
日本チタン学会・日本チタン協会産学連携委員会共同主催行事として第5回日本チタン学会 講演大会(2025年度)が、2025年10月9日(木)9:00から10日(金)12:05迄、新潟県上越市、直江津学びの交流館で開催された。
最終日の10日(金)には、前日開催されたポスター発表から、最優秀ポスター賞を3名の修士生が受賞した。
第5回講演大会は、日本チタン協会 産学連携委員長の八並洋二氏(日本製鉄)の閉会の挨拶により閉幕した。 今後より盛り上がっていくことを期待された。
閉会の挨拶をされる、八並委員長
初日9日に開催されたポスター発表の様子は前報をご参照ください。
日本チタン学会 第5回講演大会開幕 @新潟上越市 直江津学びの交流館:2025年10月9日
2025年10月10日(金)の1件の基調講演「疲労特性に優れる生体用β型チタン合金の開発」及び5件の一般講演終了後、最優秀ポスター賞の受賞者が発表された。
日本チタン学会会長、新家先生より表彰状が3名に授与された。ポスター内容及び発表が特に優秀であると認められた。
今回から、公益財団法人 軽金属奨学会が協賛となり、専務理事浅田淑(はじめ)氏より副賞が授与された。
軽金属学会のホームページによると、 国内シンポジウム、教授及び大学院生に対して、研究奨励金又は研究補助金を交付している。今年で創立70周年となる歴史ある財団とのこと。
対象となる大学院生は、日本国籍を持ち、国内で軽金属(アルミニウムあるいはマグネシウムやチタン等を主成分とする金属材料)に関する学科目を専攻する大学院生(社会人経験者を除く)となる。

ポスター発表を見て回る浅田専務理事(軽金属奨学会) 写真左の背景がブラックのポスターが、今回受賞した宮澤くんのポスター
受賞は下記の3名、ポスター番号順に行われた。
・大阪大学M2の宮澤啓太郎君
「L-BPFにおける窒素ガス雰囲気を利用したTi-42Nb合金の高強度化」
概要:生体用金属材料として有望視されているTi-Nb合金において造形プロセス中にin-situ窒素固溶体化を図ることで高強度化を実現。固溶量に応じて微細組織と力学特性を制御できることを明らかにした。
宮澤君は昨年M1で、「L-PBF法によるTi-42Nb合金の組織と力学と特性について」発表して、最優秀ポスター賞を受賞後、更に研究が進んだようでデータが充実していた。
・富山大学大学院理工学研究科の清水祥雲(しおん)君
「化学的境界を利用したTRIP-チタン合金の高強度化」
概要:TRIP-チタン合金の弱点である低降伏応力を克服。凝固時の組成分配に由来する組成傾斜を用いて化学的境界を導入することで、結晶粒微細化効果により変態応力が上昇しうるとの仮説を立て、高強度・高延性の両立の可能性を検証した。
・東京科学大学(M1)晝間(ひるま)悠斗君
「SEM-DIC法によるTi-Nb-Al形状合金におけるマルテンサイト逆変態の歪解析」
概要:DIC法を初めてマルテンサイト組織に焦点を当て、Ti-23Nb-3Al(at %)合金におけるマルテンサイト逆変態に伴う各格子対応バリアント(CV :Lattice Corresponding Variant)で生じる表面歪をSEM-DICによりIn-situで解析。表面にAg粒子でランダムパターンを作製して、装置内にて逆変態温度以上に加熱してDIC法により格子変形歪を計算した。実験値はEBSDによる得た理論値より小さくなる傾向を示した。
電解研磨による試料調整を含め、自分でSEM画像をピクセル毎に昇温前後で比較して歪値に変換していく作業は、かなり時間を要したものと推定する。先生がこういうことができればいいなと言ったことをヒントに考え出したとのこと。
なお、DIC法とは、形状記憶合金の変形挙動を解析するために、非接触でひずみと変位を可視化するために利用されている方法。表面にランダムな模様(スペックルパターン)を施した形状記憶合金の画像を、変形前後で撮影し、その画像の変化を解析することで、素材の微細なひずみ分布を定量的に評価できる方法とのこと。
M1なので、宮沢君のように来年が楽しみである。

写真左のポスター:東京科学大学 晝間君、写真右のポスター:富山大学 清水君
(IRUNIVERSE tetsukoFY)