インドネシアのエネルギー鉱物資源省はリスク基盤事業許可制度の一環で新しいニッケル製錬所の設立を制限すると明らかにした。今回の措置はニッケル産業への投資を高付加価値化するための措置であるとされているが、すでにインドネシアのニッケル源の供給は過剰であるため、これによって今以上の供給超過は制限される、という程度にとどまる。
この制限によって供給は引き締まり、相場は上昇するか、とニッケルプロデューサーならびにアナリストに聞いてみたが
「ほとんど影響はない。需給の引き締まりはまだ先、ニッケル相場はやや上向くかもしれないが2万ドルを超えることはない」
とのことだった。
実際、このニュースが発表されてもニッケル相場が動くことはなかった。
従来にはニッケル製錬所への投資を「産業運営許可書」の発給で承認したが、今回の改正で電炉製錬(RKEF)と高圧酸浸出(HPAL)など精錬技術の適用で、ニッケル中間財(FeNi、NPI、MHP、マット)だけを生産する製錬所の設立を禁じることにした。
インドネシアのエネルギー鉱物資源省は今回の措置で今後の投資が電気自動車用バッテリの原料とその他ニッケル系金属派生製品を生産する製錬所になると期待している。
要するに原料だけでなく、ニッケルを活用したバッテリー、ステンレスの生産まで行える統合型の企業だけは投資を続けることができる。しかしすでに世界のニッケル需給は余剰。
例えば住友金属鉱山は、2025年の世界のニッケル需給を26万3000トンの供給過剰との予想を発表している(10月7日)。世界のニッケル生産が前年比6.2%増の370万3000トンとなるのに対し、消費は3.8%増の344万トンにとどまると予想。ステンレス向け需要は堅調だが、電池向けが伸び悩んでいる。供給過剰は3年連続で、26年も25万6000トンの余剰を見込んでいる。
| 年 | 需給バランスの予測 (プライマリーニッケル) | 出典 |
| 2024年 | 11.2万トン~17.9万トンの供給過剰 | INSG、住友金属鉱山など |
| 2025年 | 10.4万トン~20.9万トンの供給過剰 | INSG、住友金属鉱山など |
| 2026年 | 26.1万トンの供給過剰 | INSG |
このニッケル供給過剰の最大要因がインドネシア、である。
供給面:インドネシアの圧倒的な増産
供給過剰の主な要因は、世界最大のニッケル生産国であるインドネシアにおける生産能力の急速な拡大です。
- インドネシアは豊富なラテライト鉱を活用し、中国企業の投資などを背景に、ニッケル銑鉄(NPI)や電気自動車(EV)用バッテリー向けニッケル製品の生産を大幅に増加させている。
- 2024年には、アジアのプライマリーニッケル生産量全体が前年比で増加し、インドネシアが世界生産量の大部分を占める結果となった。
需要面:EV電池とステンレス鋼
ニッケル需要の約70%はステンレス鋼の生産で占められています。
- しかし、近年は電気自動車(EV)バッテリーの正極材向けニッケル需要が急速に伸び、市場の重要な牽引役となっているが、EV大国の中国ではLFPが主流となっており、実際、ニッケルの電池向けの需要は伸び悩んでいる。
- EV電池向けでは、ニッケルを使用しないリン酸鉄リチウム(LFP)電池の採用が増加していることもあり、ニッケルベースの電池需要の成長率は鈍化している。
市場を巡る重要なポイント
- インドネシアの地位確立: インドネシアは、ニッケル資源の豊富さと積極的な投資誘致により、世界のニッケル市場における支配的な地位を確立しています。
- 「グリーン・ニッケル」へのシフト: 持続可能性への要求やEVの普及を背景に、湿式冶金プロセス(HPALなど)を用いた環境負荷の低い「グリーン・ニッケル」生産への注目が高まっています。
- 価格への影響: 継続的な供給過剰により、ニッケル価格は長期的に下落圧力を受けている状況です。
世界のニッケル需給は、インドネシアの生産動向と、EVバッテリーの技術・普及動向に大きく左右される状況が続いている。
(IRUNIVERSE YT)