世界の商船隊の60%の船主で構成されるボルチック国際海運協議会(BIMCO、デンマーク)は10月23日の週刊報告で、2021年以降記録されている低調なシップ・リサイクル水準に注目し、これにより少なくとも500隻(180万TEU相当)の過剰在庫が発生していると発表
今後数年で大量の退役が発生
BIMCOによると、世界のコンテナ船隊は老齢船の比率が高まり、過剰在庫、いわゆる解撤待機(オーバーハング)が急増しており、船齢20年以上の老朽船が全体の4分の1を占めるなど、船隊の高齢化が1970年代以来の水準に達しており、今後数年で大量の退役が発生する可能性があるという。
また、今年解撤されたコンテナ船はわずか10隻にとどまり、2021年以降の低水準が続いており、老朽船の比率は2020年代初頭の16%から現在は24%に上昇し、過去50年で最も高いという。その背景には、多くの船が通常の耐用年数を超えて運航を続けていることにあるという。
BIMCOは00―19年の平均的な市場環境下での解撤パターンを基にコンテナ船の〝寿命〟を分析。20年未満で20%、25年未満で53%が解撤されていたことから、現在の解撤待機を少なくとも180万TEUと推計した。
最大で850隻、310万TEUの可能性も
こうした背景から、BIMCOは実際の解撤量は最低推計を上回る可能性をも指摘。2010年代の市況低迷期に見られた早期退役傾向を基に試算した結果、最大で850隻、310万TEUに達する可能性があるともした。
BIMCO推計の解撤待機船180万―310万TEUを吸収するには数年を要する見通しだ。過去最大だった16年でも年間解撤は185隻・60万TEUにとどまっており、同水準を大きく上回るペースが必要となる。
更に、推計の解撤待機船は運航中の船舶の6―10%、船齢20年以上の船の3―5割に当たり、解撤待機は8,000TEU未満の全船型の発注残を上回っており、今後の船隊拡充は大型船主導で進む可能性があるとも指摘している。
国連貿易開発の2025年海上輸送レビューでは
国連貿易開発(UNCTAD)が今年9月末に発表した海上輸送レビュー(Review of Maritime Transport 2025)のなかで、2024年のシップ・リサイクリングは低調に推移し、2023年と同水準の630万総トン(世界船隊の0.25%)にとどまり、解体トン数の最大シェアを占めたのは「ばら積み船」であるとした。リサイクルは短期的には低調が続くと予想されるが、市場環境の改善、中古船価格の下落、老朽化する船隊を背景とした船隊近代化の加速に伴い回復する可能性があるとも述べている。
リサイクル実施国としては、バングラデシュ、インド、パキスタン、トルコが市場を支配し、リサイクル量の91%以上を占め、なかでもバングラデシュとインドが主導的役割を果たした。今後の課題としては、これらの国々における限られたリサイクル能力と、増加する新造船の引き渡し、老朽化する船舶が相まって、需給バランスと適切な時期の船隊更新にあるとしている。
さらに、環境規制は強化されており、安全かつ持続可能な船舶リサイクルに関する香港条約が2025年6月に発効したことがその顕著な例である。
2024年にスクラップ売却のために売られた船舶トン数(総トン)

(出典: 国連貿易開発会議(UNCTAD)Review of Maritime Transport 2025 )
上図は、上段(青)の横軸がリサイクル実施国で、処理量の多い順で、左からバングラデッシュ、インド、トルコ、パキスタン、デンマーク、その他の国々、世界合計、シェア(%)となっており、左側(黒)縦軸が船種となっている。文中にもあった上から ばら積み船(bulk)がトップで全体の32.4%、コンテナ船(15.2%)、オフショア補給船(12.8%)、オイル・タンカー(12.1%)、液化ガス運搬船(11%)、等々となっている。
(IRuniverse H.Nagai)
世界の港湾管理者(ポートオーソリティ)の団体で38年間勤務し、世界の海運、港湾を含む物流の事例を長年研究する。仕事で訪れた世界の港湾都市は数知れず、ほぼ主だった大陸と国々をカバー。現在はフリーな立場で世界の海運・港湾を新たな視点から学び直している。