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不当廉売関税における迂回輸出防止措置の創設へ―EU制度を参考に

2025/12/09 16:46 FREE
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不当廉売関税における迂回輸出防止措置の創設へ―EU制度を参考に

日本政府が不当廉売関税(AD関税)における迂回輸出防止制度を創設する方向で調整を始めたと、このほど一部メディアが報じた。財務省では「不当廉売関税にかかる迂回防止に関するワーキンググループ」を9月10日に設立。同日開催分を含む2回の会合で具体的な内容について議論を重ねており、迂回品に対しても原措置と同等の割増関税を課税する案が支持されているほか、迂回品と判断する基準についても具体的な数値目標が挙がっていた。

 

迂回輸出とは、供給国・対象産品等を指定して課税されるものであるが、AD関税の課税命令に服するべき者が課税を免れるため、貨物の供給国や品目を変えることで、課税命令が示す範囲から形式的に外れるようにしつつ、実質的には課税命令前と同等の輸出を行うことを指す。

 

WTO協定などにおいて迂回防止措置について定めた明確な規定は存在しないものの、G20をはじめとする主要国では、既存のAD関税に対する迂回行為が行われていることの確認したうえで、対象国や品目を拡大するといった迂回防止制度を展開している。一方で、日本はAD関税制度における、明確な迂回防止制度がなく、産業界からも制度創設に関する要望が寄せられていた。

 

不当廉売関税の迂回を防止する仕組みについては、24年に経済産業省より制度創設の要望が提出され、同年12月の関税・外国為替等審議会による答申を踏まえ、実効性のある制度の創設に向けて検討を行っていたところ。こうした動きを受け、設立された「不当廉売関税にかかる迂回防止に関するワーキンググループ」ではEUの迂回輸出防止制度を参考とする案が議論の中心となっていた。

 

具体的には、▽迂回行為の認定要件を全て満たす場合に、迂回品に対しても原措置と同等の割増関税を課税する▽制度の対象となる迂回の類型は、「第三国迂回」・「軽微変更迂回」・「輸入国迂回」の3類型とする▽第三国迂回及び輸入国迂回を判定する基準については、目安の数値を設けつつ、個々の事案ごとに柔軟かつ弾力的な対応ができるよう、第三国又は輸入国(本邦)における投資の程度や生産工程の性質等も勘案して要件の充足を判断する▽輸入国迂回については、課税対象を原措置対象貨物の供給者から輸出され、本邦に輸入される部品等に限定する――などの課税用懸案が挙がっている。

 

なお、迂回輸出と判断する目安の数値については、原措置対象国産の部品等の価額が完成品の価額に占める⽐重が概ね60%以上であることや、第三国⼜は輸⼊国での組⽴により付加される価値の⽐重が概ね25%以下であることなどの意見が出ている。

 

(IRuniverse)

 

 

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