日本の財務省貿易統計では、通関コード8548.10-000(廃鉛バッテリー)の輸出実績が2025年9月以降、事実上消失している。2024年秋から2025年夏にかけて韓国向け中心に輸出が再開していたことを踏まえると、市場関係者の間では「韓国側で何が起きているのか」との関心が高まっている。
現時点で、韓国政府が日本産廃鉛バッテリーの輸入停止を明示的に打ち出した公示や報道は確認されていない。しかし、韓国国内の再生鉛(secondary lead)業界を巡る最近の動向を整理すると、原料調達環境の悪化、バーゼル規制運用、輸入コスト問題など複数要因が重なり、輸入案件が成立しにくくなっている可能性が浮かび上がる。
■韓国再生鉛業界で強まる「原料不足」懸念
韓国側報道では、近年、再資源化業界が廃バッテリーなど原料スクラップ不足に直面しているとの指摘が相次いでいる。
韓国経済新聞(2025年9月)は、韓国最大の非鉄製錬会社である
Korea Zinc
(高麗亜鉛)の経営陣インタビューを報じた。それによれば、同社は40年以上にわたり廃鉛蓄電池のリサイクルを行ってきたが、近年は電子スクラップや電池廃材回収事業を拡大する一方、原料確保が最大の課題となっているという。韓国内の発生量に対して処理能力が相対的に大きく、海外依存度が高い構造が背景にある。
韓国経済新聞(Korea Zincインタビュー)
実際、韓国の再生鉛業界は以前から、日本・東南アジアなどからの廃鉛バッテリー輸入に依存する側面が強かった。
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■中国との原料争奪戦が激化
もう一つ無視できないのが、中国要因である。
韓国側報道では、中国が近年、廃資源を高値で吸収していることが韓国企業の調達環境を圧迫していると指摘されている。中国企業が第三国で中間加工した形で有価金属原料を確保する動きも広がり、韓国側では「原料価格競争力が低下している」との声が出ている。
韓国報道(TradingView転載)
日本側統計でみても、2025年後半以降、粗鉛(Crude Lead/ブリオン)輸出が中国向けを中心に急増しており、従来の「廃バッテリー輸出」から「粗鉛輸出」へとフローが再編されている可能性も否定できない。
【貿易統計/日本】 2026年3月の電気鉛輸出入推移一覧表
つまり、
「廃バッテリーとして輸出」
↓
「国内で粗鉛化して輸出」
というサプライチェーン変化が一部で進んでいる可能性がある。
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■韓国政府、輸入規制緩和へ
興味深いのは、韓国政府自身が再資源原料輸入の障害を問題視し始めている点だ。
2025年10月、韓国の国務調整室は、廃資源輸入に関する制度見直し方針を公表。報道によると、韓国企業側からは
• バーゼル関連の輸入許認可が煩雑
• 輸入申告制度が硬直的
• 3%の輸入関税負担が重い
との不満が出ており、政府は2026年上半期に向けて
• 輸入手続き簡素化
• 一部関税引き下げ
を進める方向という。
韓国国務調整室関連報道
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■「輸出禁止」ではなく「案件成立困難化」か
以上を総合すると、2025年9月以降の日本→韓国向け廃鉛バッテリー輸出ゼロは、
「韓国側の輸入禁止」ではなく、案件ベースで成立しにくくなった結果
と見る方が自然である。
背景としては、
1. 韓国再生鉛業界の原料不足と採算悪化
2. 中国との原料争奪激化
3. バーゼル関連許認可の煩雑さ
4. 輸入関税負担
5. 日本側での粗鉛化シフト
などが複合的に作用している可能性が高い。
韓国政府が進める制度見直しが実際に機能するなら、2026年春~初夏(4~6月)の財務省統計が、廃バッテリー輸出再開の有無を占う重要な試金石になりそうだ。
(IRUNIVERSE / S. Aoyama)
本記事は執筆者個人の分析および見解であり、IRuniverseの公式見解を示すものではありません。内容は情報提供を目的としたもので、投資判断の根拠として用いることを意図したものではありません。