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26/期中間決算からみたAI半導体とめっき薬品業界の動向

2025/11/11 11:27
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26/期中間決算からみたAI半導体とめっき薬品業界の動向

26/3期中間決算発表が進展中であるが、AI関連部材の需要好調の恩恵を受ける企業の好業績が目立っている。米中貿易摩擦からトランプ関税の発動に伴うサプライチェーンの変動がある中で、中国需要の取り込み度合いにより業績の影響度も異なる動きがみられる。日本企業の優勢のあるめっき業界を中心に足元の動向と戦略を比較してみた。

 

中国需要の取り込みが業績を左右する現状

日本のIT機器や半導体は衰退の一途であるが、半導体製造用の部材(シリコンウエハー、レジスト、封止材など)や電子部品材料では日本の化学企業が世界シェア50%超を有する分野が多いのは言うまでもない。更に細部を見ると精密な回路パターン形成や、半導体の高密度化に伴うウエハー積層用や半導体チップ実装用のバンプで使用されるめっき薬品では日本企業がその周辺材料や関連装置を含め高いシェアを有している。26/3中間決算の関連企業4社では主力製品の用途や事業構成で明暗が分かれる。

太陽ホールディングスはスマホ向けプリント配線基板向けレジストインキ、ビルトアップ用レジストインキに強みを持ち、ソルダーレジストでは世界トップ企業である。今26/3中間期はハイエンドスマホ向けの需要が堅調であることに加え、メモリー半導体のパッケージ用にドライフィルムレジストの需要が好調であり、今中間期の営業利益は期初計画132億円に対し、151.8億円、前年同期比22.2%増に上振れ着地となった。サプライチェーンの関係もあるがエレクトロニクス事業の売上の60.4%が中国向けであり、今中間期は前年同期比13.1%増となり上方修正のけん引役となっている。韓国向けが同8.2%増となり増益に貢献しているが構成比は8.2%であり、AI半導体・サーバー向け需要好調の恩恵を受けている台湾向けの売上は同2.5%減となり、構成比も9.2%に低下している。

上村工業はパッケージ基板向けを中心とするめっき(表面処理)薬品やハードディスクの下地を形成する無電解ニッケルめっきの国内大手。26/3中間期の営業利益は期初の69.7億円、前年同期比23.6%減の見通しに対し95.7億円、前年同期比4.9%増と増益転換での着地となった。メッキ薬品はEV向け需要が不調であったが、自動運転(ADAS)向けや生成AIサーバー向けの需要に対応したウエハー用及びパッケージ基板用めっき薬品が牽引し増収増益となり、表面処理薬品機械もまた増収増益であった。上期の基調を維持し、26/3通期の営業利益を20.3%減の150億円から4.6%増の197億円に上方修正している。

 

石原ケミカル、日本高純度化学はAI半導体の連結収益への貢献はこれから、中国需要にも期待
 

石原ケミカルは鉛フリー錫・錫合金メッキ液の大手。生成AI向けなど一部の最先端半導体パッケージ向けは好調であったが、薬液濃度管理装置などの機器の出荷が端境期であったこともともあり、表面金属処理剤及び機器等のセグメントは売上高61.5億円、前年同期比7.3%減、セグメント営業利益11.7億円、同11.4%減であったことから、中間期の連結営業利益はほぼ会社計画線での着地となった。HBM、最先端半導体パッケージにバンプめっき液が使用されているとのことだが、AI半導体関連の需要効果は来期以降になり、この度公開した新中期経営計画では28/3期に営業利益48.4億円と今期予想からは37%の増益を計画する。9月に中国・上海に電子関連用化学製品の製造販売をする子会社を設立、26年から中国での収益拡大を見込んでいる。
 

日本高純度化学は金・パラジュウムめっき薬品の大手で、半導体、コネクター向けが主体。中間期はAI向けに貴金属めき液が好調であった。売上高は2桁増になるも、貴金属市況の上昇分の利益貢献が無い構造であり、車載やFA機器向けの需要数量の低迷する中で、能力・人員増強に伴う固定費負担増もあり、中間期の営業利益は271百万円、前年同期比1.9%増に留まった。中間期の会社計画は無かったが、会社の想定からはやや上回る格好であったと推察される。中国語など現地の言語にたけた営業要員の採用による中国、韓国、台湾でのAI関連受注の取り込みに注力する戦略にある。光コネクター端子向けのなど新規先端分野に対応した製品の開発もあるが、同社の場合、省金、金代替への対応が長年の課題としてあるだけにそれへの結果にも期待したいところだ。

 

中国・高機能シフトの賞味期限は如何に?

中国は周知のとおり国家戦略として半導体のシリコンウエハーなどの材料から製造装置まで一貫した育成・強化策を推進してきた。その成果としてパワー半導体や汎用メモリー半導体での台頭が著しく、シリコンエハーではテスト用やダミー用途から一部のレガシー半導体で日本企業の収益を脅かす存在になってきている。まだ電子部品ではリチウムイオン蓄電池市場で圧倒的なシェアを獲得しているが、積層セラミックコンデンサーなどでも中国企業の台頭が目立ち始めている。

太陽ホールディングスではリジット回路向けで以前から中国メーカーとの競争が激しい状況に入っており、その中でも先端分野向けの高機能・高付加価値製品の開発で差別化することで好収益をあげている。変成エポキシ樹脂封止材のトップメーカーである長瀬産業では中国AI半導体メーカーからの引き合いが活発であり、供給に追い付かない状況にある

上記4社のような中堅電子材料メーカーにとっては中国企業もAI半導体の生産を拡大する方向であり、中国ニーズを取り込む余地が大きく、サプライチェーン、バリューチェーンを強化するうえで中国マーケットの取り込みが重要となる。合わせて差別化製品の開発にも対応していく必要があるのは言うまでもない。2030年に向けて半導体市場はAI半導体の微細化、高集積化による最先端分野が成長を牽引する方向にあり、AI半導体関連での既存顧客への対応も必要となる。加えて、米国の経済安保の政策から米中摩擦の懸念の継続しており、米国国内での生産拠点をサプライチェーンに追い込む必要性が出てきている。そうしたなかで、如何に中国市場とのバランスを取りながら、中国企業を取り込んだバリューチェーンの再構築が求められる。半導体・電子部品の材料分野は差別化の賞味期間は従来5年以上であったが、AIの発展に伴いその猶予期間は短縮される方方向にある。これらの点を踏まえた難しい判断、戦略設定が待たれいる。

 

(叶 一真)

 

 

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