世界リサイクル金属産業サミットフォーラム・電池リサイクルフォーラム(主催:中国の金属市場調査会社Shanghai Metals Market (SMM))が、5月11〜12日に開幕した。本フォーラムにはIRuniverseもメディアパートナー企業として参加し、20の国と地域から集まった約600人の参加者が、アジアを中心とした持続可能な資源循環の未来について議論を交わした。
本報告では11日午前中に行われたメインフォーラム講演、およびパネルディスカッションの内容について報告する。
◼︎グローバルリサイクル金属産業市場分析:政策手段、企業の対応、そして今後の課題:SMM(Shanghai Metals Market) コンサルティングプロジェクトマネージャー、Rock Ding氏

Ding氏は冒頭、金属リサイクル産業の成長要因について、環境負荷低減の観点から重要性が高まっていると説明。銅やアルミニウムなどは、一次製錬と比較してリサイクル時のエネルギー消費量や水使用量を大幅に削減できるとした。特に、アルミニウムは一次精錬時の電力消費が極めて大きい一方、二次アルミはスクラップ再溶解が中心であり、省エネルギー性が高い点が強調された。
金属リサイクル業界を支える主な要因は①一次原料不足、②政策支援、③下流企業からの脱炭素要求、④企業のESG対応、⑤コスト削減効果、⑥技術進歩が挙げられる。特に、中国では一次アルミ生産能力に上限が設けられているほか、電力不足や地政学リスクも供給制約要因となっており、再生金属需要が拡大しているという。また、銅についても鉱石不足が深刻化している。
中国では政府による補助金支援やEUのCBAM(炭素国境調整メカニズム)が備えられている。他にも、自動車OEMやAppleなどの大手企業がサプライチェーン全体に脱炭素化を求めており、再生金の属利用拡大が進んでいる。加えて、使用済み飲料缶(UBC)の活用によるコスト削減効果や、AI選別技術などの進展も業界拡大を後押ししている。
一方、二次原料不足やスクラップ輸出規制、技術的課題なども残されている。Ding氏は金属リサイクルが単なる廃棄物処理ではなく、資源安全保障や循環経済を支える重要産業へ変化していると総括し、発表を締め括った。
◼︎インドから世界へ:持続可能な成長とリーディングリサイクラーの責任: Jain Resource Recycling Limitedの事務局長、Sanchit Jain氏

Jain氏は冒頭、スマートフォンやEV、データセンター、鉄道など、あらゆる産業が銅やアルミニウム、鉛、レアメタルといった金属資源に依存していると指摘。そのうえで、重要なのは「金属をどこから採掘するか」ではなく、「金属を何度循環利用できるか」であり、二次金属の確保が今後の産業競争力を左右すると強調した。
現在、世界では需給構造の変化が進んでいる。先進国では長年の工業化により大量のスクラップ資源が蓄積される一方、インドや東南アジア、アフリカなど新興国ではインフラ整備やEV、再生可能エネルギー投資が進展し、金属需要が急拡大しているという。その結果、リサイクルは地域内で完結する事業ではなく、グローバルサプライチェーンとしての重要性を高めている。特に銅についてはAI、EV、再エネ拡大に不可欠な素材でありながら、鉱山開発だけでは将来需要を満たせない可能性が高く、二次金属の活用が不可避になるとの見方が示されている。また、二次アルミは一次生産比で約95%、銅でも約85%のエネルギー削減効果があり、コスト面だけでなく脱炭素対応の観点からも優位性が高まっている。
顧客ニーズは従来は価格重視だった調達基準が、現在ではリサイクル比率、カーボンフットプリント、トレーサビリティなどへ拡大しているという。特にEVや電子機器分野では、再生材利用が標準要件になるという見通しが示されている。インド市場については2040年までに金属需要が倍増する一方、組織化されたリサイクル体制は依然発展途上にあり、大きな成長余地が存在する。インド政府もEPR(拡大生産者責任)制度や自動車スクラップ政策を通じてリサイクル産業育成を進めているという。
Recycling Limited社は75年以上の歴史を持ち、現在では120カ国以上から原料を調達し、年間30万トン超の非鉄金属スクラップを処理していると紹介。今後はチェンナイの新工場で月産1,600トン規模の銅カソードを生産する計画であり、太陽光発電を活用した「グリーン銅」供給にも取り組むという。
最後にJain氏は「未来の鉱山は都市にある」と述べ、廃車や使用済みケーブル、廃バッテリーなど都市鉱山が次世代の重要資源になると総括。リサイクル産業は今後、資源安全保障や脱炭素を支える戦略分野として、さらに存在感を高めていくとの見方を示して発表を締め括った。
◼︎パネルディスカッション:グローバルリサイクル金属市場の再構築 - インド、パキスタン、中東、日本の政策推進要因と新たなホットスポット
中東リサイクル協会(BMR)のSanjeev Phandke氏は、中東地域では従来、スクラップ輸出が中心だったものの、近年は炭素削減やサステナビリティ政策を背景に域内でリサイクル資源を活用する方向へ政策転換が進んでいると説明。特にGCC諸国ではリサイクル産業への投資が拡大しており、将来的には銅スクラップなどで純輸入地域へ転換する可能性もあるとの見方を示した。
一方、MRAI(Material Recycling Association of India)のAmar Singh氏はインドが慢性的なスクラップ不足国であり、特に非鉄スクラップは輸入依存度が高いと説明。欧州の廃棄物輸送規制などの影響で原料流入が制限され、足元ではスクラップ価格上昇が続いているという。また、インド政府と連携しながら輸入関税引き下げやEPR(拡大生産者責任)制度導入を通じて、国内リサイクル基盤整備を進めているとした。さらに、中国企業とのJVについては依然慎重姿勢が続く一方、日本企業を含む海外企業との提携は拡大していると述べた。
中東のTOUCH International Corpで貿易を担当するBIN Zhang氏は、紅海情勢など地政学リスクによって一次原料供給が不安定化しており、製錬所各社が二次原料確保を急いでいると説明。特に銅やアルミでは、一次資源依存からリサイクル資源活用へのシフトが加速しているとした。一方で、中東域内だけでは必要量を賄えず、国際取引そのものは今後も不可欠との認識を示した。
パネルディスカッションでは、ESG対応やトレーサビリティの重要性についても議論された。大手顧客はリサイクル材の由来やカーボンフットプリント管理を強く求めるようになっており、デジタル管理システムやERP投資が競争力を左右する時代になっているという。登壇者からは、「単にスクラップを売買する時代ではなく、持続可能性を証明できる企業が選ばれる」との意見も示された。
今後の市況見通しについては、多くの登壇者が銅、アルミニウム、鉛に対して中長期的に強気見通しを示した。AI、EV、データセンター、送電網整備などが金属需要を押し上げるとの見方であり、特に銅は今後のエネルギー転換に不可欠な戦略資源になると指摘。また、エネルギー貯蔵需要拡大を背景に、鉛需要も底堅く推移するとの見解が示された。パネルでは、リサイクル産業は今後、脱炭素や資源安全保障を支える中核産業として、さらに重要性を高めていくと総括された。
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(IRuniverse Midori Fushimi)