中東情勢の緊張が長期化する中、硫酸市況が大きく水準を切り上げ、供給ひっ迫感を鮮明にしている。指標となる日本のFOB価格は21日現在、2月上旬比で2.6倍の300ドルの水準にある。中国が春物作物の作付を控え、リン酸肥料の確保を目的に、その生産に欠かせない硫酸の輸出を規制するとの観測が出て、上値を試す余地が一層広がってきており、なお天井感はない。金属製錬にも波及する要素をはらんでおり、銅、ニッケルなどのLME市況への跳ね返りも懸念される展開になってきた。
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米・イスラエルによるイラン攻撃で、中東由来の硫酸原料になる硫黄の中国向け供給が事実上停止、これが波乱の芽を膨らませており、実際、21日時点での硫黄のFOB価格は、1,000ドルの超高値圏で推移している。中国の硫黄輸入の50%超は中東産だとの見方もある。その結果、春物作物の作付を控えた中国が硫酸の輸出を段階的に絞り始め、5月からは輸出停止措置を取るとの観測が広がり、一気に高値を追い始めた形だ。
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日本も硫黄の原料となる原油を中東に大きく依存しているため「国内硫酸業界に大打撃を与えている状況だ」(市場関係者)との声が挙がっている。
非鉄精錬ではもともと火種を抱えていた。例えば銅だ。その精鉱処理を巡って、処理方法の違いによって、片や硫酸が副生産物として生まれ、片や硫酸を消費する構造がある。精鉱処理の主流は副生産物として生み出すパターンになるが、銅地金などを生み出す製錬における処理費TC/RCの長期低迷により、収益圧迫から稼働状況に重さがみられ、その結果、硫酸流通にゆがみが生じていた。そこに、中東・中国由来の硫酸サプライチェーンに先細り懸念が出てきて、一気に相場水準を切り上げる展開になってきているわけだ。
チリでも値上がりが目立つほか、HPAL法によるニッケルの鉱石処理で硫酸を大量消費するインドネシア、フィリピンでは足元、底堅い需要がある。フィリピンについては、「同国の輸出を主とする国内某メーカーの輸出量は、月10万トン超で推移しており、足元、好調だ」(国内硫酸メーカー関係者)という。中東紛争が長期化すれば、今後、ニッケル生産にじわり影響が広がってきそう。
一方、製錬と並ぶ硫酸の需要セクターである肥料業界はどうだろうか。「(製錬業界に比べ)いまの高い価格で硫酸を仕入れて製品を生産しても採算が合わないと聞いている」(業界筋)との声も挙がっている。今回の供給ひっ迫問題を受け、中国では、3月から8月まで肥料原料の輸出を停止する方針を取っており、国内にある肥料を「大事に扱っていこう」とのスタンスを感じることができる。
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「中国の硫黄の港湾在庫をひとつのベンチマークとして見ているが、年初の200万トン水準から、足元140万トンに在庫規模は圧縮されてきてる」(同)とのことで、その見合いでみる限り、硫酸市況はなお上値余地を残していると見ておくべきだろう。
中国国内の硫黄・硫酸価格もともに超高値圏で推移しており、21日現在、トン当たり5,950元・同2,050元の水準にある。

過去10年間の硫黄・硫酸の中国国内相場
当面の焦点は、中東紛争がどこまで長期化するか、そして、それを受けて中国の硫黄・硫酸需給がどのように推移するのか。その2点が、硫酸市況の動向を占うポイントになってきそうだ。
(IRuniverse G・Mochizuki)