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京三製作所(6742) 25/3期WEB決算説明、ややポジティブからポジティブに変更 

2025/06/06 10:37

26/3期0.7%増収23.1%営利減予想も半導体向け回復で増額期待、27/3期は収益上伸へ

 

株価(6/5)496円   時価総額421億円    発行済株62844千株

PER(26/3期DO予9.4X)PBR(0.6X) 配当(26/3予)23円  配当利回り:4.6%

 

要約

 

・25/3期信号システム好調で21.0%増収、営利2.5倍と売上、営利は過去最高を更新

・26/3期0.7%増収23.1%営利減、5%受注増予想と人材強化費増で減益予想も増額期待

・中期経営計画として28/3期に売上高970億円、営業利益78億円、受注980億円目標

 

25/3期信号システム好調で21.0%増収、営利2.5倍と売上、営利は過去最高を更新

 

 25/3期は売上高853.67億円(期初計画費13.67億円上振れ、21.0%増)、営業利益61.12億円(同4.12億円上振れ、2.5倍)、経常利益66.46億円(同6.46億円上振れ、2.0倍)、税引利益47.83億円(同3.83億円上振れ、39.3%増)、受注高819.51億円(同49.51億円増額、11.2%増)、受注残高1024.06億円(同3.15億円未達、6.4%減)と、上振れて着地した。売上高では18/3期739億円、営業利益も18/3期50.71億円を上回り過去最高額更新となった。

 

 部門別では信号システム事業が売上高711.28億円(同31.28億円上振れ、17.8%増)、受注高663.96億円(同63.96億円上振れ、6.8%増)、受注残高953.25億円(7.7%減)、営業利益97.21億円(同1.75億円上振れ、31.1%増)となった。受注高ではどの地域でも上振れ着地した。海外ではインド向け電子連動装置、国内ではATC地上装置、ホームドアなどが増加、売上面でもインド、シンガポール向けに信号装置、国内ではATC地上装置、ホームドアなどが大きく伸び、全地域で増収となった。利益面では増収効果に加えコスト削減効果などが寄与し大幅増益、同部門として売上、営業利益ともに2期連続過去最高更新となった。

 

 パワーエレクトロニクス事業は売上高142.39億円(同17.61億円未達、40.2%増)、営業利益11.91億円(同8.16億円未達、14.76億円好転し黒字転換)、受注高155.54億円(同14.46億円未達、35.5%増)、受注残高73.96億円(21.6%増)に。受注では半導体向けがHBM好調もNANDが低調で89.13億円(同49.29億円未達、6.1%増)にとどまったが、FPDが大口受注獲得で61.60億円(同34.38億円上振れ、2.4倍)と半導体向けの未達をかなりカバーし、35.5%増を確保した。なお半導体向けでは懸案であった米国半導体製造装置向けRF電源の量産納入(多分、アプライドマテリアルズ社)が決まり、まだ規模は小さいが出荷を始めたとのこと。売上面ではFPDの大口受注の納期が25/3期ではないため35.20億円(同9.80億円未達、36.3%増)にとどまり、半導体向けは期中受注期中売上もあり101.71億円(同7.29億円未達、49.3%増)となった。利益面では増収効果で稼働率が向上し、黒字転換に。なお同部門は半期で仕向け先が開示されており、受注で見ると23/3H1をボトムに半導体向けの回復が見て取れる。

 

 営業利益(24億円→61億円)の増減要因では、増収効果で30億円、業務改善などの効果で原価改善14億円に対し、販管費増8億円(人件費増6.48億円、運送費増1.41億円)が減益要因に。但し販管費比率は増収効果により1.9ポイント改善し14.8%となっている。

 

 同社は中期経営計画2025において25/3期に売上高850億円、営業利益60億円、受注850億円を数値目標として掲げていた。売上については計画通り、営業利益で1.12億円の僅かな上振れ、受注は半導体、新規事業の受注が未達、信号システムが上振れ、結果では半導体の回復遅れが影響し、中計受注見通しに対して30億円未達に終わったが、セグメント間の増減はあるものの、ほぼ中計計画に沿った結果となった。

 

26/3期0.7%増収23.1%営利減、5%受注増予想と人材強化費増で減益予想も増額期待

 

 26/3期は売上高860億円(0.7%増)、営業利益47億円(23.1%減)、経常利益50億円(24.8%減)、税引利益35億円(26.8%減)、受注高860億円(4.9%増)予想とした。

 

 部門別では信号システム事業が売上高709億円(0%増)、営利89億円(8.4%減)、受注高709億円(6.8%増)予想。受注は海外向け信号システムの大口案件を見込み148億円(55%増)と伸長予想。国内もホームドアなどが堅調、ATC自動システムも堅調な伸びを見込み480億円(11%増)予想とした。売上面では豊富な受注残高の消化を進め、計画通りの売上を見込む。信号システムについては受注残高も多く、基本円建てであるため、会社計画並みの収益が見込まれる。

 

 パワーエレクトロニクス事業は売上高151億円(6%増)、営利12.0億円(1%増)、受注151億円(3%減)予想。受注では半導体向けが109億円(23%増)も、FPDが反動減で40億円(35%減)予想として全体で微減予想。売上では半導体向け104億円(2%増)、FPD37億円(4%増)を見込む。同社の半導体装置向けはメインが東京エレクトロン宮城で占められる。25/3期については一部米国向けに新規の量産納入が始まった模様であるが金額はまだ小さく、フラッシュメモリが停滞している中で東京エレクトロンのエッチング装置の伸びがもう一つと見られ、東京エレクトロンの伸びに追従していない。しかし26/3期については下期にフラッシュメモリの回復も見込まれており、加えて米国製造装置メーカー向けの緩やかな拡大も見込まれ、会社計画を上回る受注が期待され、売上でも増額が期待される。

 

 利益面では増収効果を見込むものの、人的投資を積極的に実施するとして240億円(9.6%増、21億円の費用増)を見込み、営業減益(人件費コスト増を除くと2.5%増益予想)を想定している。実際は半導体向けの売上増額が期待され、利益面でも増額が見込まれる。

 

中期経営計画として28/3期に売上高970億円、営業利益78億円、受注980億円目標

 

 同社は新たな中計として"KYOSAN Next Step 2028"を策定、10年後のありたい姿を実現すべく、「新しい価値」の創造を標榜、28/3期に売上高970億円、営業利益78億円、受注980億円の数値目標を掲げた。

 

 この中で、重点取組として信号システム、パワーエレクトロニクス事業領域の拡大、また人材戦略の強化、財務体質の改善を重点取組事項とした。

 

 信号システム事業は、インドの電子連動システムや欧州ポーランドにおける電子連動システムの認証取得などを通じて海外マーケットの拡大を図り、国内では自動運転保守作業軽減のための製品投入、道路交通分野では制御器、信号灯器のシェア拡大を目指す。中計3年間での海外受注累計で560億円(前3年間累計比67%増)を見込む。一方、国内においては全球測位衛星システムや公衆無線回線を活用した「統合型列車制御システム」で大幅な地上設備削減、メンテナンス作業軽減などでシステム受注獲得を目指す。更に自動運転バスの実証実験などを通じ、無人運転への対応も進める方針。なおホームドアについては関東での普及が一巡、現在関西が進行中、中部でも需要があり、現在規模の60億円~70億円規模の受注が継続するとしている。

 

 一方のパワーエレクトロニクス分野では、半導体製造領域の拡大、新規顧客の獲得などにより事業拡大を目指している。具体的に製品領域の拡大については旧型RF電源RFKシリーズの後継機種としてTXシリーズを投入、周波数範囲、出力、機能面で大きな拡充がなされた。これに伴い最新CPU、GPU、新通信方式にも対応、深堀りエッチング対応などにも対応可能で、米国半導体エッチング大手(アプライドマテリアルズとみられる)への納入が本格拡大しよう。ちなみにエッチング装置は、2024年に238億ドル市場となったと見られ、2025年は248億ドル、2026年は2桁成長が見込まれる。最新の半導体では高アスペクト比のパターン形成によりプロセスが複雑になり、エッチングには複数の高周波(RF)電源が、プロセスチャンバー内のプラズマ生成と制御をウェーハ上のパターンエッチングと同時に実行している。エッチング工程数が増す中でRF電源装置の使用個数は装置の伸びを上回るとみられる。また新領域としてはCVDやALDなどへも投入が広がる可能性がある。中計3年間累計受注を520億円(同61%&増)と見込むが、従来の東京エレクトロン向けDC電源も東京エレクトロンの受注拡大に合わせて拡大すると見られることから、RF電源の拡大が加わることで、中計計画を上回る受注獲得が期待される。

 

 利益面では27/3期に営業利益率7%、28/3期に8%と向上を想定しているが、これはパワーエレクトロニクスの構成比が高まること、同製品は量産効果が大きく利益貢献することから、MIX良化で利益率が高まる見通しと見られる。全体を通じ、前2025年プランではパワーエレクトロニクス事業の未達で中計計画並みの達成にとどまったが、今回の中計においては信号機事業が計画通り、パワーエレクトロニクス事業が上振れ、全体として新中継計画の上振れが期待される。

 

 株価は半導体生産の回復遅れから24/3期決算発表後、業績予想が大幅好転予想ながら下落を続け、4/7には393円と400円割れの安値更新となったあと多少もどしている。現在、26/3期会社予想EPS55.81円に対しPER8.9倍は東証プライム電機平均PER21.8倍に対し割安であり、ダイヘン11.6倍より若干割安、アドテックプラズマ8.4倍と同水準、信号同業の日本信号8.9倍と同水準にあり、PBRは0.6となっている。26/3期は営業減益予想ながら人材投資強化で大幅なコスト増を見込み、実質は営利増であり、しかも半導体向けで増額期待がある。また下期以降、本格的な半導体製造装置受注の回復、継続的な成長をしているインド鉄道向けで追加受注拡大も期待される。27/3期は収益上伸で最高収益更新が期待されること、信号の海外大型受注獲得のアナウンスも期待されることから、ややポジティブからポジティブに評価を高めたい。

 

*ダイヘン(6622)、アドテックプラズマ(6668)、日本信号(6741)との比較

 

 

(H.Mirai)

 

 

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