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ファナック(6954) 26/3Q1決算電話会議メモ ややネガティブ継続

2025/07/28 11:02
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26/3期予想を開示、1.2%増収0.4%営利増、経常0.2%減予想と不透明要素多く横ばい予想

株価4220円(7/25) 時価総額41456億円 発行済株982383千株

PER26/3期DO予27.2X PBR(2.28X)配当還元率60%   配当利回りDO予2.2%

 

要約

・26/3Q1は0.6%増収28.7%営利増、受注4.0%増と在庫調整進み受注増で緩やかな回復

・26/3期予想開示し1.2%増収0.4%営利増、経常0.2%減予想と不透明要素多く横ばい予想

・27/3期は米国でトランプ政策による設備投資増期待も中国一服で緩やかな収益拡大見通し

 

26/3Q1は0.6%増収28.7%営利増、受注4.0%増と在庫調整進み受注増で緩やかな回復
 

 7/25に26/3Q1決算発表、同日電話会議が開催された。26/3Q1は売上高1964億円(同期比0.6%増、Q4比7.4%減)、営業利益424億円(同28.7%増、同12.2%減)、経常利益516億円(同25.3%増、同10.0%減)、税引利益378億円(同31.4%増、同15.5%減)、受注高2059億円(同4.0%増、同2.6%減)と同期比受注回復で緩やかな収益改善に。BBレシオも1.05と25/3Q3から3四半期連続で1.0超えに。

 

 地域別売上を同期比でみると、中国、アジアが増加、欧米は2ケタ減に。中国が533億円(20.5%増)となっており、ロボットが219億円(88.6%増)と伸長した。またFAも工作機械のNC化率75%目標で補助金継続から183億円(12.4%増)に。一方ロボマシンは反動減で122億円(20.8%減)にとどまる。


 アジアも334億円(35.4%増)と、ロボット、ロボマシンなどインド向けが伸長、但しQ4対比では27.7%減と反動減に。一方、米州は478億円(17.4%減)となり、構成比で中国に抜かれる。最大部門のロボットが318億円(21.0%減)とEV、スマホ、家電向けなど全般に不振。欧州は345億円(15.9%減)と全部門が減収と万遍なく落ち込んでいる。特に主力のロボットは175億円(20.9%減)と、EVの設備不振などが影響している。日本は254億円(0.4%増)で工作機械受注は工業会の受注増加が緩やかながら継続しFA122億円(8.4%増)も、ロボット、ロボマシンは2ケタ減に。

 受注では主力2地域の中国588億円(19.0%増)、米州580億円(21.4%増)が牽引、アジアが反動減、日本も内需低迷で受注減、欧州は低迷継続となったが全体で受注増に。四半期推移では5四半期同期比増加となった。但し伸び率が1ケタにとどまり、25/3Q4比では2.6%減となっている。なお地域別のBBレシオでは1.05と3四半期1を上回っており、中国の1.10、米州の1.21などで多少倍率が高くなっている。

 製品別売上では最大部門のロボットが810億円(3.8%減)と6期連続で同期比減と低迷した。最大輸出先の米州が318億円(21.0%減)、欧州も175億円(20.9%減)とEV不振で自動車向けの不調が影響している。国内も自動車関連の減速があり46億円(16.8%減)にとどまった。一方、中国が219億円(88.6%増)と伸長、受注は減速気味もEV向けの上伸が続いている。FAは497億円(3.5%増)と、中国でNC化促進政策の効果などで183億円(12.4%増)、国内も工作機械工業会受注が緩やかな受注増で122億円(8.4%増)。一方、世界的には工作機械受注低迷、FA設備投資減退で欧米が2ケタ減と低迷した。ロボマシンは339億円(16.3%増)と中国が122億円(20.8%減)と低迷したものの、アジアが127億円(2.9倍)とインドでのIT向けロボドリルで大口案件が寄与した。

 製品別受注では最大部門のロボットが906億円(同期比15.6%増、25/3Q4比0.3%減)と高水準の受注が続いており、売上とは異なり3四半期連続で増加し、在庫調整一巡で需要も本格復調に。なお協働ロボットなどの需要も拡大しつつあり、製造業に加え、非製造業向けの拡大も期待できる。
収益性が最も高いとみられるFAは550億円(0.4%増)にとどまる。これは世界的には工作機械受注が中国を除き伸び悩んでいるため。ロボマシンも290億円(8.1%減)と、射出成形機などは電機向けの伸び悩みが影響している。

 

 

 製品別BBレシオはFAが1.11となっており、2四半期連続で1を上回った。ロボットも1.12と3四半期1を上回る。

 利益面では増収効果で32億円、原価差額24億円に加え、為替影響もあり未実現利益影響が44億円あったことが大きく寄与した。未実現利益の増加を除くと15.1%営利増となる。なお収益性の高いと見られるFAの増収効果、円建て輸出も円安影響が多少あると見られ、売上総利益率0.3ポイント改善し39.0%となったが、未実現効果を除くと逆に利益率が若干低下していると見られる。

 

26/3期予想開示し1.2%増収0.4%営利増、経常0.2%減予想と不透明要素多く横ばい予想

 

 会社側では26/3期予想について期初では開示を見送った。これはトランプ関税、自動車のEVに対する設備投資の見直しによる減速、一方で中国での継続的な補助金政策、世界的に省人化、自動化需要の拡大、防衛・航空・宇宙分野での設備増強に需要増など、不透明要素が多かったため。現在も状況は大きく変化していないとしたが、今回、8/1からのトランプ関税15%を前提に、為替前提を1$=140円の円高想定で26/3期予想を開示した。26/3期は売上高8070億円(1.2%増)、営業利益1595億円(0.4%増)、経常利益1963億円(0.2%減)、税引利益1430億円(3.1%減)予想とした。また26/3H1を売上高3976億円(同期比2.5%増)、営業利益815億円(7.8%増)、26/3H2を売上高4094億円(同期比0%増)、営業利益780億円(同6.3%減)予想とした。下期にトランプ関税の影響などがあり、売上で同期比横ばいにとどまり、利益面では関税分の転嫁を見込むものの、売上横ばいで諸経費増を補えず、円高も加味し減益予想としている模様。部門別、市場別予想の開示はないが、全体的に伸び悩むとしている。なお26/3Q1受注が同期比4.0%増と25/3Q1から5四半期同期比増加しているが、26/3Q2についてはQ1比減少するとしている。また利益についてQ1は最初の四半期で諸経費が相対的に低いことで、Q2の利益はQ1比減少し、Q3,Q4はQ2並にとどまるとしている。

 現状、FAは日本での工作機械受注が伸び悩み回復は下期になる見通し。一方で、中国はNC化促進の補助金継続などで堅調な見通しで全体では若干増加のイメージ。ロボットは省人化投資で米国は堅調、欧州はEV不振の影響があり設備投資様子見が続くとしている。中国は引続き堅調な見通しなど。全体として売上見通しは会社予想並み、利益は想定に対し円安で推移し、例年通り増額修正が見込まれるものの、大きな増額とはならず、多少の上振れにとどまろう。

 

 

27/3期は米国でトランプ政策による設備投資増期待も中国一服で緩やかな収益拡大見通し
 

 27/3期については、新たな世界経済の枠組みつくりの中で、世界的にサプライチェーンの再構築やリスク分散のための主要産業の分散設備等の実行が増加しよう。このような中で同社はFAでai-Dシリーズサーボを投入、エネルギー損失を10%低減、工作機械の高精度化、加工サイクルタイムの短縮を実現、さらに小型化も実現した。同シリーズの投入でCNC装置、ロボットの世界NO1企業として差別化製品群の拡大により、実質的に価格改定効果が得られ関税問題などの影響を軽減、利益率維持が見込まれる。なお新生産革命の中核企業として収益拡大が見込まれるが、成長の中心はロボット事業とみられ、高シェアのCNC装置の構成比率は相対的に低下し、MIX悪化が継続しよう。このため利益の伸びは過去のような変化率とはならないと見られる。加えて27/3期はロボットが自動車ではEV設備投資の見直し影響の継続が懸念され、全体として緩やかなり需要増にとどまる懸念がある。FAは中国の工作機械NC化率75%への推進特需一巡し減速があり得るが、日本の工作機械受注は中国以外の回復が見込まれ、全体として受注増が見込めるものの大きな伸びは期待しにくい。ロボマシンも工作機械受注の回復、射出成型機もボトムからの反発が期待されるが、増加寄与は限定的と見られる。

 全体として、27/3期も増収ながら、世界的なサプライチェーンの再構築などが影響、利益は緩やかな拡大にとどまると見られる。

 株価は4/23の25/3期決算発表で上振れ着地したことから多少戻ったが、26/3期予想を開示しなかったことから、3600円~3800円のレンジで推移していた。今回、7/22のトランプ関税15%のアナウンスを受けて7/1以来の4000円大台乗せとなって4449円まで急騰した。現在、7/25発表の26/3期会社予想EPS153.25円はコンセンサス予想EPS172円に対し弱気な数字の開示となり、コンセンサス予想PER24.5倍に対しPER27.5倍となっている。プライム電機平均PER17.9倍に対し割高となっており、安川電機の25.3倍、三菱電機20.2倍に対しても若干割高となっている。現状、設備投資の遅延影響が上期では避けられないと判断、下期も大きな回復がないと見られる。日本を代表するハイテク株ではあるものの、CNC装置で稼ぎ出した高収益体質から、ロボット売上構成比の高まりとともに製品ミックスの変化から27/3期も収益性の大幅回復は期待しにくい。また同社の成長スピードが半導体製造装置メーカーの成長スピードに劣後する見通しから、設備投資関連株として妙味が少ないと判断、ややネガティブ継続と判断する。
 

出所:図、表などファナック決算説明会資料、決算短信より添付、もしくはIRユニバース加工

 

 

*安川(6506)、三菱電機(6503)との比較

 

 

 

 

(H.Mirai)

 

 

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