4月19~20日に上海で開催された「軟包装カンファレンス」の食品および栄養製品セッションでは、製品保護を極める材料選定から、消費者体験を向上させるデザイン、そして業界を牽引する品質管理システムまで、パッケージングの最前線が広範に議論されました。
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上海開催「第13回 軟包装カンファレンス」:AI・スマート製造とサーキュラーエコノミーが牽引する次世代パッケージング
1. パッケージ材料の最適化と製品保護の限界突破
食品の品質を維持し、シェルフライフ(保存期間)を延長するための多層パッケージ構造の重要性が詳細に語られました。
登壇者:崔剣鋒(サイ・ケンポウ)氏
所属: 旺旺控股(Want Want Holdings / ワンワン・ホールディングス) 生産研究開発群 包装材料研究開発部
講演テーマ: 『食品の賞味期限から機能性パッケージングまでの応用実践』
話していた内容: 米粉製品(おせんべいやスナック)などの自社食品の劣化を防ぐための「油抵抗性・湿気バリア・光保護」の要件定義。酸化アルミフィルムを用いた賞味期限の9ヶ月から12ヶ月への延長。夏場の流通向けにエネルギーコストを削減する最新のコールドチェーン包装の実装について語った。
課題の特定と要件定義: 食品(米粉製品や油脂分の多いスナックなど)の劣化を防ぐため、「油抵抗性」「湿気バリア」「光保護(紫外線遮断)」「微生物リスクの排除」のバランスを取ることが求められます。特に天然着色料を使用した製品は、光や酸素、湿気に対して極めて脆弱です。
構造の実装事例: 透明性と適度な柔軟性を持たせるため、二重構造のPP(ポリプロピレン)が基本仕様として検討されました。さらに高度な保護が求められるケースでは、3層構造の酸化アルミフィルムへの切り替えが実施されました。
成果: この材料選定と水分含有量を従来比で約40%低下させる厳密なテストにより、製品の賞味期限を9ヶ月から12ヶ月へと延長することに成功しています。

2. 「デュアルループ」品質管理システムとサプライチェーンの可視化
180以上の生産ライン(うち飲料だけで100以上)を抱える大規模な製造環境において、製品の安全性とコンプライアンスを維持するための革新的な管理モデルが提示されました。
登壇者:陳月平(チン・ゲツヘイ)氏
所属: 杭州娃哈哈科技有限公司(Wahaha / ワハハ) 包装品質主管・高級エンジニア
講演テーマ: 『パッケージング全チェーンにおけるデジタル品質管理』
話していた内容: 中国最大手飲料メーカーの一つであるワハハの知見として、180以上の生産ライン(飲料だけで100以上)を管理する「デュアルループ品質管理モデル」について解説しました。原材料の監視から、流通段階における気候変動(結露やカビ)の予測・アラート、そしてサプライヤー管理に至るまでの「デジタルツールの統合」を語ったのは陳氏。
デュアルループ品質管理:
内部ループ: 原材料の受け入れから、生産ラインでの検査、パッケージングに至るまでの細密なプロセス管理。
外部ループ: サプライヤー、政府、物流、そして消費者からのフィードバックを統合し、継続的な改善を図るエコシステム。
リアルタイム監視とデータ駆動型アラート: スマート化された工場では、全生産ラインの安全管理状況をリアルタイムで識別し、異常があれば即座に警告(アラート)を発するシステムが構築されています。
流通・気候リスク管理: 生産工場内だけでなく、流通段階でのリスク管理が強調されました。特に春から夏にかけての気温上昇や湿度の変化(結露によるカビの発生等)に対し、日射量や湿度を予測・監視する予防策が、製品の損失削減に直結すると指摘されています。
3. 日本の狩野モデルに基づく消費者中心のデザインと感情的価値
単なる「包材」から脱却し、消費者の感情に訴えかけるパッケージデザインの威力が語られました。会議では、日本の「狩野モデル(Kano Model)」が引用され、基本的ニーズ(保護)、期待的ニーズ(使いやすさ)、魅力的ニーズ(感情的価値)の3層構造でデザインが論じられました。
登壇者:曹海燕(ソウ・カイエン)氏
所属: 康宝莱(Herbalife / ハーバライフ) 中国&アジア太平洋地域 シニアパッケージングマネージャー
講演テーマ: 『栄養保健食品のパッケージング革新と持続可能な実践』
話していた内容: Mark Hughes氏が1980年に創業したHerbalifeのこと。同社のイノベーションセンターにおける取り組みとして、子供向け栄養製品のパッケージ(恐竜デザインや遊び心のあるリサイクル構造)を通じた感情的価値の創出、プラスチック削減(パウチへの移行)、FSC認証紙の採用、そして日本の「狩野モデル」を用いた顧客満足度の分析について語ったのは曹氏。
利便性の追求(期待的ニーズ): 簡単に開閉できる「先端式の弾出口」を採用し、必要な時にすぐ中身を取り出せる構造上のユーザビリティを向上。
子供向けのインタラクティブな設計(魅力的ニーズ): 4歳以上の子供向け栄養製品において、恐竜のグラフィックを採用。遊び終わったパッケージを切り取って組み立てたり、小さなゴミ箱やペン立てとして再利用できたりする仕掛けを施し、幼少期から環境保護の概念を育むとともに、ブランドへの愛着(感情的なつながり)を深める工夫が紹介されました。
4. 持続可能性(サステナビリティ)の実装
環境負荷を最小限に抑えるため、具体的な素材の変更と削減の取り組みが共有されました。
素材の転換: リサイクルが困難な複合素材から、回収・再利用が容易な素材(モノマテリアル等)への切り替えが進行中です。印刷には環境に配慮した大豆由来のインクを使用し、外箱にはFSC認証を受けたホワイトカード紙を採用しています。
プラスチック使用量の削減: ボトル等の硬質プラスチック容器から、大容量の軟包装(パウチなど)へ移行することで、プラスチック使用量を約20%削減する事例が報告されました。
5. コールドチェーンの革新とエネルギー効率
夏の流通や温度管理が必要な製品において、次世代のコールドチェーン包装が導入されています。
大幅なコスト削減: 先進的な保冷パッケージングと物流システムの統合により、従来の冷蔵物流と比較してエネルギー消費量を約62%削減し、生産工程でのエネルギーコストを約35%低下させる画期的なソリューションが実用化されています。これにより、厳しい環境下でも製品の鮮度を高く保つことが可能になります。
総括
食品・栄養製品のパッケージングは、「保護」という本来の目的を高度化させると同時に、デジタルツールの統合によるサプライチェーンの透明化、そして持続可能な素材と感情的なデザインを通じた消費者エンゲージメントの強化へと進化しています。今後は、生分解性(バイオベース)包装のさらなる実用化が業界の次なる焦点となることが示唆されました。
(IRUNIVERSE YT)