米コンサルティング大手のマッキンゼー・アンド・カンパニーは7月24日、自社ホームページ上で、レアアース需給についての最新レポートを発表した。同社はこの中で、磁石向けレアアース の世界需要は 2022 年の 5万9000 トンから 2035 年には 17万6000 トンと約 3 倍になると予想した。脱中国依存の進行やリサイクル技術の普及など課題は多い。
■供給不足、最悪3割増しも
プレスリリース: Recycling REEs for rare earth magnets | McKinsey
レポートによると、磁石向けレアアース材料として認識されるのはネオジム、プラセオジムのほか、添加剤としてのジスプロシウム、テルビウムなど。中長期に 電気自動車(EV)の普及が続く上、風力発電など再生可能エネルギーの需要増加が、レアアースの需要拡大につながるとしている。
2035年の磁石向けレアアースの需給予測
一方で、磁石向けレアアースの生産は、中国が採掘の60%以上、精製の80%程度を支配している。もし西側諸国と中国との対立が続き、中国からの供給が途絶えた場合、供給不足は現在の3割増しにも及ぶと予測した。中国リスクがない場合も地政学的な懸念に常に悩まされる分野になりかねないと指摘した。
■スクラップが命綱、技術の浸透急げ
かといって、脱中国依存は難しい。マッキンゼーは、特にネオジムなどの軽希土類は精製を中国が握っている率が高いとして、生産がアジアの他の国に移っても精製を中国に依存する状況が続くと予想した。脱中国依存は、10年単位でゆっくりとしか進まないとみている。
2035年の磁石向けレアアースのスクラップ発生予測
(出所:図表は2点ともにマッキンゼーのレポート資料)
このため、脱中国依存の観点から、スクラップの再利用が重要となってくる。スクラップ自体は多くの国で発生するため、中国依存を低減することができるためだ。マッキンゼーは、磁石の設計と製造のステップから発生する約4万トンの消費者スクラップと、寿命を迎えるさまざまな最終用途からの4万1000トンの使用済みスクラップの発生が期待できると推計した。
ただ、マッキンゼーは、既存のスクラップ資源の再利用システムは、銅や金、鉄鋼、アルミなどの金属の抽出に重点が置かれ、磁石向けレアアースの分離は重視されていないとも指摘する。早急なレアアース磁石の抽出技術の普及と浸透が課題となるとした。
(IR Universe Kure)