5月の世界経済は冷静さを取り戻す1か月になりそうだ。エモリファンドマネジメントの江守哲・代表取締役兼最高経営責任者(CEO)は「2月末のイスラエルと米国によるイラン攻撃から3か月が経ち、パニックの峠は越えた。現在は影響を織り込む動きが進んでいる」と話す。世界は戦況を見据えつつ、冷静さを取り戻しつつある。
■ハイテク株高も戦時下でウキウキ感なく
江守氏は中東紛争の勃発について、「当初は予想外の出来事が起きて驚き、ホルムズ海峡の実質閉鎖で流通が滞ったことで商品不足に対するパニック的な焦りもあった。しかしそれも一巡し、時間とともに影響を織り込んでいる段階だ」と話す。ただなお戦時下ではあるため、「停戦協議など戦況を見極めながら、というムードだろう」という。
一方で株式は高い。江守氏によれば「人工知能(AI)関連などを中心に企業業績が良い。ハイテクの巨大企業が集積する米株が強いので、世界の株式相場も引っ張られて上がっている」と話す。しかし、戦時下ではあるため、高揚感はいま一つ。「結局は中東紛争が世界のムードを支配している」(江守氏)状況だ。
過去1年間の日経平均株価とNYダウ30種平均の推移(JPY)($)

米経済は底堅さも目立つ。5月8日に発表の4月の米雇用統計は非農業部門雇用者数が前月から11万5000人増加し、伸びはロイター通信がまとめた市場予想(6万2000人増)を大きく上回った。失業率は4.3%と前月から横ばい。米経済への安心感から、米国に資金が流入する流れが続きそうだ。
米失業率の長期推移(%)

(出所:米労働省ホームページ)
■円安はなお進行か、為替介入も
米好調に伴い、気になる為替は円安が進む可能性が高い。江守氏は「1ドル=160円程度は仕方ない」と話す。株高の米国に投資資金が流れ込み、「有事のドル買い」も根強い。「日本円にはなかなか、買いの理由がない」(江守氏)のが現実だ。
過去3か月間のドル円相場の推移(JPY/$)

江守氏は、「円安下限は(1986年プラザ合意時の)1ドル=162円。ただこれは本当に歴史的な下限。この前に、2024年の直近安値(161円台)を突破しなくてはならない。そこに行くまでに、為替介入はもちろんあるだろう」との見方を示した。
■商品は個別対応で
商品相場は読みにくい展開となりそうだ。銅や金は一時の急伸はある程度落ち着き、頭打ち感も出ている。金は安全資産であること、銅はAI向けなど中長期の需要期待が根強いなど下支え要因はあるが、以前ほどは注目されにくくなっている。
過去3か月間の硫酸と硫黄相場の推移(RMB/ton)

過去3か月間のアルミ価格の推移($/ton)

半面、中東紛争で注目を集めているのが硫黄や硫酸などの化学品。海峡閉鎖による影響が懸念されている。原油を多く使うアルミも影響への警戒が根強い。江守氏は「各社それぞれ手を打っていると思う。商品別に対応していくしかない」と話していた。