中国当局が6月2日、一部の米自動車メーカーのサプライヤー向けのレアアースの輸出について一時的な認可を出していたもようだ。ロイター通信が6月6日に関係者からの情報として伝えた。トランプ米大統領と中国の習近平国家主席が6月5日に電話会談する直前だった計算になる。
写真:2018年、会談するトランプ米大統領と中国の習近平国家主席
(出所:中国外務省ホームページ)
両首脳の電話会談を伝える中国のプレスリリース:习近平同美国总统特朗普通电话 — 中华人民共和国外交部
■ステランティスなどにも6か月間のライセンスか
報道によると、認可が下りたのはゼネラル・モーターズ(GM)、フォード・モーター、旧米クライスラーを傘下に持つ欧州ステランティスのサプライヤー。ライセンスは6カ月間有効という。ロイターは、5月下旬から一部の米電機メーカーのサプライヤーにも認可が下りていると伝えた。
■輸出制限影響、スズキが「スイフト」生産停止
中国は4月4日からサマリウム、ガドリウム、テルビウム、ジスプロシウム、ルテチウム、スカンジウム、イットリウムの一部に対し輸出規制を課すと発表した。現地企業が輸出先を明らかにした上で中国の税関当局に申請し、認可を得られれば輸出ができる。だが、実際には認可はほぼ下りず、中国からのレアアース輸出は停滞している。
その結果、世界の自動車メーカーが材料不足に陥り、日本でもスズキが主力小型車「スイフト」の生産を停止するなど影響が広がった。
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■継続なら中国にとっても諸刃の刃
一方で、足元では欧州向けなど一部で輸出認可が下り始めているとの情報も上がっている。
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輸出制限は中国側にとっても収入減につながる。また、長期の輸出規制はかつての対日レアアース規制や水産物禁輸などのように、代替手段の確立を急がせてしまう可能性もある。米中交渉は始まったばかりで、双方の態度がどう変化するか、注視の必要がある。
(IR Universe Kure)