ICM APAC国際会議と連動、三元系電池リサイクルの最前線へ
龍凱科技(江西省)に続き、今回の廈門ツアーでは再びリチウムイオン電池リサイクルの最前線に触れる機会に恵まれました。訪問先は、ICM主催「第10回厦門APAC国際会議」に出展していた 福建常青新能源科技有限公司(Evergreen)。
突然の取材依頼にも関わらず、Garrett Zhang氏、Max Yang氏、Jianqiu Li氏、Chenghui Zheng氏が日本メディアを温かく迎えてくれました。
■ Evergreenとはどんな会社か
2018年創立の若い企業ながら、中国国内で急成長する三元系電池リサイクル企業として注目されている同社。主な特徴は以下の通りです。
① 三元系リチウムイオン電池のリサイクルに注力しており、年間生産能力は炭酸リチウム換算で5,000~6,000トン
- 使用済み三元系リチウムイオン電池を回収し、炭酸リチウムや三元系前駆体として再生。
- 主に中国国内で使用済みの三元系リチウムイオン電池をリサイクルし、ニッケル、コバルト、マンガン塩、炭酸リチウム、三元系前駆体に加工して外販
従業員は約370名、3交替で稼働。 - 炭酸リチウムの推定価格を1トンあたり約7万元とすると、この製品のみの年間売上高は約4億元
② 大手企業が出資する“ホワイト企業”
- BASF(独) … 15%
- 杉杉集団(Sunwoda系) … 合計で30%
- 吉利自動車(Geely) … 40%
- 紫金鉱業 … 30%(非鉄大手、日本で言えば住友金属鉱山の位置づけ)
信頼性の高い出資構成が、同社の急成長を支えている。

③ 技術開発力:大学連携・40以上の特許
- BASFの技術支援
- 上海交通大学からインターン受入れ
- 中南大学から研究支援
三元系に特化し、回収率は Ni/Co/Mnで98%以上、Liで90%以上 とEU新電池規制(2027/2031)にも準拠。
④ 生産拠点は福建省龍岩、展示では11拠点を紹介
デモでは中国北部、中国中部、中国東部、中国南西部、そして中国南部の福建省をカバーするバッテリーリサイクルネットワークが紹介された。

■ Evergreenの工程の特徴:ロボット+人による丁寧な前処理
工場内は新しい設備が整然と並び、複合素材タンク、試作機、ロボット設備が目を引きます。
龍凱科技(LFP中心、塩酸使用)との最も大きな違いは以下の通り:
◎ 前処理は主に「ロボット分解+手作業分解」で構成され、バッテリーセルの直接機械粉砕が補完
- 使用済みバッテリーの流通経路が広く、かつ変形が激しいため、バッテリーパックの手作業による分解は依然として不可欠
- バッテリーパックの手作業による分解とロボットによる分解のコスト差はそれほど大きくないが、手作業による分解は効率が若干劣る
- バッテリーセルの自動かつ高精度な分解により、正極と負極を早期に分離することができ、その後のNi/Co/グラファイト選別のための湿式精錬工程の効率が向上
- 変形が激しいセルについては、補助的に機械的に直接粉砕して黒色粉末にする技術が依然として存在自動化の主な目的は、安全性、透明性、そして効率性
◎ 使用酸は “硫酸”を採用
同じ三元系でも龍凱が塩酸を使うのとは対照的。
硫酸は一般的だが、塩酸はランニングが安くなるケースもあり、これは経営判断とのこと。*例えば、Longkai社が塩酸を選択した理由は、初期投資は高額ですが、回収効率が高く、運用コストを削減できるから
■ Evergeenに聞く、現在の中国LIBリサイクル業界の課題
最大の問題:廃電池の確保ができない
「業者は多いが、半数近くが“材料不足”で止まっている」。
これはEvergreenだけでなく業界全体の悩みであり、理由はシンプル。
→「廃電池の“70%”がブラックマーケットに流れているため」
現在(2025年10月時点)リサイクルのホワイトリストに登録されている企業は60社ほどであるが、基準は
- カスケードリスト
- 精錬リスト
の2種類があり、両方に入る企業は12社ほど。しかし “ホワイトに入っている=操業できている”とは限らない のが現状です。
■ ディスカッション:解決策は何か?
Evergreen側が示したポイントは以下の通り。
▼ 行政による管理強化
- 「バッテリーパスポート」導入
- 廃車の管理および廃車証明書制度の改善
- 闇市場/ブラックマーケットへの流通抑制
▼ 収集網の整備
- 全国での協力会社の構築
- 廃車工場へのアプローチ強化
- 自動化設備で「透明性」を担保し、信頼性の高い工場運営へ
- 技術革新による製造コストと二酸化炭素排出量の削減
▼ 海外からのブラックマス・廃電池輸入
国内供給が困難な場合は、海外からの調達も可能だとのこと。
「多くの廃電池は本来、エネルギー貯蔵製品にリサイクルされ、海外(特に東南アジア)に輸出されてしまう傾向があります。海外の廃電池の解体・破砕技術は時代遅れであり、発生する廃バッテリー塊の不純物レベルは中国の輸入基準を満たしていません。そのため短期的には、廃バッテリー塊を輸入しても国内の供給不足状況は改善しません。」(Garrett氏)
■ 日本での展開は?
日本市場についてもすでに検討を進めているとのこと。
- 日本での工場建設
- ブラックマス回収
- 炭酸リチウム生産の安定供給
- 高い回収率(Ni/Co/Mn 98%、Li 90%)を武器に技術展開
“市場より技術”を重視してきたEvergreenの姿勢は国内外企業から高く評価されており、40件を超える特許数も納得です。
■ 現場を見て感じたこと
龍凱とはターゲット(LFP vs 三元系)もアプローチも異なり、中国の電池リサイクルは一社一社の“哲学”が全く違うことを改めて実感。
- ロボットによる自動化と安全性
- 適正処理の透明性
- 資源循環の高度化
- 国際規制を見据えた回収率向上
Evergreenの現場は、この全てを同時に追い求める“新しい世代のリサイクル工場”でした。
■ まとめ:急成長するEvergreen、その強みは“技術+透明性”
廈門見学ツアー4日目は、三元系リサイクルの先端を走るEvergreenの技術と課題を深く知る貴重な1日となりました。
Evergreen訪問で特に印象に残ったキーワードは “透明性” と “技術開発”。
- ロボット分解で安全性と分離効率を高める
- 変形品は人力で確実に処理
- 大手出資で財務も安定
- ホワイトリスト登録
- 技術特許40件超
中国のLiBリサイクル市場は、今まさに“材料争奪戦”の真っ只中ですが、Evergreenはその中で技術力とネットワークで安定操業を実現している数少ない企業でした。
ブラックマーケットの問題から国際規制対応、日本展開の話まで、きわめてリアルな議論が交わされ、中国リサイクル産業の“いま”が凝縮された訪問でした。

(IRunvierse, Risa)