月島ホールディングス(6332)の26/3期は豊富な受注残の消化で売上高1490億円(7.0%増)、営業利益98.4億円(10.4%増)と最高益更新。27/3期も再資源化ニーズの高まりを受け、2.0%増収11.8%営利増予想と連続最高益更新へ。汚泥処理、リン酸回収、2次電池製造プラントなど受注増で、2030年3月期に売上高2000億円、営業利益150億円目指す。環境技術で持続的成長する同社はポジティブに評価。
月島ホールディングス(6332)26/3期決算メモ ややポジティブからポジティブに変更
26/3期7.0%増収10.4%営利増で最高収益更新、27/3期も2.0%増収11.8%営利増予想
株価2519円(6/10) 時価総額1010億円 発行済株40125千株
PER(DO27/3期予:11.7X)PBR(1.0X)配当(27/3期予)88円 配当利回り:3.5%
要約

26/3期は豊富な受注残の消化が進み7.0%増収10.4%営利増で2期連続最高収益更新
水環境事業や廃棄物処理・環境保全設備など高シェアを誇る名門企業 。26/3期は売上高1489.54億円(期初計画比49.54億円上振れ、10.4%増)、営利98.42億円(同3.42億円上振れ、10.4%増)、経常利益109.87億円(同4.87億円上振れ、7.2%増)、税引利益169.10億円(同19.10億円上振れ、2.54倍)、受注1542.01億円(15.4%減)、受注残高3235.17億円(1.6%増)となった。売上は豊富な受注残の消化が進み、2期連続最高収益更新となった。受注は水関連の端境期で減少、しかし受注残高は長期案件もあり膨らんだ状況にある。なお税引利益は市川市の固定資産売却益120.35億円、投資有価証券売却益33.14億円の特別利益計上から大幅増益となっている。

主要事業別では水環境事業が売上高985.78億円(期初計画比45.78億円上振れ、6.4%増)、営業利益58.05億円(同1.95億円未達、5.4%減)、受注936億円(同36億円上振れ、31.6%減)、受注残2715.43億円(1.8%減)となった。売上面では水インフラが豊富な受注済の下水汚泥焼却炉などの案件が順調に進捗し、売上高539億円(同39億円上振れ、5.9%増)となった。一方受注は想定通り大型案件の端境期(25/3期10件から26/3期3件)で398億円(同52億円未達、45.0%減)と大幅減にとどまった。ただし下水汚泥濃縮設備や浄水場薬品注入設備などは堅調に推移した。ライフサイクル事業では売上高447億円(同7億円上振れ、6.9%増)と運転管理、補修工事が堅調に推移したが、受注は公設民営(DBO)の新規案件があったものの、大型案件の端境期で538億円(16.6%減)にとどまった。

利益面では一部案件で採算性悪化から総利益率が0.8ポイント下落し18.8%で、総利益が2%増にとどまった。また販管費が人件費や研究開発費増で5.7%増となり、営業減益に。

受注残高は順調な受注残消化から若干減少。しかし依然高水準を維持、31/3期以降の工期となる5年以上の案件が5割強を占める。特に全体の7割を占めるライフサイクル事業はPPP事業の受注が好調で受注額も大きく、長期案件の比率が増加している。

産業事業は売上高497.35億円(同12.35億円上振れ、10.0%増)、営利41.48億円(同12.48億円上振れ、95.3%増)、受注599.60億円(同44.60億円上振れ、36.5%増)、受注残519.73億円(25.5%増)となった。この内、産業インフラ事業は売上高285億円(同5億円上振れ、3.2%増)と化粧品向け撹拌機や化学向け乾燥機、食品向けプラントなどが進捗した。受注面では281億円(同39億円未達、3.1%減)。化学向けろ過機や乾燥機、撹拌機などの単体機器、GX案件(EPC)を獲得も大型受注がなく、微減となった。環境事業は売上高213億円(同8億円上振れ、21.0%増)と固体廃棄物焼却炉、半導体向け廃水処理案件などが順調に進捗し大幅増収となった。受注は318億円(同83億円上振れ、2.1倍)と、廃液燃焼、固形廃棄物焼却炉や排ガス、廃酸処理などの大型案件を獲得、大幅増に。

利益面では増収効果に加え、シェアの高い案件の売上が増え採算性の改善が進み、売上高総利益率が2.1ポイント向上し25.4%となり、総利益が20%増となった。また販管費でも効率向上で0.9%増にとどめ、営業利益で大幅増となった。

全体の営業利益の増減では、産業事業が採算向上で収益性向上も寄与し、水処理の採算低下を埋めて25億円の増益寄与、一方で人件費増など販管費のコスト増で8億円減益影響。

加えてその他事業で不動産賃貸事業について市川工場跡地の物流施設を9/1に譲渡しており、売上高6.40億円(6.96億円減)、営業損失1.37億円(8.17億円減)が加わり、全体で9億円の営業増益に。
27/3期2.0%増収11.8%営業利益増、受注23%増目標でいずれも最高額更新予想
27/3期会社予想は、売上高1520億円(2.0%増)営業利益110億円(11.8%増)、経常利益117億円(6.5%増)、税引利益85億円(49.7%減)、受注1900億円(23%増)予想。
収益、受注で最高額更新見通し(不動産売却分で税引利益は減益)とした。同社は中計予想として27/3期に売上高1600億円、営業利益120億円を目指していたが、26/3期に物流施設売却による不動産賃貸事業の解消があったこと、加えて人的資本投資が計画比で増加した事などがある。売上面でも昨今の中東問題など一部案件でキャンセルはないが、納期の延長などもあるため、豊富な受注残があるものの、売上でも中計見通しを下方修正している。

ただし、受注環境はすこぶる好調で、中計での受注目標は示されていなかったが、今回1900億円(23%増)と非常に高い受注予想となっており、27/3期末には受注残高が3615億円(11.7%増)、売上高の2.4年分に膨らむ見通しとした。

事業別では水インフラが売上高1000億円(1.4%増)、営業利益70億円(20.7%増)、受注1300億円(38.9%増)予想とした。売上高は豊富な受注残高の計画的な売上計上で水インフラ540億円(0.2%増)、ライフサイクル460億円(2.9%増)予想。利益面では26/3期の低採算案件が一段落し売上高総利益率が20.4%に向上する前提で、2割増益予想に。
一方、受注は水インフラで下水汚泥焼却炉、浄水場排水処理装置などの大型案件の獲得が見込まれ、685億円(72.1%増)と大幅増を見込む。ライフサイクル事業については複数の大型包括案件の獲得が見込まれ、615億円(14.3%増)を予想している。
産業事業は売上高520億円(4.6%増)、営業利益43億円(4.9%増)、受注600億円(0%増)予想。売上高は受注残高の消化で緩やかな増収を見込む。営業利益はMIX変化で総理利益率が0.5ポイント悪化し24.9%となる前提で、緩やかな増益にとどまる予雄としている。受注についてはろ過機や撹拌機などの単体機器、化学向けプラント案件を見込み産業インフラでは330億円(17.4%増)を見込む。一方、環境は前期の反動減で270億円(15.1%減)を見込んでいる。

全体の営業利益増減では、水環境での低採算案件の一巡、産業事事業はMIX悪化で緩やかな増益、販管費は人件費増など前向きな費用増で6億円程度の負担増などを見込むが、全体として2桁営業増益予想に。

現状、中東における紛争影響については、受注面で産業事業の一部で顧客の設備投資判断の遅れが生ずる可能性はある。ただし同社は内需中心でしかも中東問題は資源リサイクルを高める需要はプラス要素となる。また昨今の国内公共施設のインフラ老朽化に対し、対策は待ったなしで、薬品などの値上がりは回収可能で、収益予想並みの業績が見込まれる。
脱炭素社会に貢献し長期ビジョンで30/3期売上高2000億円、営業利益150億円目指す
同社は脱炭素社会に貢献し、快適でサスティナブルな社会を実現する長期ビジョン打ち出し、30/3期に売上高2000億円、営利150億円の達成を目標としている。
水環境事業は、JFEエンジニアリングとの統合効果の創出が見込まれる。具体的には上下水道における事業統合効果が期待される。例えば下水分野では互いに強みを持つ汚泥処理技術が統合され、ラインナップが充実、下水汚泥焼却炉では国内シェア3割でNO1となる。また下水処理場のバイオガス発電事業や下水汚泥燃料化、廃液燃焼システムでも国内シェアトップを誇る。現在、上下水道では1990年代後半から2000年代前半にかけて建設した設備が老朽化、本格的な更新期にあり、シナジー効果でシェアアップが期待される。


また近年、水道管の老朽化が進み、全国の20%以上が法定耐用年数40年を経過、年間2万件を超える漏水・破損事故が発生、対策が急務となっている。ここでもJFEエンジニアリングの統合で好機が訪れている。水道技術研究センターの調査では、日本の水道管の約54%がダクタイル鉄管(この分野ではクボタ6割、栗本鉄工所3割と寡占市場)、樹脂管が41%(積水化学がトップシェア)、鋼管3%(JFE50%シェアトップ)、その他2%と見られ、全体のシェアは小さいが、鋼管需要150~160億円規模のシェア50%、80億円レベルを有する。鋼管は大口径、耐水性に優れ、今後の老朽化対策に対し、比率アップが見込める。
加えて注目されるのが、中東情勢の緊迫化や中国の輸出規制強化により、日本のリン(リン鉱石、黄リン、リン酸、リン安)のサプライチェーンが大きな転換期を迎えている点。資源の全量を輸入に依存する日本にとり、調達網の多様化と国内でのリサイクル(都市鉱山化)が急務となっている。三和油化工業などが半導体生産工程で生ずる廃液からリンを再生するなどの動きが活発化しているが、一方で、下水汚泥に含まれるリンを回収して肥料化する「都市鉱山」プロジェクトも全国で本格化している。

この下水汚泥・消化汚泥・焼却灰からのリン回収で、同社は積極的な事業展開を行っている。例えば神戸市における下水汚泥からの資源循環(こうべ再生リン)の先駆的な取り組みがある。水ingエンジニアリングなどの企業と共同研究を行い、2012年に東灘処理場、2024年に玉津処理場へ月島JFEアクアソリューションが提供するMAP法によるリン回収設備(リフォスマスター)を導入している。回収されたリンは「リン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)」であり、効き目の長い緩効性肥料として「こうべ再生リン」プロジェクトで活用されている。また、東京都(砂町水再生センターでのJA全農との広域連携)など、自治体主導の実装が進んでいる。横浜市でも月島JFEアクアソリューションズが共同で下水汚泥から再生リンを回収し、肥料化する取り組みを進め、北部汚泥資源化センターに実証施設を設置し、最大約110kg/日、年約40トンの再生リン生成規模を目指す。さらに月島JFEアクアソリューションは、福岡市・JA全農ふくれんと共同で、26年4月にB-DASHプロジェクトとして福岡市西部水処理センターに高効率リン回収実証施設を完成させている。この技術は、処理場全体のリンの流れに着目し、活性汚泥により濃縮された溶解性リンからMAPを生成するもので、従来技術の適用範囲を超える高濃度リンを含む消化汚泥からの回収、汚泥処理設備へのポリ硫酸第二鉄投入の影響を受けにくい点が特徴となっている。同社グループの強みは、下水汚泥処理の前後工程シェアトップを誇り、リン回収単体技術ではなく、単に反応層を設置するだけでなく、処理場全体のリン・窒素・汚泥・返水流の流れをトータルで管理し、安全に安定運転できるシステムを有している点ある。このためリン回収でも主導的立場で事業拡大が期待される。現在、日本全国の下水汚泥焼却炉等は約260基、うち8割が流動床炉であり、特に850℃未満で運転される従来型流動床炉のうち7割に当たる約70基(内16基は投入脱水汚泥量100t/日)が稼働20年以上で、今後、脱炭素化政策で850℃未満運転ではNO2排出係数が大きいために、更新・高温焼却化・固形燃料化転換を伴う焼却炉への更新需要が急拡大する見通しにある。これらの更新需要だけで1兆円に近い規模の更新市場が創出される。同社グループは同市場でシェア3割強を有し、しかもNOX対策に加え、政府は令和6年予算で「下水道脱炭素化推進事業」として、下水汚泥資源の肥料利用、リン回収、焼却灰からのリン回収技術が取り上げられ、これらの追加設備について地方財政措置による支援策も打ち出している。ちなみに政府は食料安全保障強化政策大綱において2030年までに肥料中の国内資源の利用割合を25%から40%に引き上げる目標を掲げている。このため、シェアトップの同社グループは更新投資に加え追加投資でも受注獲得の可能性が高く、同社の収益を大きく支えることとなろう。

産業事業は電池材料、触媒などの高付加価値向けの晶析、乾燥、ろ過などを重点領域とする。特に注力しているのがEV向けリチウムイオン2次電池製造装置プロセスへの取組。同分野は月島機械の正極材製造技術と子会社プライミクスの持つ電池製造の前工程での攪拌技術を融合し、2次電池モジュール完成までの一連の製造に係わっていく。特に昨今は固体電解質向けの引き合いが中心となっている。

このほか、半導体では三菱ガス化学のグループMGC ELECTROTECHNO(タイ)にBT(ビスマレイミド・トリアジン)積層材料生産設備を納入、次世代半導体パッケージ材料向け事業も拡大している。さらに半導体製造工場ではアンモニアを含む薬液でウエハを洗浄するが、排出されるアンモニアを含む材料の工場排水からのアンモニア回収技術、アンモニアの燃焼利用技術など、脱炭素社会に貢献する技術として、今後の事業展開にも期待が広がる。

全体として様々なシナジー効果と新規事業拡大が加速するとみられることから、30/3期の長期ビジョン計画の達成が見込まれる。
株価は昨年8/8の固定資産譲渡による譲渡益120億円発生で税引利益の75億円上方修正があり、9/9には3545円の2025年高値をつけた。しかし9/10に8/8をもって自社株取得を終了したことの開示を受けて下落傾向となった。また26/3期決算発表後、27/3期には不動産事業売却益の反動でEPSが大幅減となることを改めて確認したためか、税引利益を除き最高収益連続更新予想にもかかわらず、株価はさえない動きに終始している。現在、27/3期会社予想EPS214.86円に対しPER11.7倍であるが、プライム機械平均PER22.1倍に対し割安であり、タクマ(6013)の16.0倍に対し若干割安、荏原実業(6328)の12.0倍に対し似通った倍率である。また先端半導体関連の荏原(6361)24.1倍に対し割安な水準にある。同社はJFEエンジニアリング統合によるシナジー効果、豊富な受注残高の順調な消化が見込まれ、営業利益最高益、経常最高益更新が続く見通しにある。また新政権による国土強靭化、国土保全に対する予算拡大も期待され、株価も年初来安値圏にあり、PBRも1倍まで低下、配当については88円に増配予定で配当利回りも高く、ややポジティブからポジティブに評価を引き上げたい。



*荏原(6361)、タクマ(6013)、荏原実業(6328)との比較

(図表は説明会資料、統合報告書、国交省予算概要等、加工、チャートはヤフーから添付)