26/3期0.8%減収9.1%営利減予想も下期半導体回復し増額期待、27/3期は最高益更新へ
株価4055円(8/13) 時価総額 1015億円 発行済株25042千株
PER(26/3DO予:10.5X)PBR(1.57X) 配当(26/3予)105円 配当性向2.6%
要約
・26/3Q1は3.1%増収8.4%営利増と会社計画に対し若干上振れ、受注は8.1%増と堅調
・26/3期予想変更せず半導体の回復遅れで0.8%減収9.1%営利減予想も下期上振れ期待
・27/3期は先端半導体製造装置向け拡大と新製品群寄与で最高収益更新期待
26/3Q1は2.9%増収18.8%営利減と半導体、免振装置一服で減益も受注10.4%増と好調
流体制御関連の総合シールメーカー。売上の75%を占めるふっ素関連中心に半導体製造装置向けフッ素樹脂製品(ピラフロン)に強味を持ち、フィッティング等は90%の高シェア。8/6に26/3Q1決算、説明資料が開示された。26/3Q1は売上高134.99億円(3.1%増)、営業利益27.05億円(8.4%増)、経常利益27.65億円(5.4%減)、税引利益19.77億円(0.7%増)となった。
営業増益も為替円高で経常利益は減益となったが、社内計画に対して売上、利益とも若干上回って着地したとのこと。なお受注は144.54億円(8.1%増)と堅調に推移、受注残は132.81億円(13.6%減)も適正な持ち高に。
セグメント別では電子機器関連が売上高89.23億円(0.5%増)、営利21.06億円(1.4%増)、受注94.43億円(14.1%増)、受注残高79.54億円(23.2%減)に。半導体製造装置向けフッ素樹脂製品群が中国をはじめ海外向けで34.65億円(33.9%増)と伸長、
国内は半導体設備投資一服で横ばい基調が継続、売上は日本が54.58億円(13.3%減)と納期の狭間で減少(受注は増加)となっている。なお新三田工場での能力増強効果で受注残高の消化が進み適正な受注残に。利益面では三田イノベーションセンタ竣工に伴う償却費増、材料費アップなどの影響もあり緩やかな増益にとどまる。
産業機器関連は売上高45.66億円(8.7%増)、営利5.93億円(44.3%増)、受注50.10億円(1.7%減)、受注残53.26.億円(6.3%増)。精密機械装置用メカニカルシールが好調、船舶向け、海外向け補修品も好調に推移した。またタンケンシール(TSS)も好調を維持した。利益面では増収効果に加え、補修品の拡大などもあり収益性がアップし大幅増益に。仕向け先では国内が38.06億円(7.2%増)と堅調で、海外はアジア以外で4.20億円(60.0%増)と補修品増が寄与した。受注については高水準で推移した。
市場別売上(単独ベース)では、半導体・液晶向けが85.26億円(4.1%増)とCMP装置用ロータリージョイントが好調に推移、4四半期ぶりに同期比増加に転じた。
化学その他も9.92億円(1.6%増)とメカニカルシール予備品が好調で8四半期ぶりに増加に転じた。石油・鉄鋼・輸送向けは11.54億円(10.6%増)と国内定修に加え補修案件が継続的に出ている模様で9四半期連続増加している。
土木・建設は免震装置の大型案件獲得で2.33億円(9.9%増)、電力・エネルギーは原発予備品低調も火力向けが好調で3.64億円(3.7%増)を確保した。
利益の増減要因では増収効果が値上げ込みで6.2億円の増益要因に対し、為替円高で1.5億円、製造経費増1.0億円、販管費増1.2億円の減益要因があり緩やかな利益増にとどまった。
26/3期予想変更なく半導体回復遅れや円安一服で0.8%減収9.1%営利減予想も増額期待
26/3期会社予想は売上高575億円(0.8%減)、営利103億円(9.1%減)、経常利益103億円(10.2%減)、税引利益72億円(13.2%減)を据え置いた。半導体市場の回復遅れ、円安一服、設備投資増による償却負担増、R&D増などで2期連続減益予想を見込む。また部門別予想も据え置いた。
セグメント別では電子機器関連が売上高368億円(5.7%減)、営利73億円(17.1%減)予想と、半導体市場の回復遅れが影響し減収を見込む。ただし26/3Q1では受注が94.43億円(14.1%増)とBBレシオが1.06となっている。また中国向けでは中国の強化で上海現法の売上増も見込まれる。今後、半導体需要の拡大が見込まれ、下期に収益の上振れが期待される。
産業機器事業は売上高207億円(9.4%増)、営利30億円(20.0%増)予想と4期連続増収で最高売上更新、利益も24/3期の29.28億円を抜いて過去最高営利更新予想している。TSSが好調持続見通しの他、CMP向けのロータリージョイントの需要回復、海外の大口案件獲得が見込まれる。利益面ではMIX良化、増収効果で営利最高更新を見込む。
現状、半導体製造装置業界では洗浄装置が最大手ユーザーのスクリーンが26/3期SPC売上を5020億円(3.4%減)としており、高水準の売上が見込まれ、中国では引続き高水準の需要が見られる。また産業機器に含まれるCMP向けのロータリージョイントについては、荏原製作所のCMP受注が25/12期1870億円(31%増)予想となっており、今後順調な拡大が見込める。さら台湾、韓国向けもボトムを付けるとみられ、同部門の増額が見込まれる。なお産業機器事業はTSSが好調を持続しており、下期にかけて会社計画を上回ってこよう。
27/3期は先端半導体製造装置向け拡大と新製品群寄与で最高収益更新期待
同社は2期前に新中期経営計画を策定、26/3期に売上高660億円、営業利益170億円を目標として掲げたが、半導体生産の回復遅れから中計未達に終わる見通しにある。しかし27/3期は半導体生産の本格拡大、また先端半導体工程における洗浄工程の頻度拡大が期待される。加えて先端パッケージ、ハイブリッドボンディング、化合物半導体などでは高出力対応で薄化からCMP工程の拡大が見込まれる。このため改めて洗浄工程やCMP工程の伸びで収益拡大が見込まれる。
事業別では電子機器事業においてピラフロン製品が耐薬品・耐熱・低摩擦・絶縁性など多くの特性を高次元で備え、継手は独自のシール構造が盛り込まれ世界的にシェア90%と独占的地位を築いている。今後、半導体の微細化とともに洗浄工程の頻度増大で市場平均を上回る需要が見込める。これはFinFET/GAAトランジスタや3D NAND、集積化・ヘテロインテグレーション(ファンアウト、チップレット実装など)といった高度化に伴い、従来の単純な液浸洗浄では除去困難な汚染が増加し、洗浄回数の増大が見込まれているため。27/3期は再度最高収益の更新が期待される。産業機器も半導体の微細化でCMP装置向けロータリージョイントの拡大が見込まれる。これは配線・トランジスタ構造の複雑化、積層化による平坦度の要求がさらに高まりCMPが多用されるためで、3Dデバイスの拡大で27/3期には大きな成長が見込める。また世界で唯一カーボンを自社生産するTSSが画期的なポーラスカーボンパッドを開発。均一な細孔径分布と高い比表面積を実現したパッドで、吸着・触媒反応・イオン伝導の効率を向上でき、リチウムイオン電池電極や水処理での分離性能向上に役立ち、さらに耐薬品性・耐熱性に優れ、過酷な工業環境での応用が可能。今後、半導体搬送用、2次電池電極など応用製品の投入で産業機器の成長製品に育つ可能性がある。
このように、27/3期は半導体生産の拡大と新製品群の拡大により、再度最高益更新が期待される。
株価は期初に2/6に減額修正があり、4/7には3775円の安値を付けた。その後全体相場とともに戻ったものの、26/3期会社予想が微減収減益予想で下落、3600~3700円で推移していた。8/6の26/3Q1発表で社内目標に対し多少上振れたこと、受注が拡大したことなどで株価が反応、4000円大台の回復となっている。現在26/3期会社予想EPS308.68円に対しPER13.1倍はプライム市場機械平均PER18.4倍に対し割安感がある。なお類似事業を行うニチアス14.3倍、バルカー13.6倍、イーグル工業12.6倍と似通った水準にある。同業界の代表企業であり、主力ユーザーにスクリーン、またこれからAI半導体向けで急拡大が見込めるCMPの荏原などがあり、受注拡大から26/3期収益上振れが期待され、5月に自社株取得20億円も実施しており、ややポジティブ継続と考える。
(図表、カタログは会社説明会資料、HPから添付)
*バルカー(7995)、ニチアス(5393)、イーグル工業(6486)との相対比較