東京製鐵は21日、2025年5月契約の鋼材販売価格について、H形鋼、縞H形鋼、I形鋼、溝形鋼、U型鋼矢板、厚板をそれぞれ3000円値下げすると発表した。対象品種は7カ月ぶりの値下げとなる。
4月契約の値下げも考慮すると2カ月で角形鋼管(コラム)のみが値下げされていない状況。小松﨑裕司取締役常務執行役員営業本部長はその理由について、「それぞれの製品の市況実勢を鑑みて設定している」と回答するにとどめているが、海外や国内市場を取り巻く環境に変化が少なければ、同品種も一段階値下げとなる可能性もありそうだ。
生産予定については4月全体で25万トン(前月予定比から1万5000トン増)、H形鋼が7万5000トン(5000トン増)、ホットコイルは12万トン(1万5000トン増)[内、輸出は3万5000トン(1万5000トン増)]、厚板4万5000トン(横ばい)。
物件価格や在庫販売価格については異形棒鋼と厚板で3000円の値下げ。H形鋼が11万7000円、異形棒鋼が8万7000円、厚板が10万円(建値と同額)。4月21日(月)午後より販売開始した。
東京製鐵の基調コメントの概要は以下の通り。
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海外マーケットは、アメリカの関税政策により為替や株価の急激な変動が生じており、世界経済の混乱だけでなく、米国内においてもスタグフレーション懸念が拡大している。特に、米中間の経済摩擦は激しさを増し、これまでの各国の保護貿易政策も加わり、鉄鋼製品への悪影響は避けられないとの見方もあって、市場は模様眺めの状況が続いている。一方、鋼材価格は、各国メーカーの収益が圧迫し、今後、取引価格の見直しが必要であると思われますが、引き続き、世界と中国の経済動向や金融政策と鉄鋼需給の変化について慎重に注視していく。
国内マーケットは、建材製品では長期的な施工能力不足による建設コスト上昇が避けられない中、金利の上昇も加わり、製造業を中心にDX化の動きと防災対策の必要性が高まり、新規の案件も増えてきた。しかし、世界的な景気悪化の懸念から、予定されていた国内投資案件の延期や縮小もあり、先行きを不安する見方も多い。足元では、全国的に鋼材の荷動きに増加気配はなく、市況は軟調な展開となっている。
鋼板品種は世界経済の混乱により各種の輸出型産業への影響が定まらない状況から、国内の鉄鋼需給には先行きへの不安感が強まっている。薄板類では自動車関連需要の減少懸念が強い。また、輸入鋼材も中国の鉄鋼政策と対日輸出姿勢に注意が必要な状況に変わりはない。しかし、国内鉄鋼メーカー各社における供給抑制規制は継続しており、具体的な対策の実施により、今後の需給バランスの改善と商業の持ち直しが待たれるところ。
以上のような状況のもと、足元の国内鉄鋼製品のマーケット実態に合わせ、市況の早期底入れを図るべく、一部品種を値下げした。その他の品種は価格を据え置き、引き続き需要に見合った生産を継続し、需給調整に努める。
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また、小松﨑本部長は上記のコメントに補足する形で、以下のように見解を示した。
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アメリカの関税政策による負のリサイクルがどの程度世界に影響を及ぼすかが焦点となる。足元では景気の停滞・後退という形で表れてきており、海外情勢は不透明で不確実な状態にあるといえる。このような中で各国は国内産業を保護する貿易救済措置としてAC措置(アンチダンピング措置)を行っている。それも踏まえ、アジアの相場上昇の期待もあるが、現時点では回復の兆候は見られない。中国の3月までの粗鋼生産が増加傾向にあるとこも考慮し、中国の動向にも引き続き注視していかなければならない。
国内では、関税政策や株と為替の乱高下が影響し、企業では海外の投資案件や輸出型産業の戦略見直しが行わているケースもある。マーケットの荷動きが非常に低調であることや、商況も一部品種で値下げの動きがあることから、全国の市況実勢を反映すべく、鋼材販売価格の修正に至った。
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2025年5月契約の品種別販売価格(O/T NET ベース価格、トン当たり円)は以下の通り。
H形鋼及び形鋼:2023年4月契約において3,000円の値上げ後、1年5か月連続で、価格据置としたが、2024年10月契約にて1万2,000円値下げ。今回の2025年5月契約で7カ月ぶりに3000円値下げ。
H形鋼=11万2,000円(2024年10月契約にて1万2,000円値下げし、2025年5月契約で7カ月ぶりに3000円値下げ。)
縞H形鋼=12万2,000円(2024年10月契約にて1万2,000円値下げし、2025年5月契約で7カ月ぶりに3000円値下げ。)
I形鋼=11万3,000円(2024年10月契約にて1万2,000円値下げし、2025年5月契約で7カ月ぶりに3000円値下げ。)
溝形鋼=10万8,000円(2024年10月契約にて1万2,000円値下げし、2025年5月契約で7カ月ぶりに3000円値下げ。)
角形鋼管(コラム):2022年9月契約において5,000円値下げ後、2年連続で、価格据置としたが、2024年10月契約において、更に1万円の値下げ。
角形鋼管=11万8,000円(2024年10月契約にて1万円値下げ。)
U形鋼矢板:2023年4月契約にて3,000値上げ後、1年と5カ月連続で、価格据置としたが、2024年10月契約において、1万2,000円値下げ。今回の2025年5月契約で7カ月ぶりに3000円値下げ。
U形鋼矢板=12万4,000円(2025年5月契約にて3000円値下げ。)
異形棒鋼:2024年10月契約において、1万円の値下げ。以降は5カ月連続で横ばいとなり、2025年4月契約は3000円の値下げ。
異形棒鋼=8万5000円(2025年4月契約にて3000円値下げ。)
厚板:2023年7月契約にて1万円下げ後、1年と2か月連続で価格据置としたが、2024年10月契約において、更に1万5,000円の値下げ。今回の2025年5月契約で7カ月ぶりに3000円値下げ。
厚板=10万円(2025年5月契約にて3000円値下げ。)
コイル類4品種:2024年10月契約で1万5,000円の値下げ。以降は5カ月連続で横ばいとなり、2025年4月契約で酸洗コイル5000円、他は3000円の値下げ。
ホットコイル=8万9000円(2024年10月契約で1万5,000円の値下げし、2025年4月契約にて3000円値下げ。)
縞コイル=9万2000円(2024年10月契約で1万5,000円の値下げし、2025年4月契約にて3000円値下げ。)
酸洗コイル=9万5,000円(2024年10月契約で1万5,000円の値下げし、2025年4月契約にて5000円値下げ。)
溶融亜鉛めっきコイル=12万1,000円(2024年10月契約で1万5,000円値下げし、2025年4月契約にて3000円値下げ。)
以下カットシート類(2024年10月契約で1万5,000円の値下げ。以降は5カ月連続で横ばいとなり、2025年4月契約で3000円の値下げ)
熱延鋼板=9万4,000円(2024年10月契約で1万5,000円の値下げし、2025年4月契約にて3000円値下げ。)
縞鋼板=9万7,000円(2024年10月契約で1万5,000円の値下げし、2025年4月契約にて3000円値下げ。)
酸洗鋼板=10万4,000円(2024年10月契約で1万5,000円の値下げし、2025年4月契約にて3000円値下げ。)
[申込締切日:2025年4月23 日(水)12時まで]
(IRuniverse K.Kuribara)