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山一電機(6941) 26/3Q1WEB説明会メモ データセンタ、AI半導体でポジティブ継続

2025/08/12 11:06
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226/3期4.6%増収3.3%営利増予想据置もTS事業が減額CS事業は増額修正、今後増額も
 

株価3000円(8/8) 時価総額 655億円 発行済株21,829千株
 

PER(26/3期DO予9.1X)PBR(1.41X) 配当(26/3DO予)98円  配当利回り:3.3%
 

・26/3Q1は通信用コネクタ好調、メモリ向けソケット低調で3.1%減収8.6%営利減
 

・26/3期4.6%増収3.3%営利増予想据置もTS事業は減額しCS事業は増額修正
 

・27/3期はAI半導体、AIデータセンタ向けコネクタ伸長で収益上伸へ


26/3Q1は通信用コネクタ好調、メモリ向けソケット低調で3.1%減収8.6%営利減
 

 26/3Q1決算が8/5に発表され、同日WEB説明会が実施された。26/3Q1は売上高146.50億円(3.1%減)、営業利益38.20億円(8.6%減)、経常利益37.78億円(15.8%減)、税引利益27.86億円(12.4%減)なった。
事業別にテストソリューション事業(TS)は売上高83.31億円(15.6%減)、営利30.47億円(24.2%減)にとどまった。全体の6割程度を占めるとみられるテスト用ソケットはスマホ向けでクアルコム向け、またPC向けも堅調に推移した。伸び率は1桁にとどまるも、四半期として過去最高の売上を記録した。一方で4割弱を占めるバーンインテストソケットはDRAMでは期待のDDR5向けが一服(価格面では前世代のDDR4が品不足で上昇する逆転現象)、NAND向けも低調継続で大幅に減少。ロジック向けも車載用ADAS分野向けが投資先送りで大幅に減少した。利益面では2ケタ減収影響が大きく、採算性の良いテストソケットの伸びも低かったことで営業利益率が4.1ポイント悪化し36.6%となり営業利益は大幅に減少した。



 コネクタソリューション事業(CS)は売上高59.12億円(18.3%増)、営利7.69億円(4.5倍)に上伸した。FA関連がシーメンスを中心に在庫調整の一巡で微増を確保、EV向けの減速影響を受けたものの、新製品投入で堅調な推移に。一方、増収を牽引したのがテレコム、データ通信向け。基幹系通信向けの好調に加え、AIを含むデータ通信向けの新製品が寄与し、倍増程度になった模様で、売上構成比も4割程度となったと見られる。



 利益面では増収効果に加え、収益性の高いテレコム向けの伸長もありMIX良化も加わり大幅増益、営業利益率は9.6ポイント向上し13.0%となった。ただし、従来のような基幹系の伸びに対しデータ通信向けは競合があるため、利益率の向上は過去の様な劇的なものとはなっていない。
全体を通じ通信用コネクトでの収益急回復、一方でバーンインテストソケットの低迷で相殺され、円高影響が5.2億円影響したこともあり、収益拡大が一服した。

 


 

 

26/3期4.6%増収3.3%営利増予想据置もTS事業は減額しCS事業は増額修正


 26/3期予想の売上高474億円(4.6%増)、営利85億円(3.3%増)、経常利益79億円(2.7%増)、税引利益55億円(4.9%増)予想(為替1$=140円)を据え置いた。ただし26/3Q1を踏まえ、事業別予想は変更、TS事業を減額、CS事業を増額修正した。

 

 

 

 事業別にTS事業は売上高234億円(期初計画比17億円減額、6.8%減)、営利59.40億円(同11.7億円減額、16.5%減)予想。TS事業は上期にメモリのDRAM向けの伸び悩み、車載は新製品対応の一巡が影響、テストソケットも今年度は新機能があまり付加されない見通しで多少減少すると見ている。
現状、上期の半導体についてはほぼ固まった数字の様で、上期は売上高134億円(期初計画16億円減額、前年同期比22%減)予想で、26/3Q2は売上高50.69億円(同期比30.5%減)、営利15.03億円(同36.2%減)予想となる。Q2もQ1同様にバーンインテストの不調が継続、Q1並の売上にとどまり、テストソケットは例年通りQ1ピークにQ2は大幅減少する流れで、同期比では横ばい程度を見込んでいる模様。利益面でもQ2はテストソケットの比率が低下することで、利益減に。一方、下期は売上高100億円(同13億円減額、同26%増)予想。基本的にバーンインテストの回復遅れが下期も継続、ただし同期比比較ではDDR5の在庫調整一巡で回復が見込まれ、車載関係も新製品投入で増加に転ずる見通し。テストソケットについては27年モデル向けにAIスマホの拡大やPCもWindows10のサポート終了によるAIPCの拡大なども期待でき、LPDDR-6など年明けから投入が来され、期初計画比減額も同期比では大幅増を見込む。全体としては修正予想並みの売上、利益は想定よりも円安に推移する分で多少の上振れが期待される。

 コネクタ事業は通信向けが牽引しよう。CS事業は売上高225億円(期初計画比28億円増額、18.7%増)、営利24億円(同9億円増額、97.9%増)予想とした。ここに来てデータセンタ向けSFP(Small Form-factor Pluggable)が増加、データセンタ向けが半分以上を占めるまでになった。しかも従来のサーバー向けに加え、より高速伝送を必要とするAIサーバー向け需要が急拡大している。同社はCFPでCFP8などを投入、CFPでも800Gbpsイーサネット対応コネクタ800Gbps  (112Gbps/ch x 8ch)を24年2月から投入、26/3期は既存ユーザーに加え、汎用サーバーを手掛ける新規需要にも対応が増加する見通し。上期で、計画比15億円上振れ、下期は13億円上振れ予想としているが、AIデータセンタは学習向けに加え推論向けも投資拡大も加わり、会社計画の上振れが期待される。またFA関連も在庫調整が進展し緩やかな拡大、車載関連もテスラなど新モデル投入もあり、ディスプレイ対応に加え異なる製品の投入もあるようで、こちらも緩やかな拡大が見込まれる。全体としてCS事業は通信向けがさらに上振れが期待され、利益率も向上が見込めることから、収益の上振れが期待される。
全体として下期での収益の上振れが期待され、営業利益で24/3期をわずかに上回り、営利最高益更新が期待される。

 

 

 

 NANDについてはウィンドウズ10のサポート終了やAI機能搭載のPCなどの需要拡大が期待され、下期からは回復が見込める。同社の半導体向けソケットは中心が最先端向けであり、伸び悩んでいるパワ-半導体向けなどはほとんど影響がないため、AIデータセンター、自動運転の進化等向けの拡大でTS事業の上振れが期待される。

 

27/3期はAI半導体、AIデータセンタ向けコネクタ伸長で収益上伸へ
 

 同社は中長期的な成長に向けた重点施策として、TSを成長エンジンとして更に強い事業への深化、CS事業は強みを活かして第2の柱となるべく強化を図るとしている。特にCS事業はAIをデータセンタ向け高速通信コネクタの製品開発強化を打ち出した。なお2030年度には営業利益150億円達成、2035年度には200億円達成を目標に掲げている。
27/3期はTS事業でバーンインではDDR-4からDDR-5への世帯交代が本格化、サーバーでも高性能CPUがDDR5をサポートしており、本格普及とともに需要が急拡大しよう。LPDDR-6もAIノートPC、AIスマホなどで本格搭載採用が見込まれる。なおクアルコムの次世代SoC「Snapdragon8 Eite G2」ではLPDDR6に対応し、高速・省電力のメモリ環境で全体のパフォーマンスが20%近く向上するとのこと。低迷しているフラッシュメモリ向けも、推論型AIデータセンタの普及でSSDの多用が期待される。これは推論型ではAIデータストレージが超高性能(低レイテンシ、高IOPS、スループッ)を要求されるため、巨大なデータへの迅速なアクセス、読取り要求の効率的な処理が必要で、SSDが必要不可欠となる。27/3期にはSSD向けのバーンインテストも急回復しよう。ロジック向けは中心となる車載向けで、クアルコムの車載向けSoCのシェア拡大、新機能搭載などで同社の車載ロジック向けバーンインテスト需要が拡大を続けよう。クアルコムは次世代車両に必要な「常時接続性」「OTA(空中ダウンロード)更新」「V2X(車と外界の通信)」を強力にサポート、SoCだけでなく、デジタルコクピット、ADAS、車載通信を一貫してサポート(例:Snapdragon Rideプラットフォーム)などの拡大が期待される。テストソケットも次世代スマホ向けで主力のクアルコムの拡大、アップル向けの伸びも期待される。

 CS事業では通信向け、とりわけデータセンタ向けの伸長が本格化しよう。25/3期のCS事業における通信向け売上は46億円弱、26/3期は能力的に70億円程度とでフル生産状況。現在、新規AIデータセンタにおいては800Gbpsでの対応が主力となっており、伝送データ容量増加に対応している。また2024年12月には次世代1.6Tbps Ethernetにも対応する光通信モジュール用インターフェースコネクタOSFP「CN176」・OSFP-XD「CN214」を相次ぎ投入(PAM4 224G/レーン、合計1.6T)。OSFP-XDは92ΩマッチングでPCIe/Ethernet両規格準拠をうたうなど、AIサーバ近傍I/Oも意識した製品となっている。この製品は広帯域や低遅延性能が求められるハイパースケールデータセンター等での接続用途に使用される見通し。また高発熱モジュールへの対応としてOSFPは30Wモジュール対応、OSFP-XDは40W対応を明示し差別化している(他社では15W~18Wなどにとどまる)。さらにデータセンタにおける高速化、高密度化のボトルネックになっていたASICと光トランシーバI/Oの距離を解決するために、業界初の垂直型OSFP(VLC)をNubisと発表。配線距離短縮×冷却効率向上で高密度化・低消費電力に寄与する提案型の強みも持つ。
全体を通じ、27/3期はTS、CSともに収益上伸が見込まれ、過去最高収益を大きく更新すると見られる。
同社株価は5/13の本決算発表後に半導体に加え光通信コネクタの拡大が確認されたことで株価が上昇、8/5にはデータ通信向け光トランシーバ向けコネクタが増額修正されたこと、半導体向けは減額もハイエンド向けは拡大しているとの認識で株価が上昇、8/6には昨年8/19以来の3000円大台乗せとなった。現在、26/3期会社予想EPS298.5円に対し10.2倍はプライム電機平均18.2倍に対し割安、また類似事業を行うヨコオPER20.8倍、エンプラスの21.4倍と比較して割安感がある。今後、下期に増額修正が期待されること、更に先端半導体、AIデータセンタ関連銘柄として評価が高まるとみられ、ポジティブ継続とする。
(*図表については決算説明会資料、ニュースリリースなどから添付)

 

 

 

 

 

 *ヨコオ(6800)、エンプラス(6961)との比較

 

 

 

(H.Mirai)

 

 

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