5月29日13時、大和工業は4月末に発表した26/3期決算を受けて説明会を開催した。説明に使われた資料はこちら。決算については花本常務が、企業価値向上に向けては小林社長が行った。
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<26/3期の決算>
〇概要
全体として、営業利益は減益となったものの、米国事業の好調や特別利益の計上により、経常利益および純利益は増益となった。
●業績
売上高は1,603億円(前期比4.7%減)、営業利益は44億円(同60.9%減)となった。一方、経常利益は米国事業が安定して高収益を確保したことで652億円(同19.9%増)となった。当期利益は、投資有価証券売却益168億円を特別利益として計上したことにより、623億円(9同6.0%増)と大幅な増益を達成した。
●グループ総販売数量
前期比30%減の376万トンにとどまった。これは中東事業からの撤退に加え、米国を除く地域で建設用鋼材の需要が低調に推移したことが要因。
〇セグメント別
●日本
建設コストの高止まり等による需要停滞に加え、鉄スクラップ価格の上昇やエネルギーコスト増により鋼材マージンが悪化し、減収減益となった。
●タイ (SYS)
公共事業やデータセンター向けを中心に需要が回復し販売数量は増加したものの、輸出における中国材との激しい競争やバーツ高の影響で販売価格が下落し、減収減益となった。なお、26年3月にSYS株式を追加取得し、出資比率は70%に増加した。
●インドネシア (GYS)
インフラ投資予算の削減や、安価な中国材の流入拡大による競争激化により需要が伸び悩み、減収減益となったが、セグメント利益としては黒字を確保。
●米国(持分法適用会社 NYS)
データセンターや大型建築案件向けの需要が堅調で、政府の関税強化措置の影響もあり、高水準の鋼材マージンを確保して増益となり、連結業績を牽引した。
<27/3期業績見通し>
〇業績予想
売上高1,660億円、営業利益45億円、経常利益680億円を見込む。当期利益は470億円(前期比大幅減益)を想定しているが、これは前期の投資有価証券売却益が剥落するため。
〇セグメント別見通し
●日本
厳しい環境が続き、また圧延設備更新に伴う2ヵ月間の操業停止の影響もあり、減益を予想。
●タイ
中国材に対するアンチダンピング課税措置の発効により中国材流入が減少傾向にあり、販売数量・鋼材マージンの改善を見込んで増益を予想。
●インドネシア
インフラ予算や民間プロジェクトによる緩やかな需要回復を見込む一方で、中国材流入による競争激化が続くため、前期並みの業績を予想。
●米国
引き続きデータセンター向け等の内需に支えられ、関税維持による鋼材マージン拡大を見込み、増益予想。
<財務およびキャッシュフローの状況>
〇バランスシート
現預金残高は約2,200億円と高い水準を維持しており、自己資本比率は85.5%と健全な財務基盤を確保。
〇キャッシュフロー
・営業CFは米国持分法会社からの分配金受領等により520億円となったが、相手先での設備投資資金需要等の影響で前期比では減少した。
・投資CFは有形固定資産の取得等があったものの、株式売却収入により23億円のプラスとなった。
・財務CFは自社株買い(253億円)や配当金支払い(245億円)により577億円の支出となった。
<株主還元>
〇配当方針
配当性向40%を目処とし、継続的かつ安定的な配当の維持に努める。当面の間、1株当たりの最低配当額を年間300円と設定。
〇配当金
27/3期の配当は、4期連続となる年間400円を予定(想定配当性向は50.9%)。
〇自己株式の取得
経営環境や株価水準を総合的に勘案しながら機動的に実施する方針であり、直近でも積極的な自社株買いを行っている(24年10月決議で300万株/251億円、25年10月決議で100万株/112億円を取得)。
<企業価値向上と「2030年ありたい姿」に向けた取り組み>
〇市場評価の状況
PBRは1倍超を維持し、ROEは目標の10%を上回る11.4%を達成した。時価総額・エンタープライズバリュー(EV)ともに着実に増加している。
〇中間レビューの実施
「2030年ありたい姿」の発表から中間年にあたるため、外部環境の変化を踏まえて事業戦略や財務・資本戦略の議論を重ね、今年度中に中間レビューを公表する予定。
〇コア事業の強靭化
日本のヤマトスチールでは圧延設備の更新等の戦略的投資を進めており、JFEスチールグループとの協業も受注増などの成果を上げている。インドネシアのGYSでも将来を見据えた大型圧延ライン増強を推進。米国のNYSでは、大型サイズや高強度・高溶接性を持つ高付加価値製品の販売に注力し、他社との差別化を図る。
〇新事業領域・新拠点への進出
さらなる成長に向け、インドへの進出を現地企業との合弁を前提に検討。また、軌道用品事業の海外展開として、豪州の鉄道分岐器メーカーであるサリックス社(Salix)の株式50%を40億円で取得し、欧州規格(EN規格)市場への参入を図る。
※米国事業が好調な理由
●データセンター等を中心とした旺盛な内需
米国では、旺盛なAI関連投資を背景としたデータセンターや半導体関連分野、さらにはスタジアム等の大型建築案件向けの型鋼需要が非常に堅調に推移している。この力強い内需により高水準の受注残を常に維持しており、データセンター需要については今後2〜3年は引き続き堅調に推移すると見込まれている。
●高付加価値製品による圧倒的な差別化
NYSは、巨大な米国市場において高い生産能力と技術力を有し、マーケットリーダーの地位を確立している。特筆すべきは、大型サイズの製品や「AEOS」と呼ばれる高強度かつ高い溶接性能を持つ高付加価値製品において、米国内ではNYSだけが生産可能であること。製品ラインナップの観点で国内他社との明確な差別化が図られており、顧客ニーズを捉えた高付加価値製品の販売強化が数量増に大きく貢献している。
●政府による高水準な輸入関税措置
米国政府による鉄鋼製品に対する高水準な輸入関税(輸入品に対して50%、中国製品には75%の追加関税)が維持されていることが、極めて有利な事業環境をもたらしている。この関税強化措置によって安価な輸入材の脅威から守られており、国内産業保護の観点や労働組合との関係から、政権の動向に関わらず当面はこの関税レベルが継続すると想定されている。
●機動的な価格改定による鋼材マージンの拡大
これら「強固な需要」「製品の独自性」「輸入制限」という好条件を背景に、NYSはマーケットリーダーとして市場状況を捉えた機動的な価格改定(値上げ)を実施できている。さらに、原料となる鉄スクラップ価格が低位安定で推移しているため、販売価格の上昇がそのまま鋼材マージン(利幅)の大幅な改善と拡大に直結しており、これが米国事業の大幅な増益を牽引する最大の要因となっている。
※インドへの進出計画について
●戦略上の位置づけ
・最有力候補地としての選定
コア事業である形鋼事業の強靭化と、さらなるグローバル成長に向けた新拠点の獲得において、インドを最有力候補と位置づけている。
・中東撤退後の成長ドライバー
中東事業からは撤退したが、インドをはじめとする新興国等で新たな生産拠点を獲得・拡大することで、グローバルでの持続的な成長を図るロードマップを描いている。
●具体的な進出方法と現在の進捗
・現地企業との合弁
大和工業単独での進出ではなく、インドの現地企業との合弁を前提として検討を進めている。
・プロジェクトチームによる実地検討
現在、専門のプロジェクトチームが定期的にインドへの現地出張を行いながら、具体的な進出に向けた検討を重ねている段階。
●事業の狙いと提供価値
・技術力とノウハウの活用
これまで大和工業がグローバル展開の中で培ってきた高度な技術力や操業ノウハウを最大限に活用することを目指している。
・インフラ成長への貢献
高品質な形鋼をインド市場に提供することで、今後大きな需要が見込まれるインドのインフラ成長を力強く支える役割を果たしたい。
(IRuniverse 井上 康)