前々回(vol.95)、輸出抹消登録台数と軽自動車輸出届出台数の合計(以下「輸出抹消・届出台数」と呼ぶ)が貿易統計上の中古車輸出台数(以下「貿易統計」とも呼ぶ)を上回っている様子を示した。この差として考えられるのが、少額貨物である。今回はこれをみていきたい。
図1は、前々回で示された数量を用いて、輸出抹消・届出台数から貿易統計を差し引いた台数(図では「差」と表示)の推移を示したものである。同時に輸出抹消・届出台数を貿易統計で割った「割合」の推移も示している。これを見ると、台数の「差」は2010年代半ばから後半にかけて20万台前後で推移していたが、2020年をピークに急激に減少しており、2023年は2.5万台にもなっている。同じく「割合」も低くなっており、それまで115%前後だったものが、近年では105%前後となっている。2025年の「差」は8.7万台で2023年、2022年に続いて3番目に少なく、「割合」は105%で2023年に続いて2番目に低い。

図 1 輸出抹消・届出台数と貿易統計上の中古車輸出台数の差・割合の推移
出典:財務省貿易統計、日本自動車販売協会連合会、軽自動車検査協会公表データより作成
注:差は「輸出抹消・届出台数-貿易統計」で単位は台、割合は「輸出抹消・届出台数/貿易統計」
上述の通り、この差として考えられるのが少額貨物である。ただし、これが全てではない。輸出抹消登録台数は輸出後しばらく経ってから手続きされるため、貿易統計の計上日とはタイムラグがある。上記の差にはその影響もあると考えられる。
関心は2020年代に入ってからの「差」の縮小である。この時期で思いつくのは円安や新車不足、コロナ後の景気回復等を背景とした日本の中古車輸出市場の拡大であり、それによる価格の上昇である。その結果、少額貨物が減ったのではないかということである。
注意したいのは、少額貨物は輸出申告書における「1 品目」の価格が20万円以下の貨物であって、「1台」の価格ではないことである。つまり、個々の取引において「1台」の価格が20万円以下であっても、複数台輸出することで「1品目」が20万円を超えていれば貿易統計に計上される。
ここで貿易統計に計上される数値から平均単価を算出していきたい。貿易統計のデータベースでは、「年・月・仕向地・品目」の組ごとに金額と数量が示されている。その組み合わせごとにそれぞれの平均単価(金額/数量)を算出すると、20万円以下の数量が相応にあることがわかる。平均単価20万円以下の数量が表れているということは、「1台」20万円以下のものであっても貿易統計に計上されることがあることを意味している。
図2は、以上の作業により算出された平均単価20万円以下の数量を足し合わせ、20万円超の数量と区分した中古車輸出台数の推移である。これによると、20万円以下の数量は、2020年代に入ってから急激に減少している。この数量が最も多かったのは2019年の37.6万台であり、全体におけるその割合は29%である。これに対して2022年以降の20万円以下の数量は10万台を下回っており、その割合も10%を割っている。2025年は数量が7.1万台、割合が4%であり、2010年以降で最も少なく、低い。
2025年の20万円以下の数量について、仕向地を見ると、アラブ首長国連邦向けが53%、フィリピンが26%を占め、この2か国で79%を占める。それにナイジェリア(6%)、レソト(6%)、ボツワナ(3%)、ミャンマー(3%)が続く。
図2の数量は、貿易統計に計上される数量から平均単価に基づいて区分したものであり、少額貨物の数量と一致するものではない。また、「20万円以下」の数量に1台20万円を超えるものも含まれうるし、「20万円超」の数量に20万円以下のものが含まれている可能性もあり、正確に1台20万円以下の数量に一致するわけではない。とはいえ、少額貨物の規模の拡大、縮小の傾向を考えるうえで参考になる。

図 2 平均単価別の中古車輸出台数と平均単価20万円以下の割合の推移
出典:財務省貿易統計より集計
注:「年・月・仕向地・品目」の組ごとに平均単価を算出し、20万円以下と20万円超に区分したうえで、各年で数量を合計した。
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阿部新(Arata Abe)
山口大学 国際総合科学部・教授
2006年一橋大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得退学。
同大学研究補助員を経て、2008年より山口大学教育学部・准教授
2020年より同大学国際総合科学部・教授