2025年6月上旬~6月中旬のレアアース市況は横ばい。米中両国が中国のレアアース輸出規制を巡る交渉を重ねる中、政策の先行きを見極めたいとの様子見気分が強く、取引を手控える動きが広がっている。
トランプ米大統領と中国の習近平国家主席は6月5日に電話会談を行った。その後、6月9-10日に英ロンドンで両国の閣僚会議が行われ、貿易の枠組みについて一定の合意を得たと伝わった。合意内容は両国首脳の最終承認が必要とされ、またレアアースを巡る正式な発表は6月13日時点でどちらからもない。しかし、中国では米国向け輸出が一部再開されたとも伝わり、世界の自動車業界を材料不足懸念で揺るがせたレアアースの供給ひっ迫懸念は、やや和らいでいる。
関連記事:レアアース輸出規制「解消」に道筋か 米中通商会議が終了、両国首脳の承認待ち | MIRU
関連記事:中国レアアース磁石の金力永磁、米国向け輸出が認可 中国規制、ひとまず緩和へ | MIRU
■中国国内価格も動かず
中国の業界団体である中国稀土協会が6月5日に発表した同国の5月のレアアース価格指数は178.3と、4月の177.9から小幅に上昇した。最高値は5月13日の181.3、最安値は5月6日の172.8で、値幅は8.5と小さかった。
中国レアアース指数の推移
(出所: 中国稀土協会)
上海有色網(SMM)は6月12日までのレポートで、「最終製品の需要に改善が見られない中、輸出規制による需要消滅も重荷となり、国内価格を引き上げる動きは沈静化した」と指摘した。
関連記事:中国、中重希土類に輸出規制 4日から テルビウムやジスプロジウムなど、レアメタルに続き | MIRU
■6月はほぼすべてのレアアースが横ばい
すべてのレアアースは5月下旬から動きがない。金属ネオジムは5月29日から、金属ジスプロシウムと金属テルビウムは5月22日から横ばい。金属ランタンは5月1日から同水準での推移が続いている。金属テルビウムは中国の輸出規制の対象となったため5月15日に1年5か月ぶりの高値に上げたが、勢いは続かなかった。
金属ネオジムの価格推移(99% FOB China)($/Kg)
金属ジスプロシウムの価格推移(99.5% FOB China)($/Kg)
金属テルビウムの価格推移(99% FOB China)($/Kg)
金属ランタンの価格推移(99% FOB China)(S/Kg)
<Topic>
●6月11日
レアアースリサイクルを手掛けるカナダのサイクリック・マテリアルズ(Cyclic Materials、本社:加オンタリオ州)は6月11日、自社ホームページ上で、「オンタリオ州キングストンに工場と研究センターを建設する」と発表した。投資総額は2500万ドル(約36億円)。同社はキングストンに既に試験施設を所有している。
●6月9日
中国税関総署が6月9日に発表した中国の2025年5月の貿易統計で、1-5月のレアアース輸出総額は前年同期比20.9%減と、減少率は1-4月の15.3%減から悪化した。輸出量は前年同期比では2.3%増で、増加率は1-4月の5.1%増から鈍化した。ただ、5月単月での輸出量は5864トンと4月単月の4784トンから22.6%増えた。一方、1-5月のレアアース輸入総額は前年同期比6.8減と、減少率は1-4月の19.5%減から大幅に改善した。輸入量は21.7%減で、減少率は1-4月の23.6%減から縮小した。
関連記事:中国レアアース輸出額、1-5月は20.9%減 前月から悪化、輸出規制の影響続く | MIRU
●6月6日
オーストラリア株式市場(ASX)に上場する同国重要金属メーカーのオーストラリアン・ストラテジック・メタルズ(Australian Strategic Materials Limited 、ASM)は6月6日、「韓国・ソウルでの生産活動が堅調だ」と発表した。
関連記事: NdPr金属・NdFeB合金の中国外サプライヤーとして注目を浴びる豪Australian Strategic Materials社 | MIRU
●5月30日
豪レアアース生産企業であるライナス・レアアースはは5月30日、マレーシアのクランタン州政府の州主席政府との間で、混合レアアース炭酸塩(MREC)供給で覚書を交わしたと発表した。
関連記事豪Lynas社 マレーシアの政府系企業MB社と混合レアアース炭酸塩供給に関するMoU | MIRU
(IR Universe Kure)