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BIR非鉄金属部門: 世界市場は政策変動とデジタル化による「貿易風のような市場」

2025/10/30 21:10
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BIR非鉄金属部門: 世界市場は政策変動とデジタル化による「貿易風のような市場」

IRuniverse取材チームは、2025年10月27日・28日に開催されたBIR(Bureau of International Recycling)の秋季大会に参加。会議1日目の非鉄金属部門では、各国の政策転換、関税、新技術が業界に及ぼす影響や、データ活用によって変化に対応する戦略について議論された。

セッションの冒頭では、チェアマンを務めるニュージーランドのHayes Metals社の部門長であるPaul Coyte氏が、世界の非鉄金属貿易の流れがますます複雑化している現状を指摘した。「非鉄金属の流れは貿易風のようなもの。正確な情報がなければ、風向きを予測できない。同様に、正確なデータがなければ、将来の市場動向を見極めることもできない」と述べ、データ精度と情報共有の重要性を強調した。

近年、非鉄金属業界を取り巻く政策環境は世界的に変化している。アジアではマレーシアの「Operation Metal」やタイの輸入規制強化、中国の検査体制強化が進む。アメリカでは新たな関税政策がサプライチェーン全体に影響を与え、欧州では再生銅輸出の制限案が議論されている。一方で、中東やオセアニアでは物流やコスト、競争環境の変動が進行中である。

非鉄金属部門の最初の登壇者は、英国のProject Blue社でコンサルティング部門を統括するJessica Fung氏。同社は世界の重要鉱物サプライチェーンを分析しており、政策変更や関税措置が市場フローと価格に即時かつ明確な影響を与えることをデータで示した。

「米国の新たな関税措置が発表されただけで、8月の発効前に精製銅の輸入量が急増。市場は瞬時に反応し、関税が発動する前にできるだけ多くの銅を米国に輸入しようとした」と言及したFung氏。過去10年間の再生銅貿易量は表面的には横ばいに見えるものの、Project Blueが取引額、出荷時期、報告基準を考慮して「銅換算ベース」で再分析した結果、実際には安定した成長を遂げており、輸出入1トンあたりの銅含有量も増加しているという。

また、再生銅は世界の銅消費量の約36%を占めており、今後10年で40%を超える見通しだ。特にアジアでは再生精錬能力の拡大が顕著で、日本と韓国ではスクラップ投入比率が2000年代初頭の10%未満から現在は約25%に上昇している。

続いて、ドイツに拠点を置くAurubis社のマルチメタルリサイクリング部門の最高執行責任者(COO)であるInge Hofkens氏が発表。Hofkens氏は「過去30年間で、これほど劇的な非鉄金属フローの変化を見たことがない。政治的にも、経済的にも、技術的にも」と語り、各国の政策が循環経済に与えるリスクを指摘した。Hofkens氏は一部の地域が市場を開放し、他の地域が国境を閉ざす一方で、他国から大量に金属を購入するような状況になれば、国際貿易と循環型経済そのものが脅かされると警告し、一次生産者とリサイクラーの関係について「相反するものではなく、責任ある一次生産と戦略的リサイクルは、業界のレジリエンスを高める両輪だ」と述べた。

さらに、同社が米国で建設中のマルチメタルプラントを例に挙げ、「地域のスクラップコミュニティを支援し、複雑なスクラップを高純度金属へと変換する新しい循環の形を実現する」と述べた。

非鉄金属部門最後の登壇者はニュージーランドに拠点を置くBuddy社のCEOであるStuart Kagan氏で、非鉄金属取引におけるデジタル化とテクノロジーの可能性を提示した。同社が提供するデジタルプラットフォームは、金属取引のプロセスを可視化し、売買双方の信頼を高めることを目的としている。
Kagan氏は「他の産業ではテクノロジーが急速に浸透していますが、非鉄取引は依然として人間関係が“血液”のような業界です。しかし、人間関係とテクノロジーは対立するものではなく、美しく共存できる」と述べ、デジタル化が信頼を損なうのではなく、新たな形で補強する可能性を強調した。

Kagan氏最後にMcKinseyの2024年レポートを引用し、「デジタルコア機能を構築した金属トレーダーは、スピードと効率性の面で競合を大きく上回ることができる」と締め括った。

 

 

その後のパネルディスカッションでは、アメリカのCNA Metals社のSebastien Perron氏がモデレーターを務め、フランス/ベルギーに拠点を置くGalloo社のAlbrecht Vanhoutte氏、およびProject BlueのFung氏が議論。EUにおける再生銅の輸出増・輸入減の傾向について議論が行われた。Fung氏は「EUは東西で異なる動きを見せており、東欧では需要が拡大する一方で、西欧では減少している。欧州全体では回収金属を処理する能力が不足しており、銅需要は今後もアジアを中心に高まるだろう」と分析した。Vanhoutte氏は「当社でも中国向けの輸出が増加しており、これは米国からの輸出に対する中国の関税が影響している可能性があります」と付け加えた。

さらに、Galloo社のEmmanuel Katrakis氏がEUによる再生銅およびアルミ輸出制限の可能性を提起したのに対し、Jessica氏は「貿易障壁の導入は、市場の流れや価格形成を歪め、非効率と摩擦を生み出す」と警告した。これに対してHofkens氏は、「安全保障を重視する政策の流れは理解できるが、市場は最終的に自らの解決策を見出す」と述べ、議論を締めくくった。

 

今回のBIR非鉄金属部門の議論は、世界的な政策変動とサプライチェーン再編のただ中にある非鉄業界の現状を鮮明に浮き彫りにした。関税や輸出規制といった各国の政策が、市場の流れや価格形成に即座に影響を及ぼす一方で、データ分析やデジタル技術の活用が新たな競争力として重要性を増している。
また、近年のアルミニウムや銅の価格高騰は各国の産業に大きな影響を与えており、トレーダーたちはスクラップの確保に奔走しているという。非鉄金属市場が今後直面する課題は、単なる需給バランスの問題にとどまらず、国際政治、テクノロジー、環境政策が複雑に交錯する中でいかに対応するかにある。各地域・各プレイヤーがデータに基づく意思決定をどのように実践していくかが、業界全体のレジリエンスを左右する鍵となるだろう。

 

 

(IRuniverse Midori Fushimi)

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