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フランスがけん引するリユース経済、パリ「リユース経済エキスポ」現地レポート③Dr. Rubber

2026/05/26 09:05 FREE
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フランスがけん引するリユース経済、パリ「リユース経済エキスポ」現地レポート③Dr. Rubber

2026年5月19日・20日、パリ南西部の大型見本市会場パリ・ポルト・ド・ヴェルサイユ(Porte de Versailles)で、リユース産業に特化した見本市「リユース経済エキスポ(Reuse Economy Expo 2026)」が開催された。リユースは循環経済における優先セクターとしてフランス政府が市場構築に力を入れており、本見本市もマクロン大統領の支援を受けている。

MIRUは、今回この見本市に出展しているThe Future is Neutral(仏ルノーグループ)から招待を受け、フランスのリユース経済の現状を現地で取材した。その内容を連載でレポートしているが今回第3回は、タイヤのリユースを手がけるDr. Rubberブースを訪問、担当のSergey OLKHOVSKIY氏に話を聞いた。

フランス南西部トゥールーズを拠点とするDr. Rubberは、従来セメント工場で焼却されてきた使用済みタイヤを再生し、再び道路に戻す「リコンディショニング」事業を中核としている。同社は、側面に軽微な欠陥を持つタイヤの修復に特化しており、独自のノウハウを蓄積する。リユース対象は主としてエコオルガニズム(タイヤの拡大生産者責任制度を遂行する生産者責任組織)経由で調達されるプレミアムブランドのタイヤで、その多くは摩耗率が10%未満と比較的状態が良好なものである。こうした高品質コアを選別して再生することで、新品に近い性能を確保しつつ、資源の有効活用を図るモデルだ。

価格については、新品との比較では30%から40%安いという。現在の主要顧客層は、地元トゥールーズの公共団体および民間企業の車両フリートなど。個人ユーザー市場よりも、車両稼働率が高くタイヤ消費量の多い業界に市場に焦点を定めたBtoBモデルである。同社の立地と顧客基盤を足掛かりとして、今後はフランス南西部における大規模な再生タイヤ生産拠点の構築を検討している。

市場機会については、フランス国内だけでも年間50万本規模の潜在市場を見込んでいるとOLKHOVSKIY氏は言う。この数字は現在焼却等に回されているタイヤを、再生へと振り替えることで到達可能な数量だ。ただ、現在の同社の処理能力は年間20万本程度にとどまっており、今後段階的な設備投資と処理法の改善により生産能力を引き上げる計画である。目標である年間50万本に到達すれば、国内の再生タイヤ市場における重要プレーヤーとしての地位を確立できる規模だという。

OLKHOVSKIY氏は、成長戦略上の課題として、二つの需要セグメントを明確に区別している。一般消費者は主として価格に敏感であり、再生であるか否かよりも購入時の支出削減を重視する傾向が強い。一方で、公共・民間フリート事業者は、AGEC法に代表されるフランスの循環経済関連法制により、リユース・リファービッシュ品の利用を促されている。事業者は、費用対効果だけでなく、環境規制順守やサステナビリティ指標の改善といった要素も調達判断に組み込んでいる。そのため企業には、単なる低価格提案ではなく、環境性能と法令遵守を両立させた付加価値提案を行う必要がある。

また、Dr.Rubberの製品は、短期的には「低コスト輸入タイヤ」への依存を減らす代替策として自社製品が貢献できるとOLKHOVSKIY氏は断言する。アジア等から輸入される安価なタイヤは価格面で魅力的である一方、安全性や耐久性に関する懸念が根強い。これに対し、同社製品はプレミアムブランド(例:フランス・ミシェラン社)の再生タイヤを用いて、「より安全で信頼性の高い欧州製の選択肢」を提供する。例えば、輸入新品タイヤが約100ユーロで販売されるのに対し、同社の再生タイヤは65ユーロ程度の価格帯を掲げている。つまり「安価な輸入品より高品質かつ新品より安い中価格帯のエコロジカルな選択肢」という位置取りだ。

さらに中長期の視点から見ると、事業はフランスおよびEUの循環経済政策と整合的であり、OLKHOVSKIY氏は今後拡大の潜在性は非常に大きいと考えている。タイヤは安全性と環境負荷の両面で重要な製品カテゴリーであり、リユース・リトレッドの品質保証が進めば、公共調達や大企業のサプライチェーンにおける標準選択肢となりうる。企業側にとっては、品質基準やトレーサビリティの整備、顧客への性能説明責任の履行など、今後取り組むべき課題も多い。しかし、プレミアムブランドを基礎とした高品質再生というポジショニングは、単なる廃棄物処理ではなく、付加価値型の循環ビジネスとして発展する可能性を示していると言える。

 

取材協力:Sergey OLKHOVSKIY氏, Dr. Rubber

 

 

Yukari SCHANZ

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