中国の税関統計より、同国のスポンジチタンの輸出状況についてみてみた。スポンジチタンは、戦後量産化された比較的新しい素材であるため、未だにバッチ式生産している。このため、バッチ毎の品質管理が難しい。一つのバッチ内でも中心部は純度が高く、その側は、ステンレス製のバッチ容器に触れるため、外側にいくにつれステンレスの成分であるニッケルに侵され、品質が悪化する。日本もそうであるが、同統計は品質による区分けがなされていないため、詳細が分からないが、同じスポンジチタンでも純度の低いものは、高炉で使われるコーククスの代替として脱酸向けに使われる。品質が良くなると、合金向けに添加剤として使われる。品質が良くなると、眼鏡やゴルフクラブ、熱交換器向けなどに使われ、さらに品質が良くなると医療向けに使わる。特に純度の高いのは航空機向け、その中でも高純度なものはジェットエンジン向けに使われる。中国は米国においてジェットエンジン向けの認定をまだ、取れていない。機体向け認定は一部の老舗メーカーに限られていると記憶している。なお、半導体向けターゲット材に使われる高純度チタンは、厳密に管理して生産するため、ジェットエンジン向けよりも割高になるが、数量が限られる。また、ターゲット材向けは、スポンジチタンとしての輸出ではなく、加工して輸出される。スポンジチタンとして輸出されるのはジェットエンジン向けが最高品質となる。そこで推測なのだが、高炉メーカーが存在する国向けの輸出は安定的に輸出できるが、品質が良いものになると、出来たら輸出しているのではないだろうかと思われる。とはいえ、最近では中国メーカーの製造技術向上もあり、一般産業向けが安定して出せるようになってきたのが最近の傾向ではないだろうか。
最近の中国のスポンジチタン輸出状況は以下の通り。
<25年8月>
〇全輸出
輸出量:536トン、前年同月比27.9%減(3ヵ月連続)、前月比24.6%増(4ヵ月ぶり)
輸出価格:6.63ル/キログラム、前年同月比13.4下落(19ヵ月連続)、前月比8.1%下落(2ヵ月ぶり)
図表1、中国のスポンジチタン輸出量と輸出価格の推移(トン、ドル/キログラム)

注意:異常値は省いている
出所:中国税関統計よりIRU作成
〇日本向け
輸出量:112トン、前年同月比41.7%減(9ヵ月ぶり)、前月比62.7%減(2ヵ月ぶり)
輸出価格:7.93ル/キログラム、前年同月比1.0%上昇(11ヵ月ぶり)、前月比2.2%上昇(2ヵ月ぶり)
図表2、日本向けスポンジチタン輸出量と輸出価格の推移(トン、ドル/キログラム)

注意:異常値は省いている
出所:中国税関統計よりIRU作成
〇米国向け
輸出量:15トン、前年同月比88.9%減(-)、前月比-(-)
輸出価格:8.20ドル/キログラム、前年同月比7.9%上昇(-)、前月比-(-)
図表3、米国向けスポンジチタン輸出量と輸出価格の推移(トン、ドル/キログラム)

注意:異常値は省いている
出所:中国税関統計よりIRU作成
<参考:ロングバージョン>
図表4、中国のスポンジチタン輸出量と輸出価格の推移(トン、ドル/キログラム)

注意:異常値は省いている
出所:中国税関統計よりIRU作成
図表5、日本向けスポンジチタン輸出量と輸出価格の推移(トン、ドル/キログラム)

注意:異常値は省いている
出所:中国税関統計よりIRU作成
図表6、米国向けスポンジチタン輸出量と輸出価格の推移(トン、ドル/キログラム)

注意:異常値は省いている
出所:中国税関統計よりIRU作成
図表7、英国向けスポンジチタン輸出量と輸出価格の推移(トン、ドル/キログラム)

注意:異常値は省いている
出所:中国税関統計よりIRU作成
(IRuniverse 井上 康 )