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亜鉛のニルスター、豪精錬所が閉鎖の危機 公的支援あおぐ、アンチモンなども生産

2025/07/03 11:38
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 シンガポール資源大手トラフィグラ傘下のニルスターが、オーストラリアでの亜鉛精錬所の閉鎖の危機に直面している。豪経済紙のフィナンシャル・レビューが7月1日に伝えた。コスト上昇により採算が悪化しており、亜鉛だけでなくアンチモンなどの希少鉱物の豪州での生産にも影響することから、豪政府に追加支援を仰いでいるという。

 

 

■「赤字だが重要」なら公的支援

 報道によると、ニルスターは南オーストラリア州とタスマニア州の赤字製錬所の存続について、公的資金の導入を求めている。理由は、こうした亜鉛や鉛の精錬所では亜鉛のほかにアンチモン、ビスマス、テルルなどの重要鉱物も生産されるためだ。「豪州を含む西側諸国が重要鉱物分野について脱中国依存を進める以上、公的支援が必要」だというのが同社の言い分だ。

 親会社のトラフィグラも同じ姿勢を示す。トラフィグラは、2024年度に既にこの2か所の精錬所について減価償却した。その上で、「赤字だが重要な事業は、公的資金で支えるのが望ましい」との姿勢だという。

 

■亜鉛価格は持ち直さず

 ニルスターはオランダに本拠を置く亜鉛大手。2021年には生産量で世界2位を記録した大企業だが、株主だったトラフィグラへの負債が返せず、2019年にトラフィグラの傘下に入った。

 

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 特に近年はエネルギーや人件費といったコスト上昇の一方で、安い中国製品の普及で亜鉛加工料が低迷し、経営は厳しい。2024年にも米精錬所の操業を停止。オランダの精錬所は長期メンテナンスで生産を停止し、豪州の工場も停止していた時期があるなど、経営の不安定さが目立っていた。

 

関連記事: 亜鉛大手ニルスター 米の亜鉛鉱山操業休止 亜鉛価格低迷とインフレ影響で | MIRU

 

 一方、亜鉛価格に持ち直す気配はない。ロンドン金属取引所(LME)の亜鉛価格は7月2日に現物$2710.5/tonだった。2022年春に付けた$4000超の水準から、6割程度安い水準での低迷が続いている。

 

過去5年間のLME亜鉛価格の推移($/ton)

 

関連記事:鉛・亜鉛大手Nyrstar 豪州で製錬所複数閉鎖の危機 政府に早急な支援要請

 

 

(IR Universe Kure)

 

 

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