今週、11日に関東鉄源,13日に中部鉄源の6月テンダーが発表された。
関東鉄源の6月テンダーは前回比トン当たり122円安の42,267円(H2/FAS)で2万トン、13日の中部鉄源は前回比400円安の45,100円(新断/FAS)で3000トン落札、となった。いずれも小幅な下げではあったが、関東鉄源は2万トンというロットで小幅下げにとどまったが、実勢は弱い。湾岸のH2実勢はトン当たり39,000円~40,000円という水準。
(中部鉄源と関東鉄源テンダー価格の推移)
(市中実勢H2&新断バラ相場の推移)
(東鉄田原陸上H2価格とバングラデシュ輸入スクラップ価格の推移)
今後の鉄スクラップ市況を占うにおいて上げか、下げか、というシンプルな疑問ではあるが、少なくとも上げは見込めない。下げ寄りが続くとみる。なによりも鉄鋼製品の需要が弱すぎる。トランプ関税影響による自動車の減産で自動車向けが落ち込んでる、建設向けは人手不足に資材高騰、24年から導入された「働き方改革」は結果的に「働かない改革」になっている。天下の悪法。
こうした諸事により多くの建築プロジェクトが止まっている。未工事の金額は15兆円というとてつもない規模に膨らんでいる。
関連記事:縮む建設業、工事さばけず 未完了が兆円超え過去最大
これでは鋼材需要は伸びない。決して。トランプ関税は不可抗力としても、建設工事の停滞は人為的な問題だと捉えられる。日本経済の足を引っ張っているといっても過言でないだろう。
この影響は建設向け鋼材は多く作る電炉メーカーを直撃している。
例えば大阪製鉄。月間4万~5万トンの鉄スクラップを購入するビッグイーターではあるが、減産に伴って荷受け制限を実施している。こうした事例は全国各地でみられる。
また輸出向けも強くないため、発生も少なければ需要も弱いという負のバランスとなっている。
そしてこのような状況下で問題はプレーヤーがいまだに増えていること。
鉄スクラップのリサイクルプロセスにおいて、中間処理は極めて重要な役割を担っていることは確かだが、プレーヤーが増えすぎている。
市中スクラップは、建物の解体現場、老朽化した機械、廃自動車、家電製品など、多岐にわたる発生源から回収され、中間処理業者によって適切に処理される。主要な中間処理設備としては、ギロチンシャー(切断)、シュレッダー(破砕)、プレス(圧縮)、ガス切断などがあり、これらの処理は主に製鋼時の溶解効率を向上させることを目的としている。
しかし、中間処理業界は複数の課題に直面している。
全国のギロチンシャーは約1,530台、シュレッダーは約243台存在する。
しかし、現状は設備過剰状態。
それぞれの平均稼働率は約50%、約45%と試算されており、出荷量に対して2倍以上の過剰設備状態にあるといわれている。
この過剰設備は、業界内の競争激化や収益性の低下につながっている。
さらに、後継者不足、発生するダストの処理費用、輸送コストの高騰、そして中国系業者の参入による回収競争の激化といった構造的な問題に直面しているため、今後はスクラップ業界の淘汰が進む。
また、主に中国系の中間処理施設から発生する騒音や火災の危険性に対する地域住民の懸念から、一部の地方自治体では条例制定の動きも見られ、地域安全との両立が課題となっている。
鉄スクラップに混入しやすい銅や錫などの不純物は、製鋼過程で除去が困難であり、最終的な鋼材の品質劣化を引き起こす可能性があるため、不純物除去の重要性が強調されている。
中間処理能力の過剰は、量的な処理能力が既存の需要を十分に満たしていることを示唆している。しかし、この過剰能力にもかかわらず、業界は下級スクラップの割合増加や、高度な製鋼プロセスに必要な高品質スクラップの需要増大といった課題に直面している。
(IRUNIVERSE YT)