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「ねじで世界をよりよく変える」池田金属工業、締結技術改善で現場課題に挑む(前編)

2026/06/10 10:46
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「ねじで世界をよりよく変える」池田金属工業、締結技術改善で現場課題に挑む(前編)

MIRU取材班は6月3日、大阪市に本社を構える池田金属工業株式会社を訪問した。同社は創業以来70年以上ねじ締結部品の供給と技術支援を手掛けており、製造現場の省人化や保全高度化を見据えた製品開発にも力を入れている。

前編である本報では同社の強みや現場の課題を解決する製品開発について、次報の後編では新設されたラボや同社が描く締結技術の今後の展望について紹介する。

 

現場起点で締結課題を解く技術商社

池田金属工業株式会社は「ねじで世界をよりよく変える」をスローガンに掲げ、ねじ締結部品および関連部品の販売、技術診断・試験サービス、研修サービスなどを展開する技術商社である。

同社の特徴は「単に注文品を早く安く調達する」商社ではなく、製造現場の課題に対して締結方法そのものを提案できる点にある。課題解決のため、同社は製造業の上流工程から下流工程まで関わり、設計、調達、組み立て、施工、メンテナンスを横断して、ねじのゆるみ、折損、作業性、軸力管理といった問題に向き合っている。

一般的な商社では製品を売ることが中心になりがちであるが、同社は現場で実際にどのような姿勢で作業しているのか、どの工具で締め付けているのか、トルク管理が適切に行われているのか、そもそもそのトルク管理で必要な軸力が出ているのかまで踏み込む。現場現物に寄り添い、締結後の作業性や品質まで含めて提案する姿勢が、同社の強みである。

寄せられる相談で多いのは、ねじのゆるみ、折損、軸力管理に関するものだという。例えば、過去に何百トンもの力でプレスする機械に使われる太径ボルト(M100クラス)が折れるという相談があった。この場合、単にボルトの強度だけ見直しても根本解決にはつながらない。太径ボルトを適切に締め付けられているか、想定通りの軸力が発揮されているか、振動や荷重のかかり方に問題がないかを確認し、原因と対策をセットで考える必要がある。

本件においては調査の結果、適切な締め付けが行われておらず、必要な軸力が発揮されていないことが原因であることが判明した。軸力が不足した状態で振動を受け続けることでガタつきが発生し、ボルトに繰り返し負荷がかかって折損につながっていたという。同社は対策としてスーパーボルトを提案。スーパーボルトは同社の課題提案型製品の一つで、複数のジャッキボルトを用いて締め付けることで、大径ボルトでも大掛かりな油圧工具を使用せずに高い軸力を安定して与えられる締結部品である。締め付け作業の負担軽減に加え、均一で確実な軸力管理を実現できることから、大型設備やプラント設備などでも採用されている。

実際にスーパーボルトを現場へ導入したところ、従来は半日から1日程度を要していた締結作業が大幅に短縮された。品質向上だけでなく、作業者の負担軽減やメンテナンス効率の改善にもつながり、同社にとっても印象深い課題解決事例の一つになっているという。

同社はこのように、ボルトそのものだけでなく締結方法、工具、施工手順、作業環境まで含めて検討する。特に、大型プラントや建築現場などの大型設備の締結作業では、作業者が安全帯を付け、無理な姿勢でボルトを締めるケースも少なくない。この場合は締結に時間がかかり、メンテナンスが難しいために点検や再締結のために熟練作業者を現地へ派遣しなければならない場合も多い。人手不足や人件費の高騰が進む中、こうした作業負担や保守コストは年々大きな課題となっており、より安全かつ効率的な締結方法が求められている。

また、一般的な生産現場においても、ねじの締め付け不足や締め過ぎによる破損、ねじ山の損傷、工具の不適合などが起きれば、品質不良やメンテナンス負荷の増大につながる。池田金属工業は技術商社として、こうした現場の実態を踏まえた技術提案を重視している。

 

課題解決型製品は現場から生まれる

同社の課題解決型製品はターゲットとする業界や顧客の現場に入り、実際に何に困っているのかを把握する。締結現場では「作業者が課題だと認識していない課題」が多く、丁寧なヒアリングを続けて課題を抽出し、現場の声から「これは確実にニーズがある」と判断したものについて、商品開発プロジェクトへと移行するという。

商品開発の流れは細かくプロセスが決まっており、調査、企画、試作、テスト販売、本開発企画という段階を踏んで抜け漏れのない開発体制を作るという。このプロセスの中心にあるテーマが、省力化と省人化である。ねじそのものを作る工程の省力・省人化ではなく、ねじを使う作業に着目する点が特徴だ。締結作業、シールテープ巻き、点検、メンテナンスなど、現場では多くの時間と人手が費やされているにもかかわらず、そこに十分な改善の目が向けられていないことが多い。

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池田金属工業は、このような締結作業の改善効果を定量的に示すことを重視している。通常の作業では何分何秒かかるのか、自社製品を使えば何秒で締結できるのか、不具合率や手戻りがどの程度減るのかを示すことで、設計や調達の担当者にも現場負担を理解してもらう。現場では当たり前になっている不便や非効率を、データと体感の両面から可視化することが、同社の課題解決型製品の開発思想である。

 

人手不足時代に求められる締結技術

これまでの日本のものづくりの現場では、「不具合が発生したらサービスマンが現地へ行って対応する」という考え方が一般的だった。しかし、近年は人手不足や人件費の高騰を背景に、ねじの不具合対応のために人員を割く余裕が小さくなっている。

特に、工作機械のように世界中へ輸出される製品では、納入先でトラブルが発生した場合に海外へ技術者を派遣しなければならないケースもある。ねじ一本の不具合であっても移動費や人件費に加え、設備停止による損失まで考慮すると大きなコストにつながる。

そのため、近年の製造現場では、誰が作業しても同じ品質を確保できる締結方法が求められている。熟練作業者の勘や経験に頼るのではなく、属人化を解消して再現性の高い締結品質を実現することが重要なテーマとなっている。技能伝承に十分な時間や人員を確保できない現場では、長年の経験を必要としない仕組みづくりが欠かせない。

加えて、酷暑など作業環境の変化も現場に影響を与えている。40度を超える環境下では従来通りの作業時間を確保することが難しく、休憩時間の増加によって実質的な作業時間は短縮される。こうした状況からも、短時間で確実に作業できる締結方法や省力化、省人化につながるソリューションへの需要は高まっている。

また、締結管理の考え方そのものにも変化が起きている。従来は締め付けトルクを管理する「トルク管理」が主流だったが、近年はボルトに発生する締付力そのものを管理する「軸力管理」への関心が高まっている。トルクはボルトを回転させる力を示す指標だが、その多くはねじ部や座面の摩擦によって消費される。そのため、潤滑状態や表面状態、作業者の違いによって同じトルク値でも実際に発生する軸力は大きく変動する。適正なトルクで締め付けたつもりでも、想定した軸力が得られず、結果としてゆるみや疲労破壊につながるケースも少なくない。

本来、締結体を固定するために必要なのはトルク値ではなく軸力である。池田金属工業では長年にわたりセミナーや技術提案を通じて軸力管理の重要性を発信してきた。こうした活動が、製造現場における設計思想や締結プロセスの見直しにつながりつつあるという。

 

「ねじで世界をよりよく変える」池田金属工業、締結技術改善で現場課題に挑む(後編)に続く

 

(IRuniverse Midori Fushimi)

Midori Fushimi

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