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レアアース市場近況2025#12  上昇、原材料ひっ迫と製品需要の拡大期待 ネオジム高い

2025/06/24 18:01
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 2025年6月中旬~6月下旬のレアアース市況は上昇している。米中間のレアアース問題が一時休戦の様相となり、ひとまず安心感が広がっている。中間加工国である中国で原材料のレアアース輸入が細っていることが明らかになった一方、中国の川下企業の調達、や米欧向け輸出などの再開の兆しが伝わり、需要が拡大するとの期待が浮上している。

 

■中国の5月レアアース貿易、輸出入ともに大幅減

 中国税関総署が6月20日に発表した中国の5月のレアアース輸入量は、前年同月比14.9%減の1万1700トンだった。

 

プレスリリース:(14)2025年5月进口主要商品量值表(美元值)

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  足元ではミャンマー産鉱石などの輸入が鈍っているとの報道がある。他方で、米国との交渉が進んだ結果、米国向けレアアースの一部で輸出再開が伝わった。また、中国商務省の報道官が6月上旬、欧州向けレアアース輸出に前向きな談話を発表し、輸出向け需要の拡大期待も強まった。

 

プレスリリース: 商务部新闻发言人就中重稀土出口管制措施答记者问

関連記事: 中国レアアース磁石の金力永磁、米国向け輸出が認可 中国規制、ひとまず緩和へ | MIRU

 

 こうした状況から、中国国内のレアアース市場のムードは明るさを増している。中国の業界団体である中国稀土協会が日次で発表している同国のレアアース価格の平均値は6月24日に182.6と、23日の182.2から小幅に上昇した。6月10日には183と、過去1年間の最高値圏に上昇していた。

 

中国レアアース指数の推移

(出所: 中国稀土協会)

 

■ネオジム1年半ぶり高値、ランタンも上げる

 

金属ネオジムの価格推移(99% FOB China)($/Kg)

 

 多くのレアアース国際価格も6月半ばに値を上げた。特に軽希土類の代表格で電池向け需要の多い金属ネオジムは6月19日に$77.25/kgと、2023年12月以来ほぼ1年半ぶりの高値を付けた。

 上海有色網(SMM)は6月24日までのレポートで、中国国内では、米欧向け需要の再開期待を背景に「磁性材料企業が買い戻しを行っている」と指摘。「大企業による集中的な調達があった」と説明した。

 

金属ランタンの価格推移(99% FOB China)(S/Kg)

 

 同じく軽希土類の金属ランタンも6月12日に1か月以上ぶりに動き、$3.3/kgに値上がりした。超硬向け需要が多く製造業の低迷が重荷となっているが、全体の明るいムードが波及した。

 

金属ジスプロシウムの価格推移(99.5% FOB China)($/Kg)

金属テルビウムの価格推移(99% FOB China)($/Kg)

 

 

 中重希土類である金属ジスプロシウムと金属テルビウムも6月12日に小幅に上昇した。金属ジスプロジウムは$295/kg、金属テルビウムは$1240/kgをそれぞれ付けた。 特に中重希土類は中国が4月からの輸出規制の対象にしているだけに、供給ひっ迫懸念が根強い。ただ、金属テルビウムなどは5月に1年以上ぶりの高値圏に上げたこともあり、一段と上値を追う動きは限定的だ。

 中重希土類を巡る中国の輸出規制の緩和は、なお予断を許さない。先の中国税関総署の統計では、中国の5月のレアアース製品価格の輸出量は前年比31.1%減、レアアースそのものの輸出量も5.7%減だった。米ブルームバーグ通信は6月21日、レアアースの国際流通はなお滞っており、「(中国の)許可制度自体があまりにも不透明で、企業が将来の供給に強い確信を持つことは不可能だ」との取引業者の声を伝えた。

 

プレスリリース:(14)2025年5月进口主要商品量值表(美元值)

 

<Topic>

●6月23日

  国際協力銀行(JBIC)は6月23日、太陽鉱工(本社:兵庫県)のマレーシア法人であるTAIYO KOKO MALAYSIA SDN.BHD.(TKMSB)との間で、融資金額30億円(JBIC分)を限度とする貸付契約を同日に締結したと発表した。

 

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●6月19日

 インド経済誌のエコノミック・タイムズは6月19日、「同国電池リサイクルのアテロ(ET Attero)が、レアアースのリサイクル生産能力を大幅に拡大すると明かした」と伝えた。

 

関連記事: Attero、約11億円を投じてレアアースリサイクルを大規模拡張 | MIRU

 

●6月14日

  ロイター通信は6月14日、「インドのゴヤル商務相が最近、同国国営レアアース会社のIRELに対し、自国分の確保を優先するよう要請した」との関係者の話を伝えた。

 

関連記事: インド、日本向けレアアースの輸出を停止か 外電報道、自国分確保を優先 | MIRU

 

(IR Universe Kure)

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