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インドネシア・フィリピン接近でニッケル市場は新局面へ 減産・硫黄不足・鉱石争奪が交錯

2026/05/07 11:02
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6日KITCOの伝えるところではインドネシアとフィリピンが、ニッケル分野での協力強化に向け動き始めた。インドネシアのプラボウォ大統領が今週後半にフィリピン・セブを訪問するのに合わせ、両国はニッケル鉱石供給や技術協力について協議する予定だ。背景には、インドネシア国内で進む減産政策と、ホルムズ海峡危機による硫黄不足がある。世界最大級のニッケル供給国同士の接近は、国際ニッケル市場に大きな影響を与える可能性が出てきた。

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■インドネシア、フィリピン鉱石輸入拡大を模索

 インドネシアのバフリル・ラハダリア資源エネルギー相は、国内鉱石供給が逼迫した際にフィリピンからのニッケル鉱石輸入拡大を協議すると明らかにした。具体的な数量目標は設けず、実際の取引は民間企業間ベースになるとしている。

 インドネシアでは近年、国内製錬能力の急拡大により、ニッケル鉱石需要が急増している。国内供給が不足した場合、従来からフィリピン産鉱石を補完的に利用してきた経緯がある。

 今回の協議では、単なる鉱石調達だけでなく、製錬技術や資源情報共有も議題となる。これは従来の「競争関係」から、「資源共同戦線」への転換を示唆する動きとも言える。

■LMEニッケル価格は一時2年ぶり高値

 こうした動きを背景に、ニッケル価格は急騰している。LME(ロンドン金属取引所)の3か月先物価格は4月27日に一時$1万9350/tonまで上昇し、2024年6月以来およそ1年11か月ぶり高値を付けた。

 最大の要因は、インドネシアが明確に「価格防衛」へ政策転換していることだ。

 同国は4月、ニッケル鉱石の基準価格(HPM)の算定方法を変更。特に低品位鉱石(リモナイト)では、従来考慮されていなかったコバルト含有量を価格に反映する仕組みへ変更した。

 インドネシア鉱山協会(Perhapi)は、この制度変更により「リモナイト価格が100%以上上昇する可能性がある」と警告している。

 さらに、2026年のニッケル鉱石生産割当(RKAB)は2億6000万~2億8000万トンとされ、2025年目標の3億7900万トンを大幅に下回る。過去数年の過剰供給による価格低迷への反省から、供給抑制による価格維持へ政策が転換した格好だ。

■硫黄不足がHPAL系製錬所を直撃

 一方、中東情勢の悪化はインドネシアのニッケル産業に新たな打撃を与えている。

 インドネシア・ニッケル産業フォーラム(FINI)によると、同国の硫黄輸入の75~80%は中東依存。ホルムズ海峡の実質閉鎖長期化で物流が混乱し、硫黄価格は急騰している。

 中国国内の硫黄価格は4月27日にRMB6116/tonまで上昇。一時はRMB6800に達し、イラン紛争前から約6割高い水準となった。

 特に打撃が大きいのが、HPAL(高圧酸浸出)方式のニッケル精錬所だ。HPALでは大量の硫酸を使用するため、硫黄価格高騰が直接コストへ跳ね返る。

 インドネシアがフィリピン産鉱石へのアクセス強化を急ぐ背景には、こうした「原料確保」と「精錬コスト高騰」の二重苦が存在する。

■フィリピンとの接近は“資源同盟”の始まりか

 今回の協議で注目されるのは、インドネシアが従来の「自給自足・国内加工重視」路線から、部分的に対外協調へ舵を切り始めた点だ。

 インドネシアは2020年からニッケル鉱石輸出を禁止し、自国内での製錬・加工産業育成を推進してきた。しかし、

・国内鉱石不足
・硫黄価格急騰
・HPALコスト増
・減産政策による供給制限

が同時進行し、製錬産業維持そのものが課題になりつつある。

 その結果、フィリピンとの協力は単なる補完調達ではなく、

「ASEAN域内での資源安全保障ネットワーク形成」

という色彩を帯び始めている。

■今後の焦点

 今後の最大の焦点は、

・インドネシアの減産政策がどこまで継続するか
・フィリピン鉱石輸入が制度的に拡大するか
・ホルムズ危機による硫黄不足が長期化するか

にある。

 仮に中東危機が長期化すれば、

「鉱石不足+硫黄不足+減産政策」

が同時進行し、ニッケル市場は想定以上の供給逼迫局面へ向かう可能性がある。

 一方で、中東情勢が沈静化し硫黄供給が正常化すれば、現在の価格高騰は一部修正される余地もある。

 ただ、インドネシアが価格防衛へ明確に政策転換した以上、過去数年のような「供給過剰による暴落局面」へ簡単に戻る可能性は低く、市場構造そのものが変化し始めているとの見方が強まりつつある。

(IRuniverse/MIRU S. Aoyama)
本記事は執筆者個人の分析および見解であり、IRuniverseの公式見解を示すものではありません。内容は情報提供を目的としたもので、投資判断の根拠として用いることを意図したものではありません。
 

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