欧州のEV市場も影響を受けると見られる。EUの燃費規制強化によりEV化が加速しているが、SDV(Software Defined Vehicle)化の遅れや、米中間の貿易障壁による販売困難が各社の経営に影響を与えている。一方で、中国市場はSDVを活用したEVの進化が進んでおり、米国や欧州、日本に対して競争力を維持している。さらに、トランプ政権の政策変更により、中国製EVの「その他海外」市場(東南アジア、中東、アフリカなど)への浸透が加速すると予測されている。

 

 野辺氏は、トランプ政権の政策変更がEVおよびバッテリー市場に与える影響は極めて大きく、今後の市場動向を左右する重要な要素であると指摘した。化石燃料推進政策によるEV支援策の縮小、関税政策によるEVの価格上昇リスク、補助金削減による市場の成長鈍化、そして中国のEV市場優位性の維持といった要素が複雑に絡み合い、EV業界の競争環境を大きく変える可能性がある。今後、EVとバッテリー産業の国際的な競争環境は激化することが予想され、各国の政策対応が重要になるとまとめた。

 

 

(IRuniverse Imahoko)

 

 

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