エネルギー危機の着地点は、いまだ見えていません。アメリカのトランプ大統領と中国の習近平主席が会談したことで国際情勢に変化の兆しを期待する声もありましたが、少なくともエネルギー市場の不透明感がすぐに解消される、という状況にはなっていないようです。
国内に目を向けても、エネルギー危機を契機として再生可能エネルギー投資が一気に加速している、という印象はあまりありません。むしろ、多くの取り組みは既定路線の延長線上で進められている、というのが実情ではないでしょうか。
今年閣議決定された第七次エネルギー基本計画では、2040年度における電源構成のうち、再生可能エネルギー比率を4〜5割程度まで引き上げる方針が示されました。太陽光や風力、水力、バイオマスなどについては一定の導入見通しが盛り込まれている一方で、地熱発電については個別の導入目標量が明示されていません。
地熱発電は、天候に左右されにくい安定電源として期待されてきました。しかも日本は、火山帯に位置する地理的条件から、アメリカ、インドネシアに次ぐ世界第三位級の地熱資源ポテンシャルを有しているとされています。それにもかかわらず、日本における地熱発電の導入量は長年にわたって限定的なまま推移しています。
理由としてよく挙げられるのは、開発適地の多くが国立公園や温泉地と重なっていることです。温泉資源への影響を懸念する声も根強く、地域合意形成には長い時間を要します。また、掘削調査から実際の発電開始まで10年以上かかるケースも珍しくなく、初期投資リスクの高さも普及の壁になってきました。
さらに言えば、日本の再エネ政策そのものが、比較的短期間で導入可能な太陽光発電を中心に設計されてきた側面もあるでしょう。固定価格買取制度(FIT)の開始以降、太陽光発電は急速に普及しましたが、その反面、長期的かつ大規模な開発を必要とする地熱発電には、十分な政策的後押しが行き届かなかったとも言えそうです。
他方で、世界に目を向ければ、再エネ拡大の流れは着実に進んでいます。国際エネルギー機関(IEA)によれば、世界の発電電力量に占める再エネ比率は年々上昇しており、その中で地熱発電は決して大きな割合ではないものの、「安定供給可能な再エネ」として独自の存在感を維持しています。
特にアメリカ、インドネシア、フィリピンなどでは、石油・天然ガス開発で培われた掘削技術を応用する形で、地熱開発が進められています。近年では、従来型地熱に加えて、地下深部に人工的に割れ目を形成して熱を取り出す次世代型地熱技術への投資も拡大しています。
この技術開発は、日本にとっても非常に示唆的です。日本企業はもともと掘削技術やタービン技術に強みを持っていますし、温泉地との共生ノウハウも蓄積されています。もしも環境負荷や地域懸念を抑えながら安定的な地熱利用を実現できるのであれば、それは単なる発電技術にとどまらず、日本独自のエネルギーモデルとして海外展開できる可能性すらあるでしょう。
純国産であり、かつ天候に左右されにくい安定電源でもある地熱エネルギー。もちろん開発には慎重さも必要ですが、資源輸入国である日本にとって、その価値を改めて見直す時期に来ているのではないでしょうか。
エネルギー安全保障と脱炭素を両立するためにも、技術開発と地域との共存モデルを丁寧に積み重ねながら、日本らしい地熱活用の可能性を探ってゆく必要がある。私はそんなふうに感じています。