中国国家統計局が6月16日までに発表した中国の2025年5月の経済指標はおおむね弱含んだ。1-5月の不動産開発投資は前年同期比10.7%減と1-4月の10.3%減から悪化し、2ケタ減が続いた。消費者物価指数(CPI)が小幅ながらもマイナスに転じ、デフレ圧力も強まっている。
2025年の中国の主な経済指標
注)単位は新規融資以外は前年同期比増減で%、新規融資は元。GDPは四半期。不動産開発投資と固定資産投資は年初からの累計
(中国国家統計局、中国海関、中国汽車工業協会、中国人民銀行などの発表をもとにIR Universeが作成)
5月も4月から悪化したデータが多く、景気反転のムードは薄かった。工業生産高の伸びや固定資産投資の伸び、卸売物価指数(PPI)が前月から低下し、製造業やインフラ投資の不振が続いた。製造業景況感指数(PMI)は前月からは改善したものの、好不況の境目である50はやはり下回った。貿易も輸出入もともに伸びが鈍化し、米国との輸出規制の応酬が響いた。
一方、新車販売は中国政府による買い替え促進策を背景とした電気自動車(EV)の好調を受けて増加した。消費関連は強弱データが交錯し、小売売上高が伸びた半面、サービス業の景況感指数(非製造業PMI)は悪化した。
米国との関税の応酬はレアアース関連などで解決の兆しも伝わるが、互いにどこまで妥協できるかは不透明感が強い。
何よりも国内総生産(GDP)の3割を占めると言われる不動産に回復の兆しがないことは、中国経済にとって構造的な弱点だ。既に銀行の利ザヤ縮小も伝わり、当局が金融政策で景気を支えようとしても、銀行の体力不足で身動きが取れなくなっている可能性がある。デフレ入りの様相も濃く、安泰とは言い難い状況が続いている。
(IR Universe Kure)