東京製鐵は14日、2025年8月契約の鋼材販売価格について、3カ月連続で全品種据え置くと発表した。国内、海外市場ともにトランプ関税政策の動向を様子見する傾向が強く、荷動きが継続して低調であることも判断に影響しているようだ。
生産予定については7月全体で22万トン(前月予定比から3万トン減)、H形鋼が7万トン(1万トン減)、ホットコイルは10万トン(2万トン減)[内、輸出は5000トン(5000トン減)]、厚板4万トン(横ばい)。
物件価格や在庫販売価格については前月から変更なし。H形鋼が11万7000円、異形棒鋼が8万7000円、厚板が10万円(建値と同額)。7月14(月)午後より販売開始した。
東京製鐵の基調コメントの概要は以下の通り。
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海外マーケットは、世界的に米国との一般関税交渉について未だ決着しない状況のもと、すでに実施されている鉄鋼関税と各国の保護政策の維持により、国際的な鉄鋼関連品の取引が停滞し、製品価格は低迷が続いている。加えて、今後の対米関税交渉の結果次第では、各種産業への悪影響が懸念されている。
さらに、足元の中国国内の景気減退による内需不振もあって、周辺諸国への鉄鋼関連品の供給過剰による量的圧力が強まり、製品のみならず半製品においても国際市況を押し下げる要因となっている。引き続き、世界経済や貿易動向、中国における鉄鋼需給の変化について慎重に注視していく。
国内マーケットの建材品種では低迷が続く建設需要と合わせて、梅雨明け以降も酷暑による施工能力の減退も影響し、鋼材の荷動きは低いままの状態にある。しかし、継続して物流施設やデータセンターなど新規の引き合いが多く、さらには今後が公共工事も本格化していくことから、荷動きの増加が期待される。
鋼板品種では、米国との関税交渉に注目が集まる中、輸出型産業を中心に今後の国内外市場の需要動向を見据えており、一部で生産拠点やサプライチェーンの再構築の動きがみられるほか、大きな国内拠点増強の流れも先送りとなっていることから、鋼材全体の景況感は停滞気味。一方で、製造業全体におけるDX化の動きに伴い、産業機械や工作機械関連をはじめ、通信関連設備などで堅調な需要が想定されている。
国内は全体的にみても、これまでの流通各社の慎重な購入姿勢から、足元の在庫量は少ない。これから鉄鋼メーカーの夏期減産を迎えるため、一段の需給バランスの改善と市況の底打ちに期待したい。以上のような状況のもと、各種鋼材を取り巻く環境を鑑み、早急な市況底入れを図るべく、全品種据え置きとする。
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また、小松﨑裕司取締役常務執行役員営業本部長は基調コメントに補足する形で以下のように見解を示した
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海外市場では、アメリカにおける鉄の50%追加関税に続いて、その他の相互関税など様々な交渉が継続していることから依然不透明な貿易環境にある。また各国の通商措置の行方が定まらないこともあり、全体的に停滞感が漂っている。ただ、価格レベルにおいては、メーカーの採算面見ても下げしろは限定的になってきていると認識している。
問題は中国の動向だが、6月末から一部地域で減産要請が出されたほか、過剰供給に対しての設備削減方針が政府から発表されるなかで、先物価格も反応した。足元でも国内の大手メーカーによる値上げが行われている。鉄鋼需給の改善に実効性のある経済対策や生産抑制策がどのように推進されていくのか注視していきたい。
国内は総じて低調な荷動きではあるが、商況は緩やかになってきていると思う。ただ下げ止まりの状態ともいえない。特にアメリカの関税政策の動向については、やはり国内の鋼材への影響は計り知れず、全体的に不安定な市場心理が広まっている。
その中で、流通各社はかなり慎重な購入姿勢を維持してきたが、7~9月にかけて各メーカーは夏期減産に入ることで、需給バランスが改善することも十分あり得ると考えている。鋼材市況の底打ちに向けたマーケットの動きに期待したい。なお、輸入鋼材は盛んに取り寄せられる状況ではあるが、ドルベースで若干、オファー価格が下がっている認識。
国内のスクラップ市況は夏期減産の影響を受けて、需要減少へ向かう見込み。海外のスクラップ市況は引き合い低調で、値動きは軟調傾向にある。
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2025年8月契約の品種別販売価格(O/T NET ベース価格、トン当たり円)は以下の通り。
H形鋼及び形鋼:2023年4月契約において3,000円の値上げ後、1年5か月連続で、価格据置としたが、2024年10月契約にて1万2,000円値下げ。今回の2025年5月契約で7カ月ぶりに3000円値下げ。
H形鋼=11万2,000円(2024年10月契約にて1万2,000円値下げし、2025年5月契約で7カ月ぶりに3000円値下げ。)
縞H形鋼=12万2,000円(2024年10月契約にて1万2,000円値下げし、2025年5月契約で7カ月ぶりに3000円値下げ。)
I形鋼=11万3,000円(2024年10月契約にて1万2,000円値下げし、2025年5月契約で7カ月ぶりに3000円値下げ。)
溝形鋼=10万8,000円(2024年10月契約にて1万2,000円値下げし、2025年5月契約で7カ月ぶりに3000円値下げ。)
角形鋼管(コラム):2022年9月契約において5,000円値下げ後、2年連続で、価格据置としたが、2024年10月契約において、更に1万円の値下げ。
角形鋼管=11万8,000円(2024年10月契約にて1万円値下げ。)
U形鋼矢板:2023年4月契約にて3,000値上げ後、1年と5カ月連続で、価格据置としたが、2024年10月契約において、1万2,000円値下げ。今回の2025年5月契約で7カ月ぶりに3000円値下げ。
U形鋼矢板=12万4,000円(2025年5月契約にて3000円値下げ。)
異形棒鋼:2024年10月契約において、1万円の値下げ。以降は5カ月連続で横ばいとなり、2025年4月契約は3000円の値下げ。
異形棒鋼=8万5000円(2025年4月契約にて3000円値下げ。)
厚板:2023年7月契約にて1万円下げ後、1年と2か月連続で価格据置としたが、2024年10月契約において、更に1万5,000円の値下げ。今回の2025年5月契約で7カ月ぶりに3000円値下げ。
厚板=10万円(2025年5月契約にて3000円値下げ。)
コイル類4品種:2024年10月契約で1万5,000円の値下げ。以降は5カ月連続で横ばいとなり、2025年4月契約で酸洗コイル5000円、他は3000円の値下げ。
ホットコイル=8万9000円(2024年10月契約で1万5,000円の値下げし、2025年4月契約にて3000円値下げ。)
縞コイル=9万2000円(2024年10月契約で1万5,000円の値下げし、2025年4月契約にて3000円値下げ。)
酸洗コイル=9万5,000円(2024年10月契約で1万5,000円の値下げし、2025年4月契約にて5000円値下げ。)
溶融亜鉛めっきコイル=12万1,000円(2024年10月契約で1万5,000円値下げし、2025年4月契約にて3000円値下げ。)
以下カットシート類(2024年10月契約で1万5,000円の値下げ。以降は5カ月連続で横ばいとなり、2025年4月契約で3000円の値下げ)
熱延鋼板=9万4,000円(2024年10月契約で1万5,000円の値下げし、2025年4月契約にて3000円値下げ。)
縞鋼板=9万7,000円(2024年10月契約で1万5,000円の値下げし、2025年4月契約にて3000円値下げ。)
酸洗鋼板=10万4,000円(2024年10月契約で1万5,000円の値下げし、2025年4月契約にて3000円値下げ。)
[申込締切日:2025年7月16日(水)12時まで]
(IRuniverse K.Kuribara)