ICM Shanghai の現場で見えた、Jereh の“強さの理由”
熱気あふれる展示会で、ひときわ来場者を引きつけたブース
ICM Shanghai の広い展示ホールを歩いていると、自然と人の流れが集中しているブースがあった。オレンジ色のロゴが目を引く Jereh(傑瑞) だ。大型パネルの前には技術資料を読み込む来場者、スタッフに質問を投げかける海外企業の担当者。その熱気に吸い寄せられるように、私たち IRuniverse もブースを訪れた。
ちょうどそのタイミングで、Global Business Development の Leon 氏と Archer 氏、そして基調講演前のWang Kangjin 氏と話をすることができた。短い時間ながら、同社の現在地と未来像がクリアに見えてくる立ち話となった。
「中国初のインテリジェント工場は、単なるデモではありません」
Wang 氏が強調したのは、河南省・鄭州市に建設した 中国初の智能化リチウム電池リサイクル工場だ。
「年間1万トンの処理能力を、実際に安定稼働させている点が重要です」と彼は語る。
実証ではなく、商業ベースで稼働している。これは中国国内でも珍しい。展示会で注目が集まっていた理由がここにある。
河南省という“立地の勝利”・特許62件
Jereh の成長を語る上で外せないのが、鄭州という地の利である。Leon 氏は次のように説明する。
「河南省には LFP を中心としたバッテリー材料メーカーが集まっています。原料が集まりやすい土地であることは、安定供給にも大きなメリットです。」
EV サプライチェーンの集積、交通の要所としての物流網、そして使用済み電池が自然と集まる環境。立地が工場の高稼働を支えている好例だ。
また、Jerehが自信を見せたのは、62件の特許技術を背景にしたクリーン分離技術だ。
「ブラックマスの回収率も純度も98%以上。銅とアルミは95%です。」
その数字は業界トップクラスだが、彼は淡々としている。実際に顧客の工場で結果を出しているからこその静かな自信がにじむ。
安全・環境基準は“石油・ガス並み”
取材中、何度も出てきたキーワードが「安全と環境」。
中央集じん、ローカル吸引、ゼロリーク設計。
さらに API(石油・ガス産業の安全規格)準拠という点には驚かされた。中国のリサイクル設備の中でも、ここまでのHSE基準を満たしている企業は多くない。
業界のルールをつくる側へ
Wang 氏が最後に語ったのは、同社が 退役電池破砕設備の国家標準策定をリードしているという事実だった。メーカーという枠を超え、産業の方向性そのものに関わる立場になりつつある。
立地、技術、安全性、標準化、実績。
五つの要素が揃ったとき、企業は強い。Jereh のブースに漂っていた確かな手応えは、その総合力から来ていた。

ICM Shanghai で見えた NIO の次なる一手 ― 循環型電池戦略の舞台裏
ICM上海2日目、AutomotiveセッションではGuo Yuzhu 氏によるNIO Battery Technology のプレゼンが行われた。
「私たちにとって電池は“使い切り”ではありません」—— NIO Guo 氏
「EV の価値は使い終わったあとで決まる」という言葉どおり、NIOが示したのは“走らせるだけのEV”ではなく、
循環型バッテリーエコシステムを軸にしたサステナブル戦略だ。
資料には、NIO が掲げる複数のキーワードが並ぶ:
- Battery Full Lifecycle Management(電池の全ライフサイクル管理)
- Material Looping(材料循環)
- Carbon Reduction Across the Chain(チェーン全体での脱炭素)
NIO はバッテリーの使用から回収、再利用、そしてリサイクルまで一貫した管理を目指している。
「バッテリー交換ステーション」は循環経済の“インフラ”に
NIO というと、独自の Battery Swap(バッテリー交換ステーション)が世界的に有名だ。
Guo 氏は、それが“リユース・リサイクル”の基盤になり得ると語った。
「交換ステーションを通すことで、電池の状態データを全て把握できます。」
このデータこそ、電池の劣化度を判定し、2nd life(再利用)へ回すか材料リサイクルに回すかを科学的に判断する基盤となる。
まさに、バッテリーを“資源”として管理する仕組みだ。
資料でも、交換ステーションを中心にした「Battery Circulation Model」が示されている。
NIO のリサイクル思想:材料レベルで“戻す”
プレゼン内部には、NIO が目指す ハイレベルの材料循環が明確に表現されている。
要点としては:
① 電池材料(Cathode / Anode / Electrolyte)を個別に回収し純度高く再生する
② 新電池への再投入を前提にした品質基準
③ LFP・NCMどちらにも対応可能なリサイクルモデル構築
リサイクルは“廃棄処理”ではなく、未来の資源を取り戻すプロセスだという。
EVメーカーから“資源メーカー”へと変わる NIO
Guo 氏は最後に。「私たちは EV だけでなく“材料の循環”を提供する企業になります。」と語った
これは、NIO が単なる自動車メーカーの枠を超え、エネルギー・材料・リサイクルを包含した“次世代のエコシステム企業”へ進化する
という宣言とも捉えられる。
ICM Shanghai 中で感じたのは、中国 EV 業界のスピード感と、NIO が見据える長期的ビジョンの大きさだった。

(IRuniverse, R.S.)