豪州では、本日5月3日(土)は総選挙の投票日で、この結果により次期政権が決定する。具体的には、アンソニー・アルバニージー現首相率いる労働党と、ピーター・ダットン氏の自由党率いる保守連合の戦いだ。
つまり、現政権である労働党が先日発表した重要鉱物の備蓄計画には、“自分たちが再選した場合には…”という前提条件が存在するという点に注意が必要だろう(実際に声明文の中でも、“A re-elected (Albanese) Labor Government will…”との記述が複数見られる)。
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それはともかく、中国に対抗しうる貴重なレアアース企業として注目を浴びる豪Lynas Rare Earths社のCEO、Amanda Lacaze氏は、労働党のこの備蓄計画に反発しているという。この様子は、豪大手メディアのオーストラリアン・ファイナンシャル・レビュー(AFR)紙をはじめ、現地の複数のメディアに掲載されている。
曰く、Lacaze氏は、政府が自社の競争相手となろうとしている点、つまり製品販売の際に自社を下回る価格を提示してくる可能性を示唆し、この危険性を指摘。また、この政策が実行不可能なプロジェクトを支える可能性が出てくるとも警告したという。同氏の見解は、政策によって企業のプロジェクトの経済性がいきなり変わることはない、というもの。さらに、氏やLynas社は、この備蓄計画に関して一度も相談や説明を受けていなかったとのこと。この辺りにも同氏が不満を表明している理由があるのではないだろうか。
ちなみにLacaze氏の発言が報道された翌日、今度はこれを受けてMadeleine King資源相が同氏に反論。AFR紙はこの様子も引き続き伝えており、これによるとKing資源相は、「Lynas社が取り扱っているものだけではなく、もっとさまざまな産業が存在するのです」と語ったという。また、同社がこれまでに複数の外国政府から支援を受けてきた点も指摘されている。
なお、Lynas社がこの備蓄計画に大きな懸念を示す一方で、西オーストラリア(WA)州にレアアース精製工場を建設中のIluka Resources社や、ノーザン・テリトリーのArafura Resources社など、豪州レアアース企業の中にはこの計画の支持を表明している企業もあるという(ただし、これらの企業は豪州政府からすでに多額の支援を受けているというのもまた事実である)。また、鉱業・探鉱企業協会(Association of Mining and Exploration Companies)や豪州鉱物資源評議会(Minerals Council of Australia)など主要な鉱業組合らも、同計画を歓迎している様子だ。
(IRUNIVERSE A.C.)