一般社団法人日本チタン協会による2025年度表彰式・記念講演・懇親会が、2025年11月27日(木)、如水会館で開催された。
協会表彰式は、1984年(昭和59年)に始まり、今回が42回目となる。
2025年度は、10名と2法人[JFEテクノリサーチ(株)殿、森村商事(株)殿]が受賞した。
大同特殊鋼(株)は技術賞を山本氏が、協会事業功労賞を鈴木氏が、そして、大同分析リサーチの儀賀氏は永年技術功労賞を受賞された。
技術賞を受賞された(株)大阪チタニウムテクノロジーズの中村氏、(株)神戸製鋼所の百田氏、大同特殊鋼(株)の山本氏は、表彰式後、技術賞受賞記念講演をされた。
なお、技術賞を受賞された3名の受賞講演内容は、来年4月発行の協会誌「チタン」に掲載予定である。
記念講演の演題は下記の通り。技術内容については別途、ご紹介させていただきます。
氏 名 | 所 属 | 演 題 |
| 中村 宣雄 殿 | 株式会社大阪チタニウムテクノロジーズ | チタン製錬電解プロセス生産性 向上と効率化 |
| 受賞理由:チタン製錬の各工程の開発に従事し、還元分離工程での生産性向上、特に電気分解工程では高生産性式電気分解層の工業化に成功し、スポンジチタンの供給拡大に貢献された。 | ||
| 百田 悠介 殿 | 株式会社神戸製鋼所 | 航空機向けチタン大型鍛造品の量産化 |
| 受賞理由:チタン製造に関わる業務に従事し、航空機エンジン用大型ディスク品の鋳造技術の開発やチタン大型回転体鋳造品の量産技術を開発し、国内でのチタン大型鋳造品の量産化に貢献された。 | ||
| 山本 和巳 殿 | 大同特殊鋼株式会社 | チタン製品の溶解・鋳造技術の開発 |
| 受賞理由:チタン合金およびチタンアルミ合金の精密鋳造品開発に従事し、LEVICAST(金属をレビテーション炉で半浮遊溶解し、雰囲気ガス内で減圧鋳造する。)法の技術向上、光造形法を利用した迅速試作開発、高融点合金を含む生体用チタン合金の製造技術開発、またコールドクルーシブル炉の開発に貢献された。 | ||
<授賞式>
↓写真 川福純司副会長から表彰状及び記念品が授与された。
↓写真 左から、中村氏、百田氏、山本氏

講演の演題は下記の通り。技術内容については別途、ご紹介させていただきます。
その他、
協会事業功労賞(元大同特殊鋼(株)の鈴木氏及び元(一社)日本チタン協会の三木氏の2名]、
永年技術功労賞[(株)大阪チタニウムテクノロジーズの東氏、東邦チタニウム(株)秋元氏、(株)神戸製鋼所の福本氏、日本製鉄(株)岩崎氏及び(株)大同分析リサーチの儀賀氏の5名]、
及び賛助会員功労賞(法人)[JFEテクノリサーチ(株)殿及び森村商事(株)殿の2法人]。
| 賞の種類 | 受 賞 者 | 所 属 |
| 協会事業功労賞 | 鈴木 昭弘 殿 | 元 大同特殊鋼株式会社 |
| 受賞理由:開発会議 医療部会長を11年勤め、その他にも技術委員、編集委員の運営に尽力され、チタン協会の発展に貢献された。 | ||
| 三木 基 殿 | 元 (一社)日本チタン協会 | |
| 受賞理由:2017年より専務理事・事務局長を6年、その後顧問を1年勤め永年にわたりチタン協会の運営に尽力され、チタン協会の発展に貢献された。 | ||
永年技術功労賞
| 東 浩司 殿 | 株式会社大阪チタニウムテクノロジーズ |
| 受賞理由:チタン製造に関わる業務に従事し、四塩化チタンの製造能力および品質向上や流動塩化炉の安定操業、また高純度四塩化チタン製造用蒸留設備の開発と立ち上げを行い、スポンジチタンの生産に貢献された。 | ||
| 秋元 文二 殿 | 東邦チタニウム株式会社 | |
| 受賞理由: チタン製造に関わる業務に従事し、チタン粉の事業化、Mg電解工程の改善に取り組み生産性の向上やコスト削減、またスポンジチタンの生産に貢献された。 | ||
| 福本 学 殿 | 株式会社神戸製鋼所 | |
| 受賞理由: チタン製造に関わる業務に従事し、溶解技術の向上や生産性の改善および作業賦課軽減や工場安全防災対策等にも取り組み、また新溶解工場立ち上げで現場を主導し、チタンインゴットの生産に貢献された。 | ||
| 岩崎 信吾 殿 | 日本製鉄株式会社 | |
| 受賞理由: チタン製造に関わる業務に従事し、チタン薄板の効率生産および加工性向上、チタン熱間圧延工程での安定製造、チタンビレット品質改善による線材安定製造に取り組み、チタン展伸材の生産に貢献された。 | ||
| 儀賀 義勝 殿 | 株式会社大同分析リサーチ | |
| 受賞理由: チタン製品開発・分析に関わる業務に従事し、快削チタン合金の開発および商品化、またチタンおよびチタン合金の分析規格制定を図り、チタン材の普及に貢献された。 | ||
| 賛助会員功労賞(法人) | JFEテクノリサーチ株式会社殿 | |
| 受賞理由: チタン製品の力学試験、化学分析、物理解析等のサービスを提供し、技術の向上およぎ試験規格の制定、改正を行い、また、足元では積層造形品の評価にも取り組んでおり、チタン産業の発展に貢献された。※1 参考 | ||
| 森村商事株式会社 殿 | ||
| 一般産業用および航空機用チタン展伸材(純チタンおよびチタン合金)の輸出入を通じて日本のチタン産業の発展に貢献された。 | ||
↓写真 協会事業功労賞を受賞される鈴木氏(左)、三木氏(右)

なお、鈴木氏は、10月に直江津で開催されたチタン学会においても、功労賞を受賞されている。
下記記事をご参照ください。
元大同特殊鋼 鈴木昭弘氏、功労賞受賞講演 第5回日本チタン学会講演大会にて
↓写真 永年技術功労賞を受賞される儀賀氏
右写真(左)東氏、秋元氏、福本氏、岩崎氏及び儀賀氏(右)

↑写真 永年技術功労賞を受賞される東氏
↓写真 賛助会員功労賞(法人)を受賞されるJFEテクノリサーチ株式会社代表取締役社長 瀬戸一洋氏
写真(右)は、瀬戸氏(左)及び森村商事株式会社松島寛司執行役員(右)

※1 参考
生体材料用チタンおよびチタン合金の化学的評価 | JFEテクノリサーチ
外科インプラント用各種金属材料の評価 - 医療機器・インプラント材料評価 | JFEテクノリサーチ
<懇親会>
川副純司副会長(株式会社 大阪チタニウムテクノロジーズ 代表取締役社長)による、乾杯発声と主催者挨拶

1回目の乾杯の後、
技術賞を受賞された3名の方の講演を拝聴し、これこそ日本のチタンのものづくり技術力であり、これに基づく、日本のチタンの品質の高さを感じるとともに、日本はやはり技術立国でありつづける誇り・必要性を改めて感じたと感想を述べられ、受賞者の皆様を祝して2回目の乾杯。
さらに、日本のチタン産業を取り巻く環境について触れられた。
コロナ禍後、日本のチタンの展伸材、スポンジチタンは強い需要に支えられ順調に回復してきたが、足元、少し、市場の環境が変わりつつある状況にある。
一般産業向けを中心とする日本のチタン展伸材は全世界に向けて供給されているが、その大きな市場の一つである中国市場の経済が少し低迷しているにも関わらず、チタン展伸材メーカーは増産を続けている。それにより、お客様での在庫が増え、日本のチタン展伸材生産、販売にも影響が出てしまっていると聞いている。
また、航空・宇宙、軍需防衛用途を中心とする日本のスポンジチタンにおいても、コロナ禍後、順調に回復してきていたが、ボーイング社における品質問題、ストライキの影響等により、一時的な成長の鈍化・停滞により産数が伸び悩んでおり(B737maxに関しては月産38機から先月42機となったが。※2参考)、足元ではボーイング社のサプライチェーン内の在庫調整も当初想定より長引いている。
一方、エンジンの供給ネックによりエアバスの出荷機数が制約され、増産にやや遅れが出て、エアバスのサプライチェーンにも在庫が増えており、日本の輸出向けスポンジチタンの出荷量に影響がでてしまっている。
決してフォローウィンドではないが、こういった難局は、これまでもあり、その中でみなさまが築きあげた品質への信頼性、モノづくり力で乗り越えてきており、皆さんの手で打破できると思っております。
日本のチタンのモノづくり力は世界でNo,1の品質であり、それに基づく日本のチタンの展伸材・スポンジの供給能力も一番であり、日本のすべてのメーカーが集まれば、スポンジチタンから最終の展伸材、圧延材、鋳造品を含め、すべてを国内で造れる世界で数少ない国が日本である。 更なる日本のチタン産業の発展と持続可能な社会の実現に対して、世界貢献する日本チタン協会でありたいと考えたいとして、
3回目の乾杯をされた。 “ことし1年間お疲れさまでした”、来年は馬年、馬が草原を駆け抜ける力強い年ということのようであるので、難局を乗り切って、もう一段飛躍の年となるようにと、主催者挨拶をまとめられた。
※2 参考
チタン担当記者による下記記事を是非、お読みください。
チタン原料市場市況2025年11月 下落続く、二酸化チタン下げ止まらず悲観ムード
大阪チタニウム:決算説明会を開催、能力増強は予定通り。別途値上げ交渉。
東邦チタニウム:決算説明会を開催、チタン需要見通しトーンダウン
国内酸化チタンPSI実績Report #43 2025年終盤アナテーゼ型販売量回復するのか
【参加者】
正会員:(株)大阪チタニウムテクノロジーズ、東邦チタニウム(株)、(株)神戸製鋼所、日本製鉄(株)、大同特殊鋼(株)、三井物産メタルズ(株)、住商メタレックス(株)、アルコニックス(株)、神鋼商事(株)、日鉄物産(株)、阪和興業(株)、伊藤忠メタルズ(株)
賛助会員:アーガス・メディア・ジャパン、(株)UEX、(株)オーファ、JFEテクノリサーチ(株)、チハラ産業(株)、トーホーテック(株)、奈良精工(株)
その他研究機構:(国研)物質・材料研究機構
コンサルタント
報道:ステンレスニュース社、鉄鋼新聞社、産業新聞社、日本金属通信社及びアイアールユニバース
及び事務局など、
受賞者らを含め110名が参加した。
(IRUNIVERSE tetsukoFY)